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森の中で

《森の中で》


「さて。どうしようか。」

木漏れ日が差しこむ割と薄暗い森だった。道などもなく、遭難状態からのスタートだった。

時間も早い。うっすらと朝靄がかかっているような感じだし、空気が冷たい。


直ぐに現状を受け入れている気持ちに少し違和感があったが、それ以上にゲームを始めた時の様なワクワクする気持ちの方が大きかった。


立ち上がった俺は持ち物の確認をする。

マジックバックから干し肉を選択。布袋から一切れを口にする。

薄切りの物がいっぱいに入っていた。

数日分は持ちこたえられそうな量を確認。500という数字から一つ数字が減った。


続いて水筒。1L入りの金属水筒に肩掛けが付いている。

ボーイスカウトで使うような代物。違うのがキャップ部。ネジになっておらず木で出来た栓を押し込むタイプだった。

鑑定スキルを思いつくが、使い方が分からない。

まず持ち物やスキルの使用方法が最優先事項だという事に気付く。


いくつか試した結果、対象に手を向ければ鑑定は出来た。

『水筒』: 水入れ

ゲームの様な親切な補足は無かった事に「便利じゃない…。」と気落ちした。

スキルレベルアップに期待しよう……。


鑑定すると胸の前に、14インチサイズ。半透明の青いボードが現れてそこに表示が出る。

人からこれが見える場合、人前で使わない方が良い気がした。


次にマップ。開いてみるが、ポツンとストレージと同じ画面が出る。

真ん中に黄色い△表示があり、俺だと分かる。5㎝サイズもあり大きい。

怪訝に思うが、他が何も映っていないほうがさらに不明だった。

そこで、身近なものでテストを思いつく。


近くにあった草を鑑定する。

『森の雑草』: 名無しの雑草


「使えない…。」と言葉が漏れた。


気を取り直しマップに表示を試みる。

「サーチ」

…。何も出ない。


「サーチ 雑草」

森中の物が表示されるて画面いっぱいになると思ったが、外れた。

画面内にポツンと一つ。しかも5㎝サイズの黄色い〇。


△の正面に位置し、対象物だと思われた。

周りは深い森で、日差しの入りが悪く、土と木の根が広がる所で草も少ない。


試しに動いてみる。


俺が動くと表示も移動。

画面から直ぐに消え、別の表示が一つ。


「…。」

頭の中に沈黙が広がり、転移する場所で両隣の女の子しか表示されなかったのを思い出した。



どうやらマップの検索範囲が1mほどしかない。

使えね~。と物を地面に叩き付けたい衝動が起こるのを堪える。


暫く立ち止まっていたが、気を取り直すことに成功した。

『あるだけ有難い。スキルレベルが上がればきっと使えるようになるはずだ。』


次にストレージとマジックバック。

目の前にあるマジックバックとストレージの移動方法は一度出す必要があったが、両方共長押しすると枠の移動はできた。


何故か知らないがストレージの中に『9番アイアン』と『右手グローブ』というのが入っていた。

グータラ神のサービスなのだろうか。出してみると俺の使っていたクラブと手袋だった。どうせならボールを含め一式欲しかった所だ。


ストレージの操作方法はゲームの時と少し違った。

半透明のボードにサブ画面などない代わりに頭の中のイメージで可能。


「お~。」と声が漏れ出る。

服をいきなり着る事が出来て、まるでゲームの着せ替えだった。

武器も画面を出した状態で手に持つイメージで取り出せた。


ピックしてもいいがこれは目の前に出てしまうので、武器はこれでもいいが、防具や服はイメージする方がゲームの様で便利だった。



マジックバックはカバンの入り口。

黒く靄がかかった所に対象を触らせる必要があった。

手に持って先だけ入れると握った物が収納される。



マジックバックの中身を確認するとお金は金貨2枚。2つ分取ったが価値が不明。

500円玉ぐらいの大きさがあり大きさの割に重い。

片面には文字が書かれ、片方には人の横顔のような凸が真ん中にあり、それなりに価値がある気はした。


ここまで2時間は使っただろう。まだ10歩も進んでいなかった。

取り敢えず歩く方向を決める。

何となく南方向の山を下る方向に進んだ。


ここからは歩きながら試す。

剣を振ってみるとゲームと違い重さを感じる。いやでも現実味が出た。

素振りしてみたがゲームの様にはうまくいかない。

根本的に基礎が出来ていない事が良く分かった。


矢も当然当たらない。

スキルは取ったが低すぎるのだろう。何となくこの辺と言うイメージはつくが、10mも離れると10㎝ほど狙いから外れるのはいい方。練習が必要だった。


次に魔法。

土魔法を選択する。

「ムーブグラウンド」と杖先を地面に向けると、先に光の魔法陣が出来て、期待感が高まる。

すると、もこもこっと土の山が出来た。

魔法陣が消え、魔法の終了を告げる。


「え…これだけ?」

砂山で子供が遊ぶような山だった。


また沈黙が俺を襲う。

ステータスを確認するとMPが30減っていた。


この膝丈ほどの山を4個作ったらおれのMPは尽きると思うとまた沈黙が訪れる。

頭の中が白くなっていた。


数秒地面を指して立っていたのが非常に長く感じた。


MP回復量は3分ほどで1。

