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ごさ~い  作者: 雅 彦
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05


 今日はアメリケンスキーとかEU人に中国人まで来て、子豚がここに持ち込んだ異世界の産物、特に科学的に進歩した文明が作った物品を求めて、工作員だとか購入者、監視員が入場している。

 まず一個目、ターニャが姐子豚から貰ったのか、パクっていた携帯ゲーム機をアメリカ人に1万ドルで売って、山から退場していった途端銃撃戦になって、争奪戦が始まった。

 防弾仕様でマグナムも効かない車が追走して、アメリカ人の同乗者が手榴弾投たりして、BGMがルパンザサードに変わるような逃走劇で、追走車何台か破壊したものの、アメリカ人の車も谷底に落とされたり、指輪だけ残してお姫様?さらわれたり、どうにか徒歩で逃げて救援呼んで、残骸をドローンに乗せて力尽きて、それも鷹匠のイヌワシに強奪されて、鷹も鷹匠も射殺されて、また所有者が変わって、それ以降はアジールも見失ったらしい。

 ナンキンまで逃げたら、BF団の列車型のロボとか、銀鈴さんと大作くんにロボも「ぶるるるぅぁああ!」言う人も来るんじゃないかと思うが、もしサンプルが揃って世界が静止しても、家の電力と携帯は止まらないはずだ。

 もしBF団とかQとか、ショッカーとか死ね死ね団とか、世界征服を企む悪の秘密結社が有るのなら、そいつらの陣営にも子豚が居て、聖人みたいなオトータンかオカータンに、世界をプレゼントしようとしてるのではないかと予想してみる。

「前から思ってたんだけど、コレを盗みに来させる奴らも、子豚なんじゃない?」

「子豚だったら、出入りとかカチコミに参加したら貰えるわ。あいつら同士は喧嘩はしても戦争はしない。薬でも金銀でも互助会で相談して船長の所に来るか、運び屋に出稼ぎに来て、そこのゴサーイズでも売ってるから、子豚なら登録するだけで買える」

「そうか」


 ちなみに子豚に貰った携帯でゲーム機は、ヘッドセットも一度も充電したことがないし、修理屋プリモントに聞くと防水で防塵で防爆で耐電磁波で、壊れたり汚れるまで使うか、何十年かに一度電池交換すれば良いそうだ。セーブデータも消えない。

 ホログラフを放出する、ガラス状のプリズム面から落としてしまっても、試しに外装に金属でキズを付けようとしても、一切傷が付かなかった。

 教会の関係者やオバハンに配った、漏洩しても構わない電話は、耳に付ける奴か腕時計だった。

 異世界技術なので、子供用のおもちゃ程度の通信機でも、基地局経由で地平線まで通話可能らしい。

 屋根の上に付いている基地局を使用できる見返りに、西側の通信会社とも接続している。ライカがマフィア経由で契約してきたから、あれも収入源だ。

 子供通信機でも、鮮明な動画中継ができる品物でGPS、売れば一瞬で買い手が付くが、卒業する子豚から世話になったオバタン達に、「イツモアリガトウ、コレをワタシダトオモッテ」と無理くり言わせて贈呈すると、涙を流して喜んで「一生大切にするわね」と言っていたので、現金では手放さないと思う。

「だからあんな豚共、さっさと追い出してしまやあ良いんだよっ」

 テロリストアジールは、子豚語が話せるネイティブなのに、何故か嫌いで敵対していて、いつも追い出す理由を探している。

「じゃあ、解散して要注意人物を見て回って。私はゴッチャイ連れて行くから、荒事でも頼りになりそうな子豚でも連れて行って頂戴」

「ああ? 俺は一人がいいや」

「「「姐さん、お供します」」」

 ライカは戻ってこさせたゴッチャイを連れ、アジールは手下の少年を何人か連れて行った。私は船長か魔女でも拐ってこよう。


 以前来た襲撃者も、子供を拐いに来たとか、イスラム勢力が教会を燃やしに来たんじゃなくて、子豚自身を誘拐しに来たか、異世界の異物を盗みに来ていたようだ。

 ライカ不在でも、子豚が仲間呼んで何度か撃退して、炎の魔法とか雷撃とか使ってたのが魔女ビーズマごさい、光線銃撃ってたのが船長カピタン、足元に電気通りやすいように消火用の水撒いてたのが修理屋プリモント、悪霊呼んでたのとか、炎の魔神呼んでたのは、親か家族がいるので帰ったのか、今の所見かけない。

 その時も襲撃犯の一人が子豚を見た途端寝返って「この子は、4年前に死んだ俺の娘だっ!」とか叫んで、一緒に来た襲撃犯を射殺して、子豚共を守り抜いて満足してから死んだのは驚いたが、流石の子豚もその時だけは「オトータン」と呼んでやって、黒いのが一人分中から出てきて、父親?をあの世に案内してやっていた。

