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初めての女の子ショッピング?

 そんなわけで熱も下がった次の日。

 突然ではあるけど近所のショッピングモールで買い物をすることになった。

 ママが急に動くのは今に始まったことでもないからもう慣れた。


「そう言えば、ママってしばらくこっちに居るんだよね?仕事とか大丈夫なの?」


「海外の仕事は部下に引き継いだし、こっちではまた塾長の方に戻ろうかと思ってるの。部下もあっちの仕事には乗り気みたいだし、もしかしたらずっとこっちに居るかもしれないわね」


「そっか、じゃあママとも遊べる時間が増えるね」


「そんなに私が喜ぶようなこと言っても何も出ないわよー?」


 そう言って、ママは早足に目的の店へと向かう。


「よし、まずはここね!」


 立ち寄ったのは下着の店。

 もちろん女性用だ。


「うう、流石に目の毒だよ……」


「これから何度も見るんだからそんなこと言ってられないわよー?」


「うーん……わかってるんだけどさー」


 どうしてもこのキラキラ空間には慣れられる気がしない。


「ほらほら、採寸だってしなきゃいけないんだから早くこっち来なさい」


 採寸……?


「採寸ってどこの?」


「それはもちろんバストのに決まってるでしょう?」


「ああ、バストね。なるほど……」


 ……いやいや!

 流石に最初にここはハードル高くないかな!?


