現実
小さい頃、僕は
ヒーローになりたかった
弱きを助け、悪しきをくじく
正義の名の下に
たった一人で颯爽とした英雄に
言いようのない憧れをもって
ただ見つめていた
あれから私は
いろいろなことを学んだ
知らない場所で
友だちができた
訳も分からぬままに投げられた石は
かばんに深く小さな傷をつけた
至るところに刃は煌めき
時として自分の放った刃は
自分を傷つける
あなたの柔らかな温もりを知り
鋭い氷に震え上がった
もう私は知っている
この世界に
かつて憧れたヒーローはいない
いるのはどす黒く染まった
おぞましいモノと
なにも知らぬ白きモノ
ぼろぼろのかばんを抱えて
見上げた空には
飛行機雲がひとすじ
にじんで見えた