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傍観者  作者: Amaretto
第四章
24/56

4-3(槇原5)

[槇原]


 田中先生と、パートナーになってから、約束通り、私は何もしなかった。


 小田さゆりは、監視カメラの発言通り、カンニングを実行した。


 私は、タブレットからデータを盗むつもりだろうと予想していた。後日、トイレ前廊下の監視カメラ映像を確認すると、藤井と小田がカンニング実行する様子が、ばっちりと映っていた。私は、それを校長へのレポート内容に加えた。


 そのカンニングについては、会議が開かれ、クラスの連帯責任としてみることになった。生徒達には、他の人がカンニングをしないように抑制するためと伝えた。

 しかし、それは嘘で、実際は生徒を使った実験だった。重いペナルティによって、カンニング犯以外が、どういった行動を取るのかを観察する為に連帯責任とした。


 この学校では、問題が起きるほど、それが重要なデータとなるため、問題を起きないようにする対策は取られない。生徒達は、生徒達のやりたいように、行動させる。私達教師は、それを監視するだけだ。


 カンニングの連帯責任によって、クラスでは暴言を言う人も出てきたが、カンニング犯である小田がその場を収めた。


 その夜、掲示板に書き込みをしたのは、確かに小田だ。


 翌日、藤井は責められ、小田は、掲示板へ投稿したことを暴露した。


 昼の時間には、藤井と武田が2人で話し合う。そこで、武田は小田が共犯であるというこを突き止め、その証明方を考えた。小田の中間テストの点数が異常だという藤井の発言により、点数開示申請させる方法を選んだ。


 次の日の朝、武田は、藤井がカンニング犯かどうか、点数開示申請で証明する予定だと皆に説明した。そして、放課後それが行われた時、武田は油断している小田の点数も開示させた。そして、開示させることには成功した。だが、小田を共犯だと証明することはできなかった。


 あの時、開示された点数は、確かに小田本人の点数であった。それが、武田の予想外の出来事だった。武田は、藤井の言葉を信じ、点数開示申請の方法を取った。だが、それが敗因だった。


 私は最初、藤井が嘘をついたのかと思った。けれど、中間テスト直後、確かに藤井は、小田有紗に対して点数開示申請を行っていた。


 しかしそこに表示されていたのは、小田の点数ではなかった。


 教師は、クラスの誰が誰に点数開示申請をして、開示したか、してないか、その他、表示された点数も見ることが出来る。


 武田が申請した時の小田の点数と、藤井が申請した時の小田の点数が違うことから、自分の点数結果を変更したとしか考えられない。


 普通の生徒なら、もちろんそんなことはできない。けれど、彼女には、それができた。ということは、彼女は学校側の人間と繋がっている可能性が大きい。

 もしそうなら、教師が点数開示申請のやり取りの内容を見れることも知っているかもしれない。そうだとしても、小田は、私に怪しまれること恐れないだろう。もし私が見たとしても、小田、もしくは小田に協力する人が、ダミーの点数を表示することくらいは可能だぞという、私への脅しにもなるから。


 彼女は頭がいい。藤井へのイジメも、自分の手を汚さずにやった。

 そして、罪悪感などは全くない。


 彼女は、怖い。まるで狂った人形のよう。人を操っているようで、彼女自身が、操られているように思う。


 彼女がなにか行動する時、本能的に、助けを求めているように見える。

 誰か、私を止めてって、言っているように思える。


 でも私は、田中先生の約束の通り、何もしなかった。

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