 奴らはどういった仕組みなのか知らないが、子供を亡くした親が見ると、その霊体だとか魂が自動的にデリバリーされて、瞬時にその親の子供に擬態できる。

「あれ? 船長帰った?」

「奴ならまた連れて行かれたぜ、店に預けてるゴールドでも取りに帰ったんじゃないか? 頼りにされ過ぎるのも困ったもんだ」

 ゴサーイズのイートインに船長が居なかったので、別のでも探そう。背中が重い、足も重い。

「あんたはいつもそうやって、ごさいちゃんに懐かれてっ、あたしが、アタシがオカータンだったら、あたしがオカータンだったならっ!」

 ここにも居たロッチナ大佐に睨まれて泣かれる。

 現在の私は両足に子豚が纏わりついて、どこまでも付いてくるオプション機みたいになっているし、背中に一匹オスの子豚が背負い紐内でおぶさって、子泣きじじい状態で睡眠中。

 子豚は食い物を喰わないでも死なないが、オカータン成分とか、アガペーを吸収していないと弱るそうだ。

 私は重いし邪魔でしか無いのだが、オバハン共には羨望の眼差しで睨まれる。

 あれだけ愛情たっぷりのオバハンでも、心が通じていないので愛を吸収できないらしい。

「これ、重いので背負ってて下さい」

「え……?」

 でも、私に親切にしていると、背中で寝ているのとか、膝の上で寝ている邪魔者、パソコン邪魔妖怪などを、オバハンに譲り渡すので、イジメまでは受けていない。

「ああ、アタシの背中にゴサイちゃんが……」

 寝ていても、乗っている背中が私やパパやマリア先生じゃなかったら、すぐにイヤイヤして逃げるが、子豚が目を覚ますまで、ほんの少しだけの天国を味わうオバハン。

 もうオバハン過呼吸起こして号泣。呪いのビスクドールに精気を吸われる呪いが掛かりそうだが、それでも命が尽きるまで手放したりしないだろう。

「ああっ、あんただけズルい」

 別のオバハンも、他の子の世話をしながら、子豚を譲られたら一瞬で普通の子を捨てて、子豚を抱っこしたり背負ったりしたがる。

「私にも… あんたっ、エリーに頼んできな」

 私を遠巻きに見て、次の子豚を譲ってもらえるのを待ち、普通の子ミサイルとか撃って来た。

「な~? 姉ちゃん、コイツ連れてって良~い?」

「ああ、好きなだけ持って行け、私にゃあ邪魔なんだよ」

「かーちゃん、連れてって良いって」

 足元でノコノコ歩いている子豚は、踏み潰しそうになるか、足に抱きついてダイエット器具みたいに重りになっていて、邪魔なので譲渡する。

「ごさ~い」

 ふくらはぎから子豚を剥がして子供に渡す。確かに山登りもして、子供の頃は山羊飼羊飼いもやって脚が鍛えられたから、ライカみたいな針金みたいな足じゃなくて、お陰様でブットイ大根足になってるよ、悪かったな。

「かーちゃん、貰ってきた」

 足用の重りで、抱っこちゃん人形みたいなのを、二匹とも子供に譲り、母親代わりの保母のオバハンの所に連れて行ってもらう。

 オバハン本人が強奪しようとすると、岩のように重くなって動かないし、本当にテコでも動かないが、子供が持つと何故か運搬できてしまう。

 この手段で、子連れの工作員に誘拐されないように気をつけないといけないが、知らない人や子供には、もっと懐かないので誘拐はされない。

「ああ、ごさ~いちゃん、こんなに可愛らしい…」

 オバハン達お手製の服を着ている子豚、首の周りに花びらを表すヒレがついてるが、どう見ても食虫植物に喰われてる豚。

 それでも愛情アリアリのオバハンから見ると「花の妖精のごさいちゃんが、ふわふわと飛んで、蝶々がめしべにも止まるの」という、統合失調症の症状で蝶々が飛んでいるのまで見えるそうだ。

 現実にはハエとか蚊とか蛾が集っている。ちなみに蚊が子豚の血を吸うと一瞬で死ぬ。毒とか呪いとか病原菌で即死する。蚊取り線香替わりに丁度よい。

「今日のごさいちゃんは、チューリップの妖精なのね? ああ、素晴らしい」


 ここに来ているオバハンたちも、西側からの古着や期限切れ食料で衣食住は保証されるが、ボランティアなので給料はない。

 24時間就労という酷い雇用形態で、子供や子豚が夜泣きすれば随時対応という、ブラック企業も真っ青の奴隷状態なのに、子豚共の母親になりたくてなりたくて、応募者続出で空きを待っている状態で、人が来過ぎて何故かボランティアが満杯。