「そんなに緊張しなくてもいいのよ?バストの測定なんて服の上からなんだから」


「え、そうなの?」


「そのために薄着を着せてきたんだもの」


 服を選ぶときにほぼ無理矢理薄着にされたのは、そう言うことだったのか。

 てっきり全部脱ぐものだと思ってた。


「ふーん、なら安心……かな」


 なんて思っているとママがいかにもバイトって感じの店員の女の子に話しかけていた。


「あ、ねえ、今日店長さんっている?」


「え?はい、いますけど……」


「ちょっと呼んでもらえないかしら?雨野って伝えてくれたら分かると思うわ」


「はい、わかりました」


 そう言うと店員さんは、急ぎ足でバックヤードの方へ行った。

 一分ほどするとバックヤードからボクもよく知っている女性が出てきた。


「ふぅ。今日はどうした?美姫」


「この子のことで、ちょっとだけお願いがあってねー」


「あれ、真姫くんじゃん。……どうして女の子の服?」


「あれ、(かい)さん?」


 高峰海(たかみねかい)さん。

 口調は男っぽくて自分のことはオレと呼んでるけど、高身長でスタイルのいい美人な人で一言で表すならクールビューティー。

 名字から分かるように渚ちゃんの母親で、雨野家と高峰家はお隣さん同士のため昔からよくお世話になっている。

 今日はじめて知ったけど、下着店の店長をしてるみたい。


「そうそう、その事なんだけど……」


 ママが、ちょっとだけ勿体ぶって言う。


「何?早くいいなよ」


「まーちゃん、女の子になっちゃった」


「あー、女の子に、そう。……て、ええ!?一大事じゃんか!」


 海さんもかなり驚いているみたいだ。


「渚からは倒れたってことしか聞いてないんだけど?」


「そりゃそうよ。私だって知ったのは昨日だもの」


「渚が聞いたら何て言うか……。そういうの気にする子じゃないとは言え、相手は真姫くんだし……」


 海さんが少し落ち着くのを待ち、本題に入る。


「とにかく、そう言うことなのよ」


「まあ、大体は分かった。つまり、オレに真姫くんの採寸をお願いしたいってことだよな?」


「そうそう、さすが海ね。理解が早くて助かるわ!」


「そういう事情なら確かにオレの方が適任だよなー」


「海さんの方が適任って……?」


 別に他の店員さんでも海さんからすれば関係ないはず。

 確かにボクとしては知ってる人の方が恥ずかしさもちょっとは和らぐけど。


「その話は採寸しながらなー?」


 そう言って海さんはボクの頭を撫でる。

 ボクは、昔から海さん頭を撫でられるのに弱い。

 女性に対して失礼かもしれないけど、海さんからは父性に近い感覚を感じることがあるからなんだと思う。


「さて、じゃ、真姫くんは借りてくぞー」


「はいはーい、連れてっちゃって。私は他のお店見てるから終わったら連絡頂戴ねー」


 そう言ってママはお店から出ていった。


「よし、試着室行こうか!」


「う、うん」


 海さんに手を引かれながら試着室へ向かう。


「真姫くん多分ブラのサイズ、合ってないよな?」


「どうなんだろ。よく分からないです」


「んー、じゃあちょっときつかったり、ぶかぶかだったりしないか?」


「あ、それならちょっとだけきつい……かも?」


 海さんは「なるほど……」と言うと試着室に置いてあるサンプルと思われるブラから一枚選ぶとボクに渡した。


「取り敢えず、これつけてみて。多分ぴったりだと思う」


 試着室のカーテンを閉じてもらい、ブラを変えるために服を脱いだ。


「真姫くん、中々に思いきりいいな……」


「うちのお姉ちゃんのおかげだと思いますよー?」


「……あ、今思い出したんだけど」


「何をですか?」


「何でオレが適任なのか、とか」


 そう言えばそんな話をしてた。


「実はオレ、元々男だったんだよね」


「え」


 驚いて、着けようとしていたブラジャーを落としてしまった。


「丁度中学三年生になる前だったか、そのくらいに真姫くんと同じようにTS病になったんだよ」


「……ほんとに?」


「オレは昔も今も嘘ついたことなんか無いことには自信があるぞ?」


 初耳だ。

 けど、海さんから父性のようなのを感じる理由にもなる。

 そう言えば、渚ちゃんは知ってるのかな。


「渚にはもう話してるけど、その様子だと真姫くんにも話してなかったんだろうな」


 海さんは落としたブラを拾いながら話す。


「てことは、海さんの口調が男っぽいのって……」


「元男だからだな。わざわざ口調変えるのも大変だったからな」


「あー、そういうことだったんですか」


 海さんはあんまり自分のことを周りに話さないタイプなのだろう。

 多分このことを知ってるのは海さんの中学の同級生とか家族くらいだと思う。


「そう言えば、真姫くん。ブラのちゃんとした着け方って知ってるのか?」


「普通に着けるんじゃダメなんですか?」


「下着も気を使わないと形が崩れる原因になるからな。折角だし教えてあげようか?」


「お願いします……」


 それから三十分程。

 採寸も終わりママに連絡をしてもらった。


「しかし、今の真姫くんを見ても何の違和感も無いのが不思議だなー」


「ボクもそれには驚いてます。これからカッコいい男になる予定だったのになぁ……」


「ま、なっちゃったものはどうしようも無いからな」


 なんて話していると、ママが戻ってきた。


「まーちゃん、ちゃんと測ってもらった?」


「うん、それにオススメなのも教えてもらったよ!」


「なら、よかったわ。海、まーちゃんに何も変なことしてないわよねー?」


 ママが冗談っぽく言う。


「誰がするか。そもそも今はアイツとうちの子以外に興味はないし、あったとしてもお前の子に手はださん!」


 アイツとは、海さんの旦那さんのことだ。

 最近会ってなかったけど今でも仲は良いみたい。


「相変わらずラブラブねー。ウチの人が元気だったら絶対ラブラブさでは負けないけど」


「は、オレ達の方が仲いいに決まってるだろ?」


「ほんと見せてあげたかったわー。私たちの仲のよさ」


「なんだって?」


「あら、聞こえなかった?」


 二人がなんだか燃えてらっしゃる!?


「あの、二人とも?」


「「なに!?」」


 え、怖っ!?


「そろそろ周りも気にした方が良いと思う……」


 店の中の人も外の人も合わせて、かなりの人数がこっちを見ている。


「あ、あらあら……」


「うん……やめとこうか?」


「そ、そうねー……」


 その後、海さんオススメのものからいくつか選び店を出ることに。

 ママはボクにはまだ女の子の服は分からないだろうと気遣って、迎えに来るまでに服を買ってくれていたみたいだ。


「あ、そうだ真姫くん。明日なんだけど……」


「はい?」


 海さんがボクを呼び止める。


「土曜日で渚もいるし、あれだったら遊びに来たらどうだ?ついでに説明も兼ねてな」


「そうですねー。はい、是非!」


 渚ちゃんにはちゃんと自分の口で説明したいし、丁度よかった。


「よし、じゃあまたなー真姫くん」


「はい!今日はありがとうございました」


「あと美姫もな」


「へえ、私はついでなの?」


「それで十分だろ」


 まだ火花が見える……。

 まあ、これでこの二人の仲が悪そうに見えないのは、昔からそういう関係なんだろう。


「あ、そ。じゃまたね」


「おう」


 海さんの店を出たあと、そのままショッピングモールを出て、今日は帰宅した。

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