五話 北野さつき 姉と同じ
姉が中学生になってから早くも1ヶ月が経とうしていた。
小学生からの友達とは、違うクラスになって落ち込んでいた姉だったがなんとか学校には、登校していた。
私もあと2年で中学生活だが姉をみているとなんだが絶望と言う言葉しか出てこなかった。
そして、2ヶ月が経ったある日。
姉は、学校へ行かなくなった。
何をきいても黙ってしまう姉に対しお母さんもお父さんも何もできなかった。
授業にでなくてもいいからと担任の先生から保健室での勉強を薦められたが姉は、行こうともしなかった。
毎日のように担任の先生が家に来ては、少しの時間だが勉強を見てくれていたのに対し姉もだんだん変わっていこうとするのがわかった。
そして、クラスに出ることはないが学校へと通えるようにまで回復した。
その頃わかったのが姉と同じクラスにいじめっ子がいるという事だ。
姉が不登校になりまた新しい子を標的にしては、不登校にさせているということが夏休み前にわかったのだ。
早急に対処した学校側だったが不登校になった生徒達が夏休み明けに登校してくることは、なかった。
姉と一人の女の子が保健室で勉強していること以外は、なんら変わらなかった。
いや、私が毎日姉の迎えに行っているのも変わっている点とも言えるのだろう。
夏休み明けから私は、姉の中学へと迎えに行くことになった。
ほんの一時的な事だったが私からしたらとても長くも感じられた。
中学校のグラウンドでは、部活動をする生徒が大勢いたのだが部活をせずに帰る生徒や遊んでいる生徒もいた。
保健室に行く途中でよくすれ違う男子生徒がいた。
私は、その男子生徒がに何故か一目惚れしてしまった。
ただすれ違うのみで関係を持つことなんて絶対になかった。姉が進級して普通に通学できるようになるまで。
翌年の4月。
姉は、緊張しながら学校へと向かった。
だが、校門で帰りを待っていた私の前に現れた姉の姿が朝と違って見えたのだ。
「あのね、初恋だよ。同じクラスの子に初恋だよ。」
姉は、そう言って私を校内へと連れて行きバスケットコートまで案内した。
まだ部活動をしていないのか学生服のままバスケをしている生徒が何人かいた。
そこには、私の初恋の彼も・・・。
「あの、子だよ。シュートした子。」
姉は、今まで見せたことのない表情で好きな子を指差していた。
私の表情が真逆になるのは、そんなに時間がかかることがなかった。
姉の初恋の相手が私の初恋の相手と一緒だったからだ。