04
舞台の演目も、子豚やシスターがやってる手品とか、どうでも良さそうな内容なので、ライカが出入り口を警備している奴らを絞めに行くのに付いていった。
「やめてっ、ごさいちゃんに木の棒なんて刺さないでっ!」
手品師と助手が子豚で、箱の中で棒を貫通される役だったので、ババアも招待客も泣き喚いていた。
もし箱に剣を刺すマジックとか、胴体部分を横に外したり、人体切断で子豚真っ二つにして、二匹入ってる足先のほうが動いたりしたら、失神者続出で医務室が満杯になるので禁止した。
正門、入場ゲート前
「あんた達、侵入者を見逃したわね? 誰が鼻薬嗅がされて、入るの許したのかしら?」
「ゴッチャイッ」
警備関連はさっきのテロリスト妹が担当なので、あいつを捕まえないといけないのだが、まず気の毒な門番が吊るし上げられた。
「い、いえ、さっきの外国人、招待客を連れて来て、入場券も持っていたので……」
実質この孤児院の支配者でナンバーワンに睨まれ、暴力的にも敵わないので怯える少年。
「きゅっきゅっ、ゴッ、ゴッチャ、コルルッ、ニュ、カルルッ、カルルッ?」
「ごさ、ごごっ、キュュキュュ、カルルッ、ゴゴゴっ」
この少年も幼児期から子豚と育っていたのか、一番難解な発音をするゴッチャイと雀語を交えて会話していた。
先程のゲーム猿との会話と同じで、カルルッと言うのは地上からの脅威で、猫とか人間を表す言葉だ。
「ゴチャッッゴ、ンゴ、ゴチャい、ゴっ」
その内容を少年からライカにも伝えるが、残念ながら私には全部ヒアリングできない。
「へえ、貿易の相手が西側の商人だったから、断りきれずにチケットの手配と、ここに入る手引までしてやってたのね? 卒業したごさいを高く買ってもらったんだから仕方ないわね」
今の会話のどこにそんな単語が入っていたんだろうか? こいつらの方が何者なんだよ。その上子豚を高く売ったと子豚語で言って、自分で語るに落ちてるし。
子豚語には綺麗事と言う表現がないから、多額の寄付をして頂いた、などと嘘が言えない。
子豚を買い取った人物でも、愛情がなければ懐かないので、本心から引き取ったのだろうが、色々な産物にも興味があったんだと思われる。
しかし、カタコトどころかゴッチャイ語まで全部理解して会話する少年がいたので、ごさい協定に従って、私はオバハン共に伝える義務が発生した。
それでなくても子豚に懐かれて近寄られるので、子豚の母親に成りたくて仕方がないオバハン達に「私が、この私がオカータンであったならっ」とか、どこかのロッチナ大佐みたいに泣かれる。
通報義務により、私は羊飼い時代に覚えた指笛で、孤児院方向に向かって伝えた。
「ピューーー、ピュイーー、ヒュ~~…」
内容は、おーい、雀、ごさい、話す、少年、居る、という短い内容だったが、間髪を置かずババアとオバハンのボランティア、その娘に卒業生、子供を亡くした親などが突進してくる、ドドドドドという地響きが近付いてきた。
ほぼ全員女で、ごくまれに子豚に魅了された男ボランティアもいた。
「ゴッチャイきゅんと話せるのは貴方ね? すぐ結婚しましょう」
「ええっ?」
真っ先に走ってきた病んだ目の若い娘が、孤児の少年の手を取って求婚した。10歳近く年が離れていて、まだ中学生で卒業前の子供にガッツリ求婚した。
「スズメちゃんと話せるのかい、今日からあんたは私の息子だよ」
子豚語が話せるだけでも貴重で、その上ゴッチャイ語が分かる友達なら、金がなくても間接的にゴッチャイのオカータンになれるので、無理矢理自分の息子にしようと画策するオバハン。
「いいえ、その子と結婚するのは私よっ」
「あたしの息子だよっ」
30歳過ぎてるような既婚者まで中学生の少年に求婚した。家とか旦那はどうするんだろうか?
