表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ごさ~い  作者: 雅 彦
8/17

08

 急遽、校庭に呪術師サマネのテントが張られて、その中でマリア先生に憑いた病魔を払う儀式が行われた。

 山の夕方なので、すぐ太陽が山の向こう側に行って、夜の闇に包まれ始める。

 先生はキリスト教のシスターなので、このような邪教の集会で、呪術師のまじないなど受けてくれないのが普通だが、子豚たちが持ってきた正体不明の薬も飲めるだけ飲んでくれて、子豚共の心遣いを無下には断らなかった。

 神学的には駄目なのだろうが、修道女長が乱入するようなら、ライカか子豚が止めてくれる。

「fdhしぎうghdl;sl;ふrhgdshgdslkふぁwfgslghsrlghsふぁsふぁsfl」

 また意味不明の呪文を唱えながら、先生の周囲を踊り狂う呪術師サマネ

 こうやってトランス状態に入って行き、神憑り状態になって、神?の力で病魔を去らせ、手にしている骨で出来た槍で突くようだ。

 テントの中では護摩の火が炊かれ、香草を焚べてみたり、病魔が嫌う状況を作っている。

 サマネの格好は、全身を護符で覆った服と、頭ごと隠す仮面を被っていて、まるでラブライバーみたいで顔も出していない。

 病魔に取り憑かれないように、正体がわからないようにしているそうだ。

 私も修理屋プリモントから貰った魔法のナイフが有るので見学できているが、子どもたち全員退避させられ、私も顔出し禁止でマスクして医療用の防止被って、メガネだけ出るようにして見ている。

 本来私も病魔なんか見えない普通の人間だが、眼鏡に魔法がかかっているので精霊も見える。

 まだ経験が浅い医者だが、癌の病魔とはこんな奴なのだと初めて拝見した。

『キーーッ、キーーーッ!』

 先生の腹の中から追い出され始め、苦しそうに太った体をくねらせている。

 周りで見ている子豚たちからも、ガン見されながら思いっきり呪われているので、とても苦しそうだ。

 子豚とか呪いの人形を知らなければ、こんなのも笑い話なのだが、病魔は実在する。

「病魔よ去れっ、我等の仲間から離れよっ、消えろっ、消えろっ!」

 厳しい術と呪いで悲鳴を上げら、ついに先生から引きずり出された病魔、サマネも槍で刺して引っ張るが、手足では決して触れようとしない。

 そこで病魔は別の宿主を探し、子豚で呪いのビスクドールに入ったりすると即死するので、私に向かってきたが、魔法のナイフがすっ飛んで行って病魔を刺した。

『ギエエエエエエエエッ!』

 実体がない魔物なので、機械には認識されず、放電とかも全く効かなかったようだが、真っ黒なナイフは通じた。刀身は外注らしいが、作った奴なにもんだよ?

 それでも病魔はナイフを抜こうとして暴れ、勢い余って護符を切ってしまい、護符だらけの場所に穴を開けた。

「いかんっ!」

 その隙間から病魔が逃げ出そうとして、サマネも槍で刺したが、テントから逃げられてしまった。

「お前達っ」

 テントの外に待機していた子豚が、骨で出来たブーメラン、骨製の投擲武器、空飛ぶ魔法のナイフ、色々と飛び交って病魔を叩き落とし、走って追いかけたサマネが、骨の槍で止めを刺した。

『ギャアアアアアアアアッ!』

 悪は滅びた……

 あの、私はこれでも西洋医学の医者の端くれで、癌の摘出手術とか外科は専門外だけど、何で病魔を退治する儀式にまで出席してんの?