今回の実験はこれが分かった事を成果として気を取り直す。



待ち遠しかったMP回復後、唯一初めからレベルⅡを思っていた雷魔法を使ってみる。

「エレクトロウェ~ブ」と年甲斐もなくつい叫んでしまった。


すると魔法陣の前に20㎝ほどのバチバチした光の玉が出来、直線状に伸びる。

1m先の草に当たると光に包まれ対象が黒くなり煙を上げていた。


「お~。」と声が漏れる。

これこそ魔法だと土魔法では今一つだった感動が全身を震わせた。



MPが回復しては魔法を繰り返し、一通りテストした。


火魔法:ファイア     射程5m 火炎放射。 

 殺傷能力あり MP30→使えるかも。


水魔法:ジェットウォター 射程5m 放水車レベル。

 牽制程度。  MP30→火消しになら。


雷魔法:エレクトロウェーブ射程20 電撃。

 殺傷能力あり MP30→使えそう

    エレクトロボール 射程30 電撃。

 殺傷能力あり MP50→使えそう


土魔法:ムーブグラウンド 射程5  土移動。

 殺傷 0   MP30→使えない


光魔法:ライト      杖先   光。

 殺傷 0   MP30→明かりとして使える。


MPが足りない状態だと発動しなかった。

MPが少ない感覚と思われる貧血の様な体験もした。

怠くてヒョロヒョロ直ぐにでも座り込みたい気分だ。


動き出した頃には森が更に暗くなってきた。


野営は不安があった。

『間違いなくおれ弱いだろ…。』というのが心に在った。


寒さも分からないし、火を起こすのが火炎放射の魔法になってしまう。少し慌てて森を抜ける道を探すと水がチョロチョロと流れる川に出た。

水が綺麗で飲めそうだったが、エキノコックスなどが怖かった為、飲む事はしなかった。

川に出ると空が見えた。太陽を拝むことは出来ず、薄暗くなりつつある中、下流へと進んだ。

30分もすると草茫々の歩きにくい所に当たり、靴を濡らしながら川を下ると初めての人工物を見つけた。

橋を見つけてこんなにうれしかったのは初めてだろう。


幅が4mほどで黒ずんだ木の橋。

ここから思ったのは文明の低さ。道も砂利道。凹凸が酷く、草も所々生え一目で整備されていないのが判る。


『おい。全く町がないのだが…。』

街道を一時間ほど歩くが小さな橋以外人工物は目に入らず、神様に向かって文句が出る。

陽の陰りが暗くなり、鬱蒼とした森は不気味さを増す。

諦めて野営を覚悟した。


街道脇の背中をあずけられそうな木にもたれ掛かる。

干し肉を摘まんで虚しさを感じるとすっかり気分がナエナエだ。鬱な気分が支配しそうになる。


俺は昔部屋に閉じこもった事がある。

寝不足の毎日から生活リズムが狂い、そんな中でもなんとか会社に行った。しかし耐えきれなくなり遅刻が増えた。仕事も上手くいかなくなり気分が沈むという悪循環に入った。

⒛代では考えられなかった事が30才後半で起こった。今ではかなり改善しており社会復帰し、部署移動となった。会社に置いて貰っただけでもありがたかった。


横になって嫌なことを追い払う。

直ぐに戦えるように剣は手元に置き、今日の出来事を思い出していた。


期待が3割。不安が7割といった所かな…。

結論づけて目を瞑るといつの間にか寝てしまった。



ふと目が覚めるとまだ闇に包まれていた。

上半身を起こそうとすると根っこが当たっていたらしく脇腹が痛い。


周りに目をやるが寝る前よりも静かな気がした。何時かも分からずそのまま木にもたれ、今後の計画やこの世界について考える。お腹が減ったのに気付き干し肉を食べていると鳥の声が増えている気がした。


ストレージから水筒を出して、蓋を開ける。

やはり水は減っていない。どういう仕掛けか分からないが水筒の水はいつも満タン。


感謝をして片手に水を出しそれで顔を撫でる。タオルが無いので少し汗臭い服でふき取るしかない。

早く町へ行きたいし、寒かった為、暗い中、森を歩くことにした。


鳥のさえずりが更に増えた為、ふと足を止めて見上げる。

木々の隙間から空が少し明るくなってきているのに気付き元気が出て来た。

また干し肉を口にくわえながら歩き出す。



しかし、愚痴は止めることが出来ない。

「これ干し肉取ってなかったが餓死して終わりだぞ…。」

考えすぎは良く無いと思い、剣を振り回しながら歩いた。


弓を引く練習もする。

大学時代、弓道部の友人から弓の引き方を教えて貰ったことに感謝した。

「えっと、肘を入れて回すっと。突っ張った状態で引いた方の肘を上げてっと…。」

ただ、弓が小型で同じことが言えるかどうかは不明。ゲームの時はそんな意識をしなくても勝手に弓を引いて命中させてくれたが、そんなことは全くなかった。少し距離が離れるとまともに当てることは出来ない。試しに投げた石の方がよっぽどいい。

ストレージの中に投げやすそうな石も拾っておいた。



木々の隙間から見える太陽が見えると気持ちが明るくなった。

その太陽は一回り大きい。黄色い輝きが強い気がした程度で夜ほど空に違和感は無かった。







他の方を見ると、いかに見にくい書き方をしていたか分かりました。

何度も書き換えてすみません。、

呼んでいただいた方、感謝致します。

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