六話 中島優生 平凡な人生の平凡な日々
僕は、今まで平凡に暮らしてきたつもりだ。
人の陰に隠れて注目されずに生きてきた人生だった。
きっとこれからも同じ生き方をするのだろうと思っていた。
高校入学式の前日、あの場所で彼に出会うまで。
「明日から高校生だし最後に遊んでおくか。」
クラスの人気者である友人が僕の家に来て遊びの誘いをしてきた。
普段なら断るところだが何故かこの日に限って誘いに乗っていた。
地元にあるゲーセンへと向かった。
そこは、バッティングセンターもあり野球部の人達もよく練習しに来ている。
僕は、野球など一切興味無いので古いゲームで遊びはじめる。
1プレイ10円てのもお手軽でいい。
友人は、バッティングセンターの方でバッティングをしていた。
そこに、少し強面の同じ歳くらいの人がやってきた。
僕は、その人をどこかで見たことがあるような気がしていた。
「先輩、ここのゲーセンしょぼいっすね。」
それから何分かした後だった。
いかにもやんちゃしてます的な方達がゲーセンに入ってきた。
この辺りで見かけない顔だったので隣町から来たのだろうか、古いゲームばかりのゲーセンを珍しがっていた。
「ちょっとにいちゃん。」
一人でゲームをしていた僕に対して3人で囲んで来た彼らは、僕のゲームを途中で奪いプレイしていた。
「・・・。」
この時の僕はまるで草食動物のように怯えた目をしていたに違いない。
「優生もうやめたのか。」
友人がバッティングを終えて戻ってきたのか僕の後ろで立っていた。
だが、タイミングが悪かった。
自前のバットを持ってきていたために彼らが反応してしまった。
恐らく喧嘩を売られたと思ったのだろうか、友人に2人が迫っていた。
いつも強気な友人だったがその時ばかりは、強気でいられることができなかったのだろう。バットを置いて逃げてしまったのだ。
「けっ、腰抜けでやんの。」
1人がそう言うともう1人がバットを持ち素振りをし始めた。
「あ、あの。」
僕は、ほんの少しだけ勇気を出して喋りかけた。
「あぁん。」
怖い顔が目の前にまで迫ってきていた。
「彼は、自前のバットでバッティングしに来てただけなんです。」
だが彼らにとってそんなことは、関係なかった。
「知らねーし。」
そう言って僕のお腹に一発思いっきり拳が入った。
立て続けに殴られる。
遠目には、同じ歳くらいの男の子が立っていた。
僕は、殴られたり蹴られたりと体全身に痛みが走り動くことすらできない。
店員の人も怯えて見ているだけだった。
「やばい、意識が・・・。」
僕の意識もそろそろ限界に達していた。
最後の一振りとバットを振りかざしたのが最後に見えた。
「あんたらやりすぎでしょ。流石に見てられなくなったわ。」
そこで僕の意識は、完全に無くなった。