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傍観者  作者: Amaretto
最終章
53/56

8-4(槇原16)

[槇原]


 地下室の扉がガチャガチャと空く音がする。

 だれかがこちらに歩いてくる。その足音の正体は、小田だった。


「助けに来たよー!」


 小田は笑って言ったが、その笑みは助かってよかったねというよりは、感謝してよねということを意味しているように思えた。


 小田はなぜかこの檻の鍵を持っていた。


「小田、一体どうやって?」


 小田は私の質問をスルーし、檻の鍵を開ける。私はそこから出ることが出来るようになった。

 小田は続いて向かいにある田中先生の檻の鍵も開ける。


「あなた、やるじゃない。」


 田中先生は、拷問されていたことなどなかったかのように、爽やかに言った。

 背伸びをしたり、屈伸したりしている。


「入口の方に、校長と学年主任がいるから連れてきてよ。あと、これ返すね。」


 小田がそう言いい、槇原先生に拳銃を渡した。

 私は状況が全くつかめていなかったが、とりあえず、小田と田中先生について行く。

 地下室の階段の近くに、学年主任と校長が横たわっていた。それを、武田が監視している。

 2人は脚を撃たれていた。痛そうに呻き声を発している。


「運ぶわよ、武田、手伝いなさい。」


 学年主任と校長を、私達が先程いた檻に監禁する。

 2人は観念したのか、抵抗はしなかった。


 私と槇原先生は、小田と武田のおかげで無事に抜け出すことが出来た。

 ただ、あの拳銃が気になっていた。田中先生が小田に渡したのだろうか? そして、撃ったのか?

 私は小田に対する恐怖心を少なからず抱いていた。

 助けに来たということは仲間なんだろうけど、彼女は行動が読めないから怖い。



 私達は地下室を出て、2組の教室に来ていた。

 そこには誰一人としていなかった。


「あら、誰もいないわね。」


「そうなんだ。いろいろあってね。とりあえず、今までの流れを説明するよ。」


 そう言った武田は、私達が連れていかれてからのことを説明した。


「槇原先生がつれていかれた日、もう槇原先生が戻ってこないことを想定して、対策を考えた。船が出発する今日、クラスに残っている人に鬼ごっこをしてもらうことにした。それで、本当の証拠を持った人が無事に船に乗れるように、学校を攪乱する目的だった。だから今ここには誰もいない。みんな逃げ回っているんだ。」


「あら、そういう作戦を立ててくれたのね、ありがとう。助かったわ。」

 田中先生はさすが武田ね、といったように武田を称賛した。武田は田中先生の心強い協力者なのだろう。

 私はなぜか、私が一番でないことに、悔しさを感じてしまった。


「でも、船はもう出発してしまっている。今はもう2時近い。武田は、結局船に乗れなかった。」


 私がそう言うと、武田は驚いたように田中先生の顔を見る。


「え、もしかして田中先生、俺が本当の証拠を持っているって槇原先生に伝えてたの?」


 武田の発言に私は衝撃を受ける。

 私は武田が全部証拠を持っていると思っていた。


「え……武田じゃないの? じゃあ小田?」


 小田はニコッと笑って「私じゃないよ」と言った。


 武田が冷めたような目で田中先生を見ている。

 どうやら状況を理解できていないのは私だけらしい。


「まきちゃん、ごめんね。今まで隠してたんだけど、武田が持っているのはダミーの証拠よ。それで、今逃げ回っているクラスメイトのうち誰かが、本当の証拠を持っている……。」


 じゃあ、その人が捕まっていなければ、まだ可能性はあるんだ。

 私はほっと、胸を撫でおろす。

 そんな私に、田中先生は言葉を続ける。


「と、そういう風に、学校には思わせた。そう言うことよね、武田?」


 武田はふっと笑う。

「もう一人、俺たちの仲間がいるでしょ?」


 武田は私にヒントを出す。もう一人の仲間?

 そう言われ、私は思い出した。

 彼も、私達の仲間だったんだと。


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