春は気だるい それでも人は生きていく
「今日の占いウォッチング~♪」
テレビからは、相変わらずにぎやかな音が聞こえてくる。元は洗い物をしながら、聞こえてくる音声から時間を把握した。
7時か・・・。
テーブルでは、ごはん・味噌汁・納豆が並び、そこに俊一が納豆を混ぜる姿がある。いつもの風景だ。しかし、となりにはぎこちない手つきで箸を握りしめ、俊一の様子を眺める少女の姿がある・・・。なんだかとても、しっくりこない。そして、どうも落ち着かない・・・。
「・・・食べてみる?」
俊一はエイプリルの目をみて言った。
「・・・YES!!!」
エイプリルは目を輝かせ、答えた。
「こら!箸をうまく使えない奴が納豆を食べるなんて、10年早い!!」元は、スポンジを握りしめたまま割って入る。
そんな元を見て、俊一は納豆を自分の手元に戻し、エイプリルは元を見上げて、ふくれる。
「私、箸ツカエテマス!ナットー食ベタイ・・・。」
エイプリルはそう言い、箸を握りしめて元に見せつけた。
「それは握ってるって言うの。俊みたいにならないとダメ!!」
「ズルイ!!私、ソウイウノ何テ言ウカ知ッテマス!えこひいきッテイウノ。カズチャンに教エテモライマシタ!」
エイプリルはすっと立ち上がり、両手を腰に当て言った。そのまっすぐな眼差しからは、納豆への想いが伝わってくるようだった・・・。
だが、元も負けてはいられない。
「今日は忙しいの!夜は食べてもいいから、さっさと食べてくれ。」
時刻は7時20分を回ろうとしている・・・。俊一は2人のそんなやり取りを尻目に、一気にごはんをかきこんだ。
「ローズちゃん、早く食べな。はっちゃん怒るとこわいんだよ。いらないんなら、僕が食べちゃうよ・・・。」
俊一はエイプリルのお椀を片手に持ち、そう言った。
「アッ!!ダメダヨ!」
エイプリルはすごい勢いでお椀を奪い返し、ぎこちなく食べはじめた。
「じゃ、いってきます。」
俊一は靴を履き、かばんを持ちながら言った。
「おう、気をつけてな。頼んだやつ忘れるなよ!」
元は手を拭きながら、言う。
「サイズはホントにSでいいのかな?」
俊一は玄関まで出て来たエイプリルを見ながら言う。
「いいんだよ、チビだから・・・。」
元の言葉に俊一は納得しながらも、家を出た。