三話 謎の人物 闇の中の瞳
春が訪れて夏が来る。夏が過ぎれば秋、そして冬。
季節は、常に同じことを繰り返している。
男は、そんな当たり前と言うことに飽きてきていた。
朝には、出勤や通学する人で混雑している。
常識の知らない先輩が常識知らずと後輩に説教しているのなんてどこでも見られる光景となっていた。
男は、大きなビルを下から眺めて一歩も動こうとしなかった。
「世界なんて壊れてしまえばいい。」
男は、小さく。なるべく小さく独り言をしてビルから遠ざかっていく。
「なんであんな奴が。」
「うざいよね。あいつ。」
「ムカつくんだよ。」
世の中には、負の感情が溢れ過ぎていた。
男からしたらそれほど世界の壊し甲斐のある事などないと笑っているのだが、今の時代 の負の感情は、予想を超える多さとなっていた。
「人が人を支配するなんてことするからだ。」
更に負の感情が増えていくのがわかる。
待ち合わせ場所で有名な金色の時計には、今日も沢山の人が人を待っていた。
「あいつは、・・・。」
その待ち合わせ場所で男は、知り合いを見つける。
その待ち合わせている人物もまた男の知り合いだった。
「あいつ、なぜ。」
男は、心の底から殺意がわいた。
どうしてなのかはっきりした理由が見つからなかったが今の男は、誰にも止められない。
「だがまてよ。今、殺したら確実に捕まるな・・・。もっと暗いところで殺ろう。」
男は、その場を離れて人まづ本屋にいった。
本の匂いがとにかく好きだった男にとって気持ちを落ち着かせるには、とっておきの場所だった。
新書コーナーをみてお気に入りの作家の新作が出ていないかの確認から面白そうな作品がないかをチェックしている。
今日は、久し振りに本を買うことにしていた男だったがこれと言って気になる本を見つけることができなかった。
「さて、帰るか。」
男は、買うのを諦めて家へと帰るのであった。
真っ暗な道で男は、包丁を持ち一人立っていた。
昼間にみた光景が蘇ってくる。
「殺す。殺す。殺す。殺す。」
男は、包丁を振り回しながらその人物が歩いて来るのを待っていた。
一時間、二時間と待ったが現れる気配など全くなかった。
こんな時、誰かが歩いてきたらその人物でなくても殺してしまいそうなほど男は、殺意でいっぱいだった。
「あ、もうそろそろでつくよ。」
恋人と電話をしているであろう男が近づいてきた。
「ちっ。」
舌打ちをして男は、包丁を持つてに力を入れた。
横を通り過ぎたのと同時に包丁を思いっきり腹部へと刺した。
そして刺した包丁を抜いては、刺す。
何回か繰り返した。
男の顔からは、満面の笑みがこぼれていた。
「ああ、何て素晴らしいんだ。これが犯しては、いけない罪。」
男は、もうすでに息のしていないのを確認してから証拠隠滅のために着ていた合羽を脱ぐと大きな袋へと入れた。
それから男は、毎週同じ曜日に人を刺して喜んでいた。
「先週に引き続き殺人事件が・・・。」
連日ニュースでも取り上げられるようになった。
男は、笑が止まらなかったがとあるニュースをみてその笑みが消えてしまう。
「先ほど連続殺人の犯人が捕まりました。」