「お前のナイフは病魔にも効いたよ、これからも医者で呪い師としてやって行くんなら、まずそれで病魔から切っておやり」

 病魔を倒す所を見せて、今後も呪術師としてやっていけるよう見学させられてた。

「薬とかはその後だよ、まず誰かの呪いや病魔を倒してやれば、後は放っておいても治るもんさ」

「はあ」

 これからの私は、呪術師としても成長を見込まれているようで、西洋医学を施す前に、まず呪術で病魔をぶった切って倒して、それから薬を出してやるように言われた。

 何キャラの医者だよ。


 さて、病魔の方は払ったから、後は薬が効けば先生の癌も治るはずなんだが、腫瘍を治す良い薬とか有るんだろうか? ゴサーイズで売ってると良いけど。

「先生、これも飲んで」

 相変わらず、修理屋とか船長まで薬を差し出して飲ませている、こいつらは宇宙船まである先進科学が有る所から来ているから、イモリの黒焼きとかじゃないだろう。

「癒やしの精霊よ、願わくばこの者の病を癒やし給え」

 呪術専門の呪術師サマネ、治療魔法も使える魔女ビーズマ、他にも精霊とか魔法世界の連中が並んで、治療魔法で癌を治している。

 低レベル魔法では、癌とか結核は治せないのだが、病魔を祓える術者が根本原因を祓った後だから効くそうだ。

「エリーも精霊と契約して、魔法も覚えておきな、いつかきっと役に立つ時が来る」

「はあ」

 近くにいるサマネの精霊も、「ごさいちゃんにモフモフさせてくれるなら、いつでも契約してやる」みたいに抱き上げて差し出してくるが、イヤイヤされてすぐに逃げられた。

(frghしfgさfglgh;つぇrがlhf;)

 多分、精霊語で、「私が、私もあんたみたいに、ゴサイちゃんに懐かれていたらっ、私がオカータンだったならっ」と泣かれている。

 今回のお礼と、呪殺されないように、子豚を数匹持ち上げて、精霊に無理矢理モフモフの刑をしてやると、白目剥いてビクンビクンしながら満足して、ヘヴン状態で精霊界に旅立っていった。

 子豚語は分かっても、精霊語は分からないので、今の所契約のしようがない。薬代かからないみたいだから、契約できるものならそうしたいが。


「あら、もうすぐイエス様に会えると思ってたのに、もう治ってしまったの?」

 神学的にはコレも間違っているんだろうが、先生は死ぬとイエス様に会えると思っていて、死ぬのも全然怖がっていない。

 しばらく診療所には来なかったので、異常は感じていたのだろう。それでも運命と受け入れて、痛み止めすら飲まずに、苦痛すら天命として受け入れていたのに違いない。

 修道女長とか来ると、邪教のまじないまで受けてしまったのを、散々イヤミを言われてから、正しい神学について説教されそうだが、救命措置なので勘弁して欲しい。

「あら?」

「何でっ?」

 皺々のお婆さんだった先生が、突然若返り始めた。手足から皺が消えていたので気が付かなかったが、顔にまで達して皺が減って、どう見ても40代ぐらいに戻ったかと思えば、真っ白な白髪だった髪が伸びて、綺麗な金髪が伸びていく。

 ちょっと回復速度が異常すぎるだろ。

「誰だっ、若返りの魔法まで掛けたのは、治療どころじゃないぞっ」

 いや、子豚共も一人ひとりは適切な治療を施したはずだ、その数が重複しすぎたんだ。

「退避っ」

 子豚共をテントの外に出して、護摩の火を消してから、マリア先生も出そうとしたが、髪の毛が長すぎて絡まってるのか起こせない。体の方も、もっと若返り始めた。

「ぐへぇ」

 私もどうにかテントを出たが、隙間からも髪の毛が溢れ出した。

「先生っ」

 テントの中が輝いて、何かすんごい化学変化が起こってる。

「始まりの時だ」

「ハレルーヤ」

 何か子豚もありがたいものを見たように祈ってる。先生大丈夫なんだろうか? 黒魔術とか暗黒魔法とかはなかったように思うんだが?

 テントが眩しすぎて、周囲にも何か輝く者が降りてきてるみたいで、稲光もあったりちょっと雨が降ったり、沈んだはずの太陽が、雲から光を反射して、なんか神々しい雰囲気になってる。


「あ~あ……」

 とうとうテントをどけて、髪の毛と先生がはみ出して出てきた。どう見ても10歳以下、入れ歯とか差し歯も抜けて、新しい歯が生えてる。

「どうしたんです先生? 歯まで生えて」

 治療前は反っ歯で出っ歯で歯並びも無茶苦茶な昔の人で、ガッツィーな顎をしていたのだが、子供の頃から柔らかいもの食べてる人の歯と顎になった。

「一旦、赤ちゃんまで若返って、この歳になったみたいですよ」

 テントの中で、先生が赤ちゃんか卵細胞まで戻って、卵子の万能性ですべての傷とか病気が治って歯も生えて、それから小学生ぐらいまで成長したらしい。

 赤ん坊まで戻った時に、伸びてる髪の毛とは離れたのか、肩までのセミロングになった。

「カツラがたくさん作れますね」

 先生の外見年齢は、大体10歳以下で落ち着いてしまった。これ、教会と修道女長にどう言えば良いんだろうか?

