春 いきなりの出会い
「何考えてんだよ!!女の子だぞ!」
元は怒鳴った。
「だって他に当てがないモン、本当はオレが面倒みてやりたいところだが、本社勤務だし、明日はインドに出張だしなぁ。あ、エイプリルお土産買ってきてやるからな~。」
おじさんはエイプリルの髪をさわりながら、呑気に言った。
「それに、もう役所関係の手続き済ましたし、2人だろうが3人だろうがそんなに変わらねぇよ。男2人でむさ苦しくしてるよりは、可愛い女の子がいたほうが、華があっていいだろう?もうすぐ夏だし♪」
そこまで言われては、元は何も言い返せない。
「カズチャン、お腹スイタ・・・。」
エイプリルのその一言が、俊一が感じていた重苦しい雰囲気を変えた。
「あぁ、ごめん。オレは食べたけど、お前はスーツケースの中だったからな・・・。」
「人でなし。」
元は呆れたようにつぶやいた。
「あっ、焼きそばでいいならありますよ!」
俊一はフライパンに残っている焼きそばを皿に盛り、エイプリルの前に置いた。エイプリルはぎこちない手つきで箸を使い、焼きそばを食べた。
「Oh~!トッテモ、オイシイデス。」
「エイプリル、こっちが俊一君。あっちのうるさいのがハジメ。俊一君はエイプリルと同い年なんだぞ、それでハジメは・・・ホストクラブにいるんだったっけ?」
「教師だよ!!いつも解っててそれやってるだろ?」
元は気にしていることを言われたので、怒鳴って返す。
おじさんは小さくバレたか・・・と言いながら続ける。
「今日からこのお兄さん達がお前の面倒を見てくれることになるから。ほら、練習しただろ?あのごあいさつ♪」
おじさんはエイプリルにそう言うと、彼女はそそくさと立ち上がり、長くふんわりしたワンピースを両手で少しつまみ、お辞儀した。その姿は少し神々しく見えた。やっぱり一国のお姫様だけはある。
「今日カラ、ヨロシクお願いシマス。」
エイプリルは微笑んで言った。
エイプリルは、残りの焼きそばを食べている。そのとなりで俊一はテレビとエイプリルを交互に見ながら、ドキドキしていた。
(今日からこの娘と一緒に暮らすことになるなんて・・・)
一方、大人2人は。
「ハジメ、トイレどこだったっけ!?案内しろ。」
「廊下出てすぐだよ!何回もきてるだろ!!」
と一悶着した後、廊下を出た。
「ホラ、ここだよ。」
「本当は内緒にしておこうと思ったけど。」
おじさんは元の腕をつかみ、話しだした。