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短編

猫じゃらし

作者: 佐々木尽左

 俺は一匹の猫を飼っている。

 どこにでも居るような雑種だ。白地に点在する茶色と黒のまだら模様が微妙に残念なため、全体的に不細工なように見える。顔立ちは悪くないんだけどなぁ。

 しかしこいつは気位が高く、俺に全然懐かない。俺が飼い主だということは一応認識しているようなのだが、寄ってくるのは餌をやるときだけだ。そのときだって偉そうにちょこんと座ってこちらをじっと見るばかり。愛想良く鳴くことすらしやしない。

 こんな態度を見ていると、猫は人間と対等だと思っているという説を信じたくなる。いや、俺んとこに限るならば、明らかにこいつは俺を自分よりも格下だと思っているに違いない。


 今はリビングのソファでごろごろとしている。餌を食べ終わると用が済んだとばかりに俺の下から離れて、優雅に身繕いの最中だ。その仕草は愛らしいと言えば愛らしいが、残念まだらのせいで全体的にユーモラスである。

 このときに俺が近づこうものなら、警戒心丸出しで威嚇してくる。噛まれたり引っかけられたりすることはないものの、飼い主に対する態度じゃないと思うんだが、どうだろう。

 だから何度かお近づきになることに失敗してからは、俺も近づこうとはしなくなった。どうしてこんな態度を取られてまで飼わなくちゃいけないのか不思議に思うが、一度引き取った以上は仕方ない。


 そんな関係に転機が訪れたのは、俺の些細な気まぐれからだった。

 またまた拾ってきた猫じゃらしを目の前に差し出して動かしてやると、食いついてきたのだ。最初はそろりそろりと近づいてきたあいつだったが、警戒していたのは最初だけだった。すぐに、右に動かすと顔を右に向け、上に上げると飛び上がってつかみ取ろうとする。

 その必死な姿に久しぶりにかわいいと思った俺は、調子に乗ってあいつに触ってみる。すると、いつもと違って怒らない。いや、正確には猫じゃらしに夢中で俺のことなど眼中にないだけなのだろう。しかしそれでも、ようやくあいつに触ることができた。


 以来、我が愛猫に触れたいときは猫じゃらしで誘うことにしている。ないときは相変わらず愛想がないものの、触れる手段がわかったので気にならない。

 猫じゃらしに飽きたらまた元の関係に戻るのかもしれない。けど、それまではこれを使ってお相手をしてもらうことにしよう。

 だから、いつも使えるように、棚の上には青いあいつを置いている。

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