 子供を亡くした両親とか、父親まで勤めに来たり、見に来るのを断って「父親は子供のために稼いでくるもの」と言うと、どうやって食っているのか、稼ぎを全額特定の子豚に貢ぎに来る始末で救いようがない。

 常人には着ている物と髪型でしか見分けがつかない子豚なのだが、何故か子供を亡くした親には、子供の霊や魂を持っている(食った?)化物の見分けができる。

 折角子供が生きていたんだと誤認しているのに、その夢を覚ますほどの悪魔ジャボールではないので、無理矢理現実を突きつけたり、治療して目覚めさせたりはしない。

 まあ、周囲の世界も貧しすぎて、食べ物が貰えるならと、無料で米軍基地に勤めて、中で売春しているのもいるし、ロシア軍が進駐している北部方面でも、似たようなオバハンが勤めているそうだ。

 子供兵として誘拐され、内戦中ずっと戦わされて、弾丸の火薬齧って揮発成分中毒、停戦合意後に開放された男女も、ここに来て子豚を見た瞬間、自分が流産死産した子だと勘違いしてしまう。

 男の方も故郷で将来を約束した女の子が死んでいたり、その子がレイプされたり報復にレイプしたり、生まれることも出来ずに堕胎されて、死産だった子を作った経歴が有ると、同じように地獄の底から手が伸びて、子豚に貢ぎ続ける生活が始まってしまう。


「やあ、呪術師サマネ手が空いてたら一緒に来て」

「いいよ、何するんだね?」

 メスの子豚、呪術師を捕まえた。他の子豚より、しわがれた声で話す結構な年のババアで、自分の年は数え忘れるぐらい生きて来たと言っていた。

 荒事担当ではないが、コイツの周囲には守護精霊が居て守られているので、常人には見えない精霊に一声掛けるだけで、願い事が叶うと言うか、無理矢理守ってくれる。

 前に一度、守護精霊が見えるようにしてもらうと、ここのオバハン共のように、表情が溶けて激ラブ状態の女の精霊が見えた。

 どれだけ愛を注いでも、言葉や愛が通じていないので、オカータンとは呼んで貰えない、悲しい愛情を貢がせられている気の毒な精霊が居た。

 ご多分に漏れず、子豚に懐かれる私を見て、精霊語で何か言っていたが、多分「私が、この私がこの子のオカータンだったならっ」と言われて泣かれ、呪われていると思う。

 死の呪いとかソッチ系は勘弁して欲しい。

 イモート分とかムスメと紹介されたので、現在は精霊が私のオカータン気取り。

 私を娘にしてしまえば自動的にオカータンかオバータンになれるので、さっきの少年みたいに扱われているはずだ。今の所は。


「皆んなが貰ってるゲーム機、買いに来たか盗みに来てる侵入者が居るのよ。あれが流出すると、世界が滅びるそうだから止めて」

「そうかい、じゃあ、心が読める精霊も連れて行こうかね」

 使役されるはずの精霊が、大喜びで子豚に纏わりついて、泣いて喜んでいるのが見えるようだ。

 呼び出して使役する時のご褒美は、スリスリとかモフモフ、抱っこで支払われるそうで、命とか精気は吸われない契約らしい。

 どこかの魔女集会の夜に術者の母親に拾われて、引き取った魔女から呪術師を継いで、母親が死んでからも「何世代か」子孫の面倒を見てきたが、ここと同じで西洋医学が入ってきて、用済みになって流れて暮らしていた所、パパとマリア先生を見つけて、ここに住み着いたそうだ。

 同じように魔女の弟子の若い魔女ビーズマは、一人前になるために修行中で旅をしていて、パパを見て一目で気に入って、ここで修行をしている。

 あいつの母親とか精霊は見せて貰っていないが、だいたい同じ状態で溶けた表情で見て愛情注ぎまくり、ベテラン魔女の使い魔とか、炎の精霊と風の精霊が影からコッソリ観察していて、あいつと仲良く遊んだり会話すると、カレカノの総一朗くんみたいな怖い目で睨まれると思う。女同士なんだから勘弁して欲しい。

「最近足が痛くてねえ、ちょっとおんぶしておくれ」

「え、ええ……」

 私への報酬要求は、アガペーの吸収だった。

 周囲から幻聴とか幻覚ではなく、精霊のマジ悲鳴とか呪いの呪文が聞こえて、「私がっ、この私がオカータンだったならっ?」と泣き叫んでいる声が脳内で響いた。

 人類にも聞こえるように、耳元でウィスパードとか絶叫とかして下さっているようだ。

 死の呪いとかソッチ系は、是非勘弁して欲しい。


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