春 いきなりの出合い
春 4月。
桜が満開だ。なぜか足取りも軽い。春というだけで、何もかも晴々とする感じがする。
この町に住み始めて2年。実家は隣町にあるが、ちょうど1年前引っ越してきたことを俊一は思い出した。実家から、学校まで通えなくもないが、剣道部に所属するには朝練があるので、必要最低限のものを段ボールに詰めて、下宿先へとやってきのだった。
下宿先は、いとこで教師をやっている元の住んでいるアパートだ。
元とは父方の親戚で、小さい頃よく遊んでもらっていた。頭も良いし、教師になったことに俊一は納得していた。
「はっちゃん(愛称)なら、絶対立派な先生になってるよ!」
父親と一緒にインターホンを鳴らして、驚いた。
「はーい。おー俊、背伸びたな~。」
仕事があったのか、元はスーツを着ていたが、教師というよりはホストに見えた。
あれから1年たったんだ・・・。
元は、俊一が通う犬柳高校に1年前に赴任していた。学校で、いとこと顔を合わせるのは、なかなか新鮮なものがあった。
今年は、はっちゃんがオレのクラスの副担か・・・。悪いことできないな~っていっても、する気もないけどね。
俊一はそんなことを思いながら、自転車で元のアパートへと帰った。
夕方、俊一は夕食の焼きそばを作っていると元が帰ってきた。
「ただいま~。」
「おかえり。あっ、何か宅配便きてたよ!」
俊一は、そばを炒めながら、元に向って言った。
「あ~、パソコンだ。今回は早かったな・・・。」
元は、スーツの上着を脱ぎながら、箱を眺めた。
元のおじさんは、フランスの本社にあるブルーラパンという、電化製品を作っている会社で働いていた。
日本ではまだあまり普及していないが、性能と機能が良い為一部のサラリーマン等にファンが多い。元もその1人だった。
なので、新商品が出たらおじさんから連絡があり、購入するというのが、続いている。
元は箱を開け、パソコンを取り出した。
「へぇ~薄いね!何か女の子向きじゃん?」
俊一は、出来たばかりの焼きそばをテーブルに置きながら、パソコンを見た。
「最近は、女性をターゲットで作ってるとか言ってたな・・・。」
パソコンのふたの部分には、ブルーラパンのロゴとウサギのマークがついていた。