7-1(日向千鶴)★
[日向千鶴]
夢を見ていた。この学校に来れば、人生が変わるんじゃないかって。この学校に入学できたら、手厚い教育が受けられ、最新の技術や、情報に触れることが出来る。そして、この学校の卒業生は、将来を約束される。そんな謳い文句に魅了されて、私はここにきた。
でも、すぐに気づいたことがある。ここは、学校なんかじゃなくて、牢獄だ。生まれてから、自由でなかった私達は、ここでもまた不自由なんだと思い知らせる。私達は、結局私達の為に生きることなんでできなくて、いつでも大人の思う通りにしなくちゃ生きられない。私達が苦しんでいることも、大人は知っている。知っていて、私達を利用する。それが社会? それが人生?
そんなものになりたくなかった。操り人形になんて。私は自由を求めてここへきた。汚い大人達の思い通りにならないこと、それこそが、私の自由そのもの。
だから、私はクラスメイト全員の自殺計画を立てることにした。私達を、大人たちから解放するために。
「先生は、放課後いつもどこに行っているんですか?」
私は担任に聞く。
「これからコンピュータールームで、授業の資料を作るんだよ。」
嘘つき。私は知っている。私達の生活を24時間監視しているんだ。
「先生は、私達が高校を卒業しても会ってくれますか?」
私は担任に聞く。
「もちろんだよ。」
嘘つき。私がクラスメイト全員の自殺計画を立てている事を知っている。
「先生は、いつも優しいですね。」
私は担任に言う。
「ははっ。いきなりだね。ありがとう。嬉しいよ。」
偽善者め。私が貴方ををどれほど憎んでいるか、知ってるくせに。
「こんな、表面上のやりとり、やめません?」
私は担任に言う。
「そうだね。君はもう、知ってしまっているんだもんね。」
「この学校が、生徒の為のものではないことをですか?」
「そうだね。」
「私達を24時間監視していることをですか?」
「そうだね。」
「あなたが、クラスメイト集団自殺計画を知っていることを、ですか?」
「そうだよ。よく出来ました。」
担任は、私の頭に手をのせ、子供を褒める時のようにポンポンとした。
私はその手を払いのける。
担任は私を見て言った。
「君にはその行動力はあるのかい? もし出来るとしたら、それは今までにない、貴重なデータになるね。」
「それを願っていますか?」
「うーん、今後の実験を続けられないのは残念だけど、今までにないほどの実績を残せるのなら、それはいい事なんじゃないかな。」
「とんでもないクズですね。」
「ははっ。いきなりだね。ありがとう。嬉しいよ。」
「じゃあ、私達の自殺に協力してくれますか?」
「協力というと?」
「薬でも、ガスでも、拳銃でもなんでもいい。死ねる為のものを、クラスに準備してほしいんです。」
「ああ、それなら、薬が一番やりやすいかな。上に協議してみるよ。」
「本当にあなたはどうしようもないクズだ。」
「さて、じゃあ僕はそろそろ行くよ。薬が手に入ったら、あげるから、使ってね。」




