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リアル・デイル  作者: 芥4653
第1章:反転せよ
4/6

4話

 そもそも”サポーター”とは何か。

 俺を含めた8人が確実に実力をつけられるように、そして自分以外の7人を殺すために、そこに至るまでのすべてを円滑にサポートする存在だ。

 日ごろの生活からサポーターと共に過ごし、共に戦い歩む。

 サポーターはここエクデシアにおいて俺たちの師であり、家族であり、そして大事なパートナーとなる。


 俺はこれから、そんなパートナーとなるサポーターとの契約を為さないために行動する。


 なぜか。

 それは、これが枷となることを俺は知っているからだ。


 もちろん、右も左もわからない状態においてこの彼女の存在はとてもありがたい。

 サポーターである彼女を通して知ることになるこの世界についてや、地球(むこう)とは違う常識の差異について、そして生き残る術は彼女を通さねば学ぶことはできない。


 なによりも、彼女たちの力はとても強大だ。


 これがあるのとないのとでは受けられる恩恵の差異は計り知れない。

 俺だって本来なら手を借りたい。


 とまあ、色々とメリットを挙げてみた訳だが、なによりもその方法が一番手っ取り早いのにわざわざ反抗する理由がこんな序盤であるわけがない。

 こんな初期のそれもチュートリアルみたいな段階で疑問を抱くことの方がおかしい。


 まあ、通常ならば(・・・・・)の話だが。


 俺はその根底がそもそも違う。俺はもう、そこで彼女からすべてを学んだ。ここが日本とは違って、己の手を汚さなければならないという事も嫌というほど思い知らされた。

 初めてこの手を汚した感触を今でも忘れた事はない。


「【原点回帰】」



 ———スキル【原点回帰(セーブポイント)】を発動します———


 ———一度設定すると使用するまで変更はできません———


 ———細分指定できます———

 最大2時間まで遡ることが可能。

 時間指定00:00



 時間を大体、そうだな20分前くらいでいいか。これで、あの真っ白い空間との時間軸がある程度予測できるようになる。

 ここに来て10分経ったかどうかくらいだしちょうどいいだろう……?


 ちょっと待て。


 もし、この仮説が正しかったとしたらどうなる。

 途中ひらめき脳裏に浮かんだとある仮説が俺の手を止めた。


「スキル選択時間に戻れる…?」

 ここで、この【原点回帰】の説明を確認する。



 スキル【原点回帰セーブポイント】×9:あらかじめ決めたポイント(ただし一度指定した場所は変更できない)からやり直すことが出来る。発動は自分がいる場所を起点とする。※一度選んだ場所に再度登録することは出来ない。発動条件:保持者が死んだ時。残り9回。


 その中の一文に注目する。


 ”発動は自分がいる場所を起点とする”


 とある。


 そして、

 ※一度選んだ場所に再度登録することは出来ない。


 自分のいる場所を起点に、つまりだ。

 ここはあの白い空間ではない。

 そして、この注意書きの所の場所とは”どこまで”を含むのか。


 あれ、これはもしかするともしかするんじゃ…?

 俺は、選んだ場所は再度選択できないと書いてあったために、何度もあそこに復活することはできないと考えた。

 現に、自分のスキルを弄っていた一週目の段階で「ここにはもう登録されています」「再度指定はできません」「この場所は一度登録しました」などとご丁寧にエラーを出されたからこの仮説は間違っていない筈だ。


 これは、もしかして戻れるのか?

 あの選択段階に。

 じゃあ、もう一つ———いや、この場所指定の範囲によっては2時間の範囲を逸脱しない範囲で登録できるのなら、最大9回…できる?

 そこにまで考えが至りテンションが上がりかけたその段階で、待てよと思い直す。


「ここで、死んであそこに戻ったとして、スキルは受け継がれるのか?」

 そうなのだ。

 例えば、俺が今回手に入れた【魂魄強化】だが、ここで死んであの場所に戻ったとする。

 その段階は過去。つまり最大2時間前に戻る(・・)訳だからこの【魂魄強化】を手に入れる前に戻るということだ。


 つまり、戻ったところでスキルを変更できるだけで意味はない?


 いや、考え方を変えてみれば残機と引き換えにスキル変更できる訳だから十分ずる(チート)ではある。

 それにあと9回はあの膨大なリストを閲覧できるわけになるからより詳しい事が判明するし、【魂魄強化(これ)】よりも凄いのがあるかもしれない。

 それに、この場所認識が外れたとしても最低1回は可能だ。


 あれ…どのみちメリットがあるぞ。


 そして、なによりもだ。


「この原点回帰みたいなスキルであらかじめ登録した場合はそれを使用した状態で残っているわけだから、この類似スキルを見つけることが出来れば増やせるかもしれないな」

 これはシステムの穴を突く形になる?

 まあ、これも仕様でしたなんて言われたらそれまでだけど。

 神がどうたらで遊戯がどうのこうのいっていたアイツがこんなバグを許すとは思えない。

 なんとなくだが、あいつはそういうのを許さないタイプな気がする。根拠はないけど。


 おおっと。チュートリアルをこなす前に考えることができたぞ。

 まあ、どのみちできる事はないから、ここに登録するだけでこの話は後手に回る訳だが。

 死んでからじゃないとこの仮説は証明できない。だからといって無駄にここで1回減らすなんて馬鹿な真似はしない。

 まあ、その時の為の対策は考えておくことにしよう。


「さて、じゃあ時間は2時間前でいいか」

 【原点回帰】を開き、登録する範囲は最大へ。

 時間軸が分からないからこれも初回は念入りに出来る範囲を最大限活用しておくことにする。



 ———スキル【原点回帰(セーブポイント)】を発動しました———


 ———一度設定すると使用するまで変更はできません———



 そんな合図を最後にスキルは沈黙した。

 自分のステータスを開くと、そこは【原点回帰(使用)】×8となっている。


 これでよし。


「んじゃまあ、行きますかね」

 彼女にまた会いに。いや、あちら側からすると初めましてなのかな。


 俺はポツンと聳え建っている真黒な石碑(モノリス)へと歩みを進めた。












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