第14話 NRG
海斗は、この書類に書かれている高齢者殺戮の内容と、影の政府機関NRGの存在との関係に恐怖を感じた。
「和夫じいちゃん。この書類を落としていった人の顔は、憶えているかい?」
「急にぶつかってきたから、顔までは憶えておらん」
「そうかー・・・」
海斗は、不安そうな表情へと一変した。
「この書類が紛失していることに気がつかれたら、命を狙われるかもしれない」
「えっ、命を狙われるじゃと!」
「この書類は、NRGの極秘文書だよ。そして、高齢者を殺戮する極秘プロジェクトの内容だよ」
「そんな内容、だれが信じるんじゃ。冗談に決まっておるわ」
和夫は、その書類に書かれている事に半身半疑でいたが、海斗の凍りついた表情に少しながら不安を感じ始めた。
「海斗、その書類に書かれている事は、本当なのか?」
「ああ、おそらく本当だと思う」
海斗の今までにない真剣な面持ちに、その書類に書かれている内容が事実であることを、和夫は認識した。
そして、二人とも硬く凍りついた表情で無言のまま、静寂の時間を過ごした。
静寂に包まれた部屋に弱々しくも、はっきりとした声が波紋となって伝わった。
「明日、新聞社へ行って、この書類を社会部の部長へ見せてみるよ!」
「見せても大丈夫か?」
「たぶん大丈夫だと思う。確信はないけれど・・・」
「そうじゃ。それがよかろう」
「海斗、気分を変えて風呂でも沸かしてくれ!」
「あぁ、分かったよ」
海斗は和夫の申し出に従いながらも、頭の片隅で恐ろしいことが起こるのではないかと不安に思っていた。
その後、和夫と海斗は入浴を済ませ、海斗の部屋の冷蔵庫に冷やしてあった缶ビールを一本ずつ飲み干すと、お互い緊張が一気にほぐれ意識が遠退いていった。