「何事ですっ?」

 そこでライカが抑えていた修道女長まで現場に来てしまった。

「ええ、ちょっと前から具合が悪かったんですけど、ごさいちゃんたちが治してくれて… ちょっと治りすぎて、若返ったようですよ」

「貴方、その声はシスターマリア?」

「ええ、そうです」

 確か同郷で、学年は違うが同じ神学校に通った同窓生とか聞いたことが有る。

 教会の問題が多いシスターだったが、今度こそバチカンに報告されてしまう。「若返りの奇跡」とかなんとか。

「エリーさんの見立てでは、癌のステージ3だったそうですよ。折角イエスさまに会いに行けると思ってましたのに、この通り治ってしまったようです」

「ふうっ」

 先生本人は平気な顔してるが、修道女長は倒れてしまった。


「あんた達、またやらかしたわねっ、今度は何をやったのっ?」

 ライカに怒鳴られて、整列させられる子豚たち、現場保持も出来たようなので、順番に聞き取り調査をしていく。

「何もしてないわよっ、ちょっといつもの治療呪文使っただけでしょ?」

 魔女ビーズマ、特に問題なし。現実世界では有り得ないんだが。

「あたしは病魔を追い払って、止めを刺しただけだよ。回復祈願も少ししたけど」

 呪術師サマネ、こちらも問題なし。

「俺も、いつもの薬を出しただけ」

 船長カピタン、問題なさそうだが、中身は後で調べよう。

「普通の潰瘍が治る薬だよ」

 修理屋プリモント、潰瘍薬だが、中身不明、ゴサーイズの薬だ。他は低レベル回復魔法と、飲み薬もイモリの黒焼き程度で効くわけがない。

「船長、薬の説明読んでみて、そっちの言葉読めないから」

 薬のボトルに書いてある、細かい異世界語を読む船長。

「え~と、この薬は? 手足やボディーの変更前に、生身の部分を不死化する薬です、肝細胞と同じく細胞核を2個にして…」

「「お前か~~っ!」」

 早速犯人候補が見つかった。普通の薬どころか、サイバネティック系の薬で、体をサイボーグ化して交換する前に、脳とか神経の酸素供給が切れても簡単に死なないようにする薬だ。

 その上細胞核が増えるから、肝臓みたいに足りない部分が再生までする。

「プ、修理屋プリモントも説明書読んで」

「え~と、この薬は、潰瘍、火傷、欠損部分を即座に修復する薬です、手足を切断した場合は、姉妹品のスグナオールを併用して…」

「それもかいっ!」

 欠損部分を即座に修復する薬とか、恐ろしいもんがゴサーイズ店頭で売ってる。その上姉妹品の薬があれば、手足の切断まで治る。これも原因だろう。

 両方飲んだ後に治療呪文食らったりすると、赤ん坊か受精卵まで戻されて、記憶が残ったまま10代以下に若返って、体の欠損が全部治って、病気なんかも問答無用で治される、らしい。


 子豚的にはいつもの事? なのだが、マリア先生からバチカンに経過報告されて「ごさいちゃんに癌の治療を受けたら若返りました」とか手紙とか電話されると、奇跡調査の審問官が来てしまう。

 修道女長とか他のシスターが、「シスターライカは天使を呼び出せる方です」とか抜かしたりすると、「天使は実在した」とか、また騒ぎになる。

 呪いのビスクドールが大量に存在していると、そっちも悪魔祓いだとか、指から銃剣生やす執行者とか守護者とか来て、全部祓われるかも知れない。

「どうするよ、これは誤魔化しようがない」

「特殊メイクでもするか?」

「宇宙船に乗せても若いのが保たれるだけだし、時間経過が早い逆の作用の装置作って、老けるまで偽物でも用意して……」

「幻術を掛けて、外見だけ元通りにするのはどう?」

 とりあえず、魔女ビーズマがどうにかできそうなので、幻術を頼んで見る。どうせもっと碌でもない事になりそうだが。

「マリア先生の外見、元通りにな~れ」

 魔女ビーズマが魔法のステッキを振る。実にいい加減な呪文だが、こいつと契約している精霊が大喜びで魔法を行使する。

 謝礼はもちろん「ごさいちゃんモフモフさせて」だ。

 光の精霊か、外見を自由に操作できる精霊が、マリア先生をさっきまでの姿に変えて行く。

「あ、戻った」

「結構いけるんじゃね?」

 こうして、合法ロリBBAで中の人と外見が60歳と言う、お約束の先生が一人出来た。

 先生は元々、寄生虫まみれの国で育ったので、身長は140cm少々。

 産まれ直した?体は、今どきの栄養も行き渡った小学生として成長したのか、130cmぐらい有るので、服と背丈はごまかせそうな気がしないでもない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