将を射られないので、まず馬を手に入れようと醜い争いを続けるババアども。
子豚に溢れるほどの愛情を注いでも、心が通じ合わなければ、呼び名はオバタンとかネータン止まりなので他人。
胸に抱っこ出来たり、そのまま眠るような懐き方はしないで、すぐイヤイヤされて逃げられる。
私もネータンの一人で、余り近寄って欲しくないのだが、言葉が通じてしまうので懐かれ、膝に乗って寝たり、おんぶのまま寝る奴がいて、オバハン共に恨まれたり、少女漫画特有の白い目に囲まれたり、刺すような目で睨まれることがよく有る。
無い乳に吸い付いてきたり、母親のように懐いてこられると、私がオバハン共に殺される。
「ニータン!」
雀ゴッチャイが少年の肩に乗って、羽根でしばきながらオバハンとか年上の女から守っている。
こいつは野生なので、手渡しでエサを与えるのも難しいレアキャラだ。
雀なので食い物を持っていると、野生の雀にも分けられるよう、プイッと鳴いて人間にエサをねだるが、手乗りするのはライカか私ぐらいしかいない。
私でもモフモフしようとすると逃げられる。
「あの子が兄さんなんて呼ぶの、初めて聞いたよ」
「野生のゴッチャイきゅんを懐かせるなんて?」
男の子の株価急上昇。レアポケモンのゴッチャイが懐くなら、普通のエサで釣れる子豚共ならガンガン釣れて入れ食いで、すぐに抱っこできるようになる。
オバハンとババアと娘達の目の色が変わった。
「イスラムだから奥さん4人ぐらい居ても平気でしょ?」
「だったら母親も4人以上居てもおかしくないよね?」
「私達が食べさせてあげるから、貴方はごさいちゃんを」
もうゾンビみたいに集られ、それでも若い女に抱き着かれて揉みくちゃにされても、年頃の男の子らしく、嬉しそうにしている少年。
「ゴッチャイ」
女を近寄れないように、ニータンの肩紐を足で掴んで空に逃げようとする巨大雀。
肩紐の由来は、負傷した兵士を引っ張って助けるためにあるそうだから間違っては居ないが、人間まで持ち上げられるのか?
「待って、私と結婚して」
「お腹のごさいちゃんはどうするのっ?」
「責任取って」
若い女も何かの妄想に囚われて、もう自分のお腹の中に子豚を妊娠しているような幻覚でも見ている。
オマエラ全員統合失調症だから薬飲め、ドーパミン抑制剤とかここには無いが、ゴサーイズなら取り寄せ出来る。
「ごっチャッっッいっ」
しばらく男の子にしがみついていた女達だが、雀の羽ばたきと推進力の方が勝って、男の子は安全な場所に連れ去られた。
「ごちゃい、カルルッ、クケーー、ゴゴゴゴゴゴッ」
何か、「うるさいババアども、ニータンに近寄るな」みたいな捨て台詞を吐いてから飛んでいく雀。
これも自分の子とは呼んでいないが、小さい頃から面倒を見て「このニータンは僕が育てた!」なのだろう。
こいつらもどこかのポケモンのように、話を覚えるはずだったが、声優が上手すぎて全部の感情を五文字で表現してしまったので、話す設定を忘れられたのかも知れない。
残りの門番の少年たちは、子豚語を喋れなかったので女達にもチヤホヤされず、求婚もされなかったので、ライカに吊し上げられたり、腹パン喰らってマジゲロ吐かされる、気の毒な状態に陥った。
「俺らの業界ではご褒美です…」
まあ、ご褒美なら止めないでも良いだろう。
ライカはメモ帳のゴッチャイのページに、要注意人物としてさっきの少年の名前を追加した。
仲間外れにされていた少年が幼児期、屋外でゴッチャイに出会ってボーイミーツボーイ?
食べ物を上げたり貰ったりしてゴッチャイ語が話せるようになり、さっきの子を虐めると、カラスの集団に啄まれて両目食われたり、イヌワシか巨大な雀に襲われて、高い所に吊るされるか百舌の早贄にされて、空から落とされて死体になるか、全身強打で病院送りの刑になっていたらしい。野生なので発覚が遅れた。
「ゴッチャイは電話もゲームもしないから、さっきの子も携帯ゲームもらってるんじゃない?」
他にも侵入者がいて、札束で頬を叩けば異世界の物品が手に入る。
「アジールも危険人物だわ、イスラム武装組織に携帯渡して、サウジか何処か、金も人もいる所で研究されると人類が滅びる」
テロリスト兄に携帯ゲーム渡すと、光の速さでイスラム系の組織に上納しそうだが、妹の方はここの警備担当者で、子豚の友達はいないのでゲーム機は持ってない。
それでもヘッドセットで複数の手下と無線通信できるようになっている。あれも目の中に周辺マップと、警備側全員の所在地が映されるので、多分オーパーツだ。
私もネットで調べ物をした時、ごさい語か異世界の言葉で書かれている中に、この世界には無い治療法とか、量子力学の統一理論が書いてあるのを見た。
ブラウザの翻訳ボタンを押すと、ある程度見れてしまうのが恐ろしい。
ライカはボディーブロー喰らわせて倒した子から、無線機をむしり取って自治区、自由領域と呼ばれる女を呼び出した。
「正門まで来なさい、ターニャが子豚用のゲーム機をアメリカ人に売ったわ。他にも潜入してる外国人多数、追跡はもういいわ」
