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傍観者  作者: Amaretto
第七章
43/56

7-1(日向千鶴)★

[日向千鶴]


 夢を見ていた。この学校に来れば、人生が変わるんじゃないかって。この学校に入学できたら、手厚い教育が受けられ、最新の技術や、情報に触れることが出来る。そして、この学校の卒業生は、将来を約束される。そんな謳い文句に魅了されて、私はここにきた。

 でも、すぐに気づいたことがある。ここは、学校なんかじゃなくて、牢獄だ。生まれてから、自由でなかった私達は、ここでもまた不自由なんだと思い知らせる。私達は、結局私達の為に生きることなんでできなくて、いつでも大人の思う通りにしなくちゃ生きられない。私達が苦しんでいることも、大人は知っている。知っていて、私達を利用する。それが社会? それが人生?

 そんなものになりたくなかった。操り人形になんて。私は自由を求めてここへきた。汚い大人達の思い通りにならないこと、それこそが、私の自由そのもの。

だから、私はクラスメイト全員の自殺計画を立てることにした。私達を、大人たちから解放するために。



「先生は、放課後いつもどこに行っているんですか?」


 私は担任に聞く。


「これからコンピュータールームで、授業の資料を作るんだよ。」


 嘘つき。私は知っている。私達の生活を24時間監視しているんだ。


「先生は、私達が高校を卒業しても会ってくれますか?」


 私は担任に聞く。


「もちろんだよ。」


 嘘つき。私がクラスメイト全員の自殺計画を立てている事を知っている。


「先生は、いつも優しいですね。」


 私は担任に言う。


「ははっ。いきなりだね。ありがとう。嬉しいよ。」


 偽善者め。私が貴方ををどれほど憎んでいるか、知ってるくせに。


「こんな、表面上のやりとり、やめません?」


 私は担任に言う。


「そうだね。君はもう、知ってしまっているんだもんね。」


「この学校が、生徒の為のものではないことをですか?」


「そうだね。」


「私達を24時間監視していることをですか?」


「そうだね。」


「あなたが、クラスメイト集団自殺計画を知っていることを、ですか?」


「そうだよ。よく出来ました。」


 担任は、私の頭に手をのせ、子供を褒める時のようにポンポンとした。

 私はその手を払いのける。


 担任は私を見て言った。


「君にはその行動力はあるのかい? もし出来るとしたら、それは今までにない、貴重なデータになるね。」


「それを願っていますか?」


「うーん、今後の実験を続けられないのは残念だけど、今までにないほどの実績を残せるのなら、それはいい事なんじゃないかな。」


「とんでもないクズですね。」


「ははっ。いきなりだね。ありがとう。嬉しいよ。」


「じゃあ、私達の自殺に協力してくれますか?」


「協力というと?」


「薬でも、ガスでも、拳銃でもなんでもいい。死ねる為のものを、クラスに準備してほしいんです。」


「ああ、それなら、薬が一番やりやすいかな。上に協議してみるよ。」


「本当にあなたはどうしようもないクズだ。」


「さて、じゃあ僕はそろそろ行くよ。薬が手に入ったら、あげるから、使ってね。」


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