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傍観者  作者: Amaretto
第三章
16/56

3-1(槇原4)

[槇原]


  SS制度崩壊の、パートナーにならないか。

  このふざけた制度をぶっ壊してやるのよ、と田中先生は言った。


「崩壊させるなんて……そんなこと…….。」


「出来るのよ。」


「え。」


「そんなこと出来っこないって思ってたら、いつまでも出来ないわ。やってやるのよ。見くびらないで、私を。」


 強い瞳で、彼は私に訴える。


「もう一度言うわ。私のパートナーになってほしい。」


 冗談のように聞こえるセリフだが、田中先生はどこまでも本気だった。


「私は、本気よ。けれど、もしまきちゃんが断ったら、もう二度と言わないことにするわ。でも私は、分かってるのよ。まきちゃんがこの制度を許せないこと。そうでしょ? 顔に書いてあるもの。……まきちゃん、今、この時にでも、生徒と私たちは監視されてるのよ。そんなの、許せないでしょ? 私は、許さないわ。だから、壊しましょう。一緒に。」


「でも……。」


「でもじゃない。もしかして、いつかそのうちこの制度が自然に終わると思ってる? それまで、生徒を見殺しにするの? いつかじゃダメなのよ。今じゃなきゃダメなの。今を変えたら、いつかも変わるけど、いつかを変えても、今は変えられないもの。今を変えても、11年前のあの時が変えられないようにね。それに、制度崩壊なんて、誰がやるのよ。私達しかいないのよ。だから返事は、当然、はい、でしょ。」


 まるで上司が部下に圧力をかけるように、田中先生は言った。いいえ、なんて言わせないつもりだ。この先生は。でも、制度崩壊のパートナーなんて、いきなり言われても困る。

 決意出来ない私に、田中先生は一息ついてから、私に頷かせる為の決定的な一言を言った。



「……あなた、教師なんでしょ。だったら、生徒を守るために、覚悟決めなさいよ!」



 このセリフは、私の心にずんと響いた。

 ここで、断ってしまったら、私は教師である資格がない。生徒を守れなくて、何が教師だ。そう思った私は、自然と返事をしていた。



「パートナー、なります。」



 それが、田中先生の戦略だったのだろう。私に「はい」と言わせるスイッチを知っていたのだ。してやったりといった顔を、田中先生は浮かべる。


「あら、ありがとう!嬉しいわ!よろしくね!戦友として、頑張っていきましょうね。」


 先ほどの重圧の効いた声とは違い、軽く明るい声で言う。

 私が、勢いで返事をしてしまったことを気にしないように、もう決まったこととして、田中先生は話を進めた。ああ、嵌められた。嵌められてしまった。


 冷静に考えれば、SS制度を崩壊させようとしてる教師なんて、圧倒的に不利じゃないか。もう既に、敵陣の中で、敵の指示で動いているんだから。しかも、SS制度を作った国の上層部を相手にしなきゃいけないのだ。


 田中先生の勢いに押されてしまった。けれど、私は後悔していなかった。生徒を守るために、戦う決断をしたことについて、一ミリだって後悔していなかった。


 私は、強い教師でありたい。なら、国相手だろうが、やってやろうじゃないか。絶対崩壊出来ると言っている田中先生を信じようじゃないか。戦うのだって、怖くない。田中先生の言うように、今しかないんだ。私達しか、やる人はいないんだ。


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