第13話 影の政府機関
二人は店を出て海斗の車に乗り込んだ。
「和夫じいちゃん、今から僕の家に向かうね」
「おお、分かった」
和夫はお腹がいっぱいになったせいもあり、車の中でうとうと頭を揺らしていた。
そして、気がつくと海斗のマンションの駐車場に着いていた。
「和夫じいちゃん、僕の家に着いたよ」
「早かったな。少し眠ってしまったわ」
「そうだね。疲れが出たんじゃない」
「さあ、車を降りて部屋に行くよ」
和夫と海斗は車から降り、マンションのエレベーターに向かった。
「僕の部屋は、10階だから」
海斗の住むマンションは、建てられてから2年程しか経過しておらず、マンションの壁やドアは照明に照らされて光り輝いていた。
寝起きの和夫には、その光りがまぶしく感じられた。
「10階に着いたよ。僕の部屋は、右手の1010号室さ」
海斗が自分の部屋のドアを開け、和夫も部屋の中へ入った。
「お邪魔するよ」
「じいちゃん。そんなお客さんみたいに、仰々しくしなくてもいいよ」
「そうか。つい癖でなぁ」
和夫は靴を脱いで、海斗の後についてリビングまで行った。
「ソファーにでも座って、ゆっくりしてよ」
「それじゃー、遠慮なく座るとするか」
和夫はソファーに座って、海斗の部屋の中を見回した。
「独り暮らしにしては、綺麗にしておるじゃないか」
「そうかなぁー。いつも仕事が忙しくて、ほとんど寝に帰ってくるだけだから、部屋が汚れないんだよ」
「海斗の仕事は、確か・・・」
「ジャーナリストだよ」
「そうじゃったなぁ。病院でもらった名刺に書いてあったのう」
「ジャーナリストというのは、新聞記者のことか?」
「そうだよ」
「いつも締め切りに追われて、返って来るのは、深夜なんだ」
「そんなに遅くまで仕事をしておるのか?」
「ああ、社会面を担当しているからね」
「社会面かぁー」
「おっ、そうだ。これを見てくれんか」
和夫は、手に握りしめていたあの「極秘文書」を海斗に手渡した。
「この書類は、お前の車に引かれる少し前に、わしが歩道を歩いていて、あるビジネスマンとぶつかった
時に、その人が落としていったものじゃよ」
海斗は、和夫から手渡された書類に目を通し始めた。
そして、その書類を読み進めるうちに、海斗の表情は、みるみると青ざめていった。
「和夫じいちゃん。この書類は、どこで見つけたんだ!」
「だから、お前の車に引かれた道通りじゃよ」
「確か、あの通りの近くは、政府機関のオフィース街じゃないか!」
「そうなのか」
「ああ、この書類の最後の行に書いてあるNRGという文字は、New Revolution Governmentの略で、
新革命政府と呼ばれている影の政府機関の事だよ。その存在は噂だと思っていたが、本当に存在しているとは・・・」