6-5(武田4)
[武田]
小田さゆりという人物。
「例えるなら、なんだと思う?」
俺はクラスメイト何人かに聞いた。
その答えは、どれもバラバラだった。
俺は、小田さゆりを例えるなら、鏡だと思う。
小田さゆりをどう見ているか、小田さゆりに対して、どう思っているか、それが、自分に対してどう思っているかを示すように思えたから。
田中先生は、ジョーカー。
なにより強い武器になることもあり、圧倒的な弱さになることもある。
槇原先生は、狂った人形。
自分の意思とは関係なく、手足を動かされている。
鈴木は、人間。
自分が一番大切で、周囲と同調し、群れる。
彼女は人によって見方が変わる。
冷徹そうに思う人もいれば、とても熱い人と思う人もいる。
強そうに見えるが、実際は儚い人だと思う。
彼女はとても攻撃的だけれど、なぜだか、守ってあげたくなる時がある。
彼女に近づくとケガをしてしまうけれど、その痛みさえ、愛おしく思えてくる。
小田さゆりは、
誰よりも素直で、誰よりも狂っている。
いつのまにか、俺は彼女が気になっていた。
それが、恋なのかは分からない。
分からないけれど、彼女は人を惹きつける。