暫くすると、空撮用に背中に扇風機背負ったような、パラシュートも背負って、墜落しても降りられるパラセール仕様のドローンに乗った女が帰還した。
確かに個人用ヘリとかドローンは市販されてる。子豚から警備用に渡されて、自由にできるようになっているが、監視だけなら人間が飛ばないでも、小型ドローンのほうが安く済むはずだ。
「凄え銃撃戦だった。おい、今日はアメリケンスキーとかEUに中国人まで来てるぞ? 子豚の取引終わったんなら、客追い返してゲート閉めろよ」
「そうも行かないわ、上客が残ってるし、近所のババアまで締め出したらまた襲撃される」
ここは主に西側からの資金や寄付で賄われている。
しかしオレンジ革命だとか、ジャスミン革命だとか、アフリカ中東で流行ったナントカ革命みたいに、西側主導で活動資金も武器弾薬もEUかアメリカ持ち、フェイスブックとかSNSで革命起こされて、自由主義で西側の傀儡政権が樹立すると困る人が沢山いるし、エジプトみたいに一瞬で経済が立ち行かなくなる。
自分はお金を持たないでテント暮らし、石油で得た資金で国民無税、結婚すると土地とか田畑がもらえた天国で、カダフィ大佐も射殺された。
前世紀みたいにキリスト教に改宗した信者が「神の軍隊」を呼んで、東南アジアからインド全域を植民地にしたり、中東もナポレオン以降支配されまくりで大砲もなくて惨敗。
中国でも太平天国の乱とか起こされて、麻薬ばらまかれてアヘン戦争になって、10カ国ぐらいに分割占領されると非常に困る人もいる。
南下政策で不凍港を求めて来た、ロシア軍が来ると困るイスラム勢力とか、できれば北の方に封じ込んでおきたいアメリカとか、色々な思惑が重なっている火薬庫なので、バランスが崩れ次第ウクライナになるか、シリアになって内戦で滅びる。
民族的にも一枚板ではないので、ラジオで「フツパワーを見せてみろ? フランス人の手先、ツチ族のゴキブリ共を皆殺しにしろ」な~んて毎日放送されると、山刀を持った民兵が街に繰り出してヒャッハーして、普通の優しいオジサンやラジオのパーソナリティが殺人鬼になる。
国連軍として派遣されたベテランのNATO軍司令官がPTSD起こして、帰国したカナダで自殺未遂して、公園のベンチの下で転がってたとか、色々有るので困る。
ユーゴでもプロパガンダ合戦で、コソボとかサラエボの女子高生とチャットしたら、真顔で「敵対している民族を皆殺しにするのが私の夢です」とか言われてドン引き。
日本人の学者とのハーフの男の子が、父親不在で逃げ遅れて、近所の友達と一緒に逃走すると、まず仲間を逃がそうとした男の子たちが捕まって公開処刑。
どうにか逃げていると、赤ちゃん連れているお母さんが、泣き声で見つかってしまうから、どこかに行ってくれと言われて、しばらくしたら凄い顔して一人で帰ってきたとか。
近所のおばさんが集まっている所に、キリスト教徒の少年兵が来て、子供の頃から世話になっていたオバサン方に、笑顔で手榴弾を差し出して「イスラム教徒はここで死ね」とゲラゲラ笑ってた地獄。
どうにか逃げ出して幼馴染の女の子と手を繋いでいたら、路地で女の子の手だけ残して全身吹き飛ばされたり、別の子は戦車兵に見つかってしまって、その場で兵士にレイプされて、民族浄化でそのまま連行。
最後に残った友達の女の子も、山の中のイスラム勢力に救われたのに、出かけている間に襲撃されて、勿論連れ去られて民族浄化で行方不明。
戦後父親と再開できて、日本に帰国しても「彼奴等に復讐しに行ってくる」とだけ友達や家族に言い残して、イスラム武装勢力に参加した日本人ハーフとか居るので、半分ほど身を乗り出したら現実になる。
戦後開放された小さな女の子なども「友達が捕まってレイプされたの」とか泣いているのは、当然自分自身の出来事なのだが、他人の振りをしてまで誤魔化して、人類の弱い心には受け止めきれないで、人格が分裂している証拠でも有る。
もちろんチベットでは民族浄化されていて、毎週お坊さんが焼身自殺している。
案外、五体投地しながら山を回って、世界が平和になりますように、と願っていた祈りが天に通じて、チベット人だけはこの世の地獄から救われ、一足先に民族全員で天国に旅立てたのかも知れない。
お隣の東トルキスタンでも、汚職役人を追放してプラハの春のような治世を謳歌していると、チベットに行った水陸両用車みたいなのが瞬着。
男全員引きずり出して街路樹にぶら下げて、イスラム圏だからこそ女全員レイプして、自殺するか中国人の子供を産むのか選ばせたという、この世の地獄が毎週開催されている。
エブリデイロープライスな私達の命、でも中国人大使は、UKの番組で英語喋れない日本の大使をボルデモート呼ばわりして馬鹿にして、虐殺と言えば日本だと言い切った。
余談だが、台湾の国民党記念館に行くと、蒋介石語録として、南京に数日に迫った日本軍から逃げ出す際「そうだ、ここで虐殺が起こったことにしよう」と行ってプロパガンダ合戦して、「今も虐殺が行われている南京の地で、同胞の血が流されているのかと思うと」と檄文を発して全中国に配布したのを、国共合作で共産党が思いっきり乗っかった成果が南京大虐殺である。