春 いきなりの出会い
おじさんは、まるで自分の娘のように少女を自分のとなりに座らせた。
「良い年こいて何やってるんだよ、おじさん!犯罪だぞ!!」
元は怒鳴った。そんな元に怯え、少女はおじさんのスーツを握った。一方のおじさんは、きょとんとしている。
「何怒ってんだ?お前。」
おじさんのそんな発言に元は、さらに怒鳴った。
「スーツケースなんかに女の子入れて、急にやってきて。こんなこと近所にバレたら、警察沙汰だぞ!早く自首してくれ!お願いだから!!」
「ガハハハ!お前何か勘違いしてるだろ?この子は上の命令で日本に連れて来たんだ。決してユウカイではないぞ!」
「こいつの名前はローズ・エイプリル、国王の第四王女。かわいいだろ?」
おじさんは得意気に話し始めた。
「オレの勤めているブルーラパンの本社が、フランスにあるっていうのは知ってるだろ?そもそもブルーラパンっていうのは、王朝の名前なんだ。」
-ブルーラパン-
日本語に訳すと青いうさぎ。フランスのあまり知られていない田舎の方にその王朝があるらしい。王朝の長い歴史の中には、王国が土地を広げて政治を治めていたこともあったそうだが、現在では一国のみとなっている。最近になって、王国を護っていくために事業を興しはじめたのだった。
「それはわかったけど、それとこの娘とどういう関係があるんだよ?」
元はおじさんに聞いた。おじさんはニヤリと笑った。待っていました!とでも言いたそうに・・・。
「実はこの子は、命を狙われてるんだ。早く国を出てこなかったら、良いように使われるところだった。」
「!?」
元と俊一は顔を見合わせて、困惑した。
「自分の国にいたんじゃ、命が危ないから、どうか助けてやってくれって、国王に頼まれてここに連れて来たワケさ。」
おじさんは、エイプリルの頭をなでながら言った。
俊一はそんな2人を複雑な気持ちで見つめていた。自分と年もあまり変わらないであろう女の子が、自分の国を抜け出して日本へやって来たこと・・・。しかも、スーツケースに入れられて。
(よく入ったな、まあ、小柄だからか・・・。)
俊一がそんなことを思っていると、
「俺の家に連れて来たってことは・・・。」
元は何かに気づいた様に、ハッとしておじさんに言った。
おじさんはさっきよりも、笑みを濃くしてニヤリと笑いながら、
「今日から、お前ん家でお世話になる中谷ローズ・エイプリルでーす!!!」
と両手をVサインしながら言った。