高峰家とボク
海さんのお店に行った翌日、ボクは海さんとの約束通り高峰家に遊びに来た。
「真姫くん、いらっしゃい」
「こんにちは、海さん!」
「こんにちは。渚ー、真姫くんが来たぞー」
「え!?私聞いてないよー!真姫くんちょっと待ってて!」
渚ちゃんが何処かに走っていく音が聞こえる。
「ふっ、そういえば今日来ることは言ってなかったか?」
この顔は、絶対わざと言ってないよね?
多分渚ちゃんは服を着替えに行ったんだろう。
男のボクでも、部屋着を見られるのは少し抵抗があるし。
「まあ、渚が戻ってくるまでリビングでテレビでも見て待ってな。オレはお茶でも入れてくるよ」
「すみません。ありがとうございます!」
「あー真姫くん。紅茶と普通の日本茶どっちにする?」
「うーん、紅茶でお願いします」
「オッケー」
そう返事をして、海さんはキッチンに向かった。
ボクは特に何かすることも無いので、海さんに言われた通りテレビを見ておく事にした。
「はい、真姫くん。紅茶な」
「ありがとうございます。……ん、これ、レモンティーですか?」
「そうそう、最近自分で色々な味の紅茶作るのにハマっててさ」
「へー、凄く美味しいです!」
「うん、ならよかった」
こんな会話をしていると、渚ちゃんが戻って来た。
「こんにちはー、真姫くん!」
「こんにち……あれ?渚ちゃん、それ、新しい服?」
「そうなのー!どう?」
「うん、可愛いんじゃないかな」
「んふふー、ありがとー!……と言うか真姫くん?」
「ん、なに?」
「そんな女の子みたいな服を着てるってことは、話はお母さんから聞いてたけど、本当に女の子になったんだねー!」
「まあ、そうだね……」
なんで渚ちゃんはあんなにニコニコしながら話してるんだろう?
ボクからしたら女の子になっても全く嬉しくないけど。
「よーし、これでやっと真姫くんにカワイイ服が着せ放題だー!」
「いや、着ないよ!」
確かに渚ちゃんは昔からボクに女装させたがっていた。
だけど、女の子になったからと言って、そう言う服が着たくなる訳じゃない。
嫌なものは嫌だ。
「えー、いいじゃん!」
「絶対やだ!」
「まーそう無理を言ってやるな渚、オレだって昔は同じ様なもんだったし」
「あ、そうだ!」
「おい、少しは母親の話を聞け!」
海さんも大変そうだなー。
「ふっふっふー」
渚ちゃんが笑顔で近づいてくる。
「渚ちゃん。ボク、嫌な予感がするんだけど?」
「……ダイジョウブダヨー」
「そんな棒読みで言われても……」
「まあまあ、とにかく玄関行って靴履いて!」
もの凄い強引さだ!?
「ちょ……海さん助けて!」
「ん?んー、まあ人生諦めることが必要な時もあるぞー」
「そう言うことだよ真姫くん!」
「どう言うことなの!?」
と言うかボクは何処に連れて行かれようとしてるんだろう?
「行ってきまーす!」
「やだー!」
こうして、ボクは何処に行くのかも分からないまま渚ちゃんに連れて行かれるのだった。