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魔法世界の剣術士 上  作者: 相會応
あの星空をもう一度
26/211

11 ☆

 剣を振るうたびに、青い光の残影と、砕かれたアクリルの残骸が、一粒一粒ハッキリと見える。 


「速すぎる!?」

「なんで魔法が当たらないんだ!?」

「ぐああああっ!」


 自分のみが速度の自由を許された世界の中で、誠次せいじは対象を次々と斬り裂いて行く。

 

「このまま太刀野桃華たちのとうかを追う。香月はここを頼むぞ!」


 時間が惜しく、すでにステージに足を踏み出しながらだった。青くれる瞳を、暗いステージの幕裏へ向け、誠次は香月に向かっては大きな声を出す。

 誠次の後方には、香月の魔法によって意識を失っているテロリストたちの姿がある。誠次に狩られた七人全員、ヘルメットは一種の芸術品のように斬り裂かれていた。


「頼むと言われても、すでに無力化された後……」

「香月のおかげだ」


 そしらぬ顔で言ったはずであり、きっといつもみたく、むっつりした顔で嘲笑ちょうしゅうされると誠次は思ったが、


「あ……ありがとう……。セイ……――」


 いつもとは違う反応を、香月は見せていた。

 無表情を絵に描いたような香月の顔が、にわかに綻んでいる。もじもじと、なにかを堪えるように不自然この上ない。

 しかし短い付加魔法エンチャントの効果時間のため、今は気にかけている余裕が誠次にはなかった。

 

「無力化と言ってもまた起きるかもしれない、注意してくれ」


 きびすを返し、走ってステージを駆け上がる。

 連れ去られる時、ここで太刀野桃華は何とも言えない悲しい顔をしていた。魔法の力を冷静に使い、ファンの人々を守って。

 なら、おれは……? 太刀野桃華は……人を守るために魔法を使っていた。そんな力でさえ、人を守る力でさえ、持たないのが自分――。

 そこで誠次はふと、八ノ夜はちのやの言葉を思い出す。


「魔法の代わりに剣、か……。っ!?」


 突然だった。   

 螺旋の風を紡いだ弾丸が、走る誠次に向かって放たれていた。

 小さな拳銃の弾だと正確に視認できたのは、やはり遅かったからだ。人の動きよりかは早いが、それも手で投げられたスローボール並の速度。  

 避けるのは容易であった。

 ここは日本のはずだが、テロリストともなれば銃を持っているものなのだろうか? ――そんな些細ささいな疑問を考えられる余裕がある世界の中、誠次は暗闇の中で光を放つ銃を見た。

 テロリストの男が一人、小型の拳銃を構えて誠次に向けていたのだ。


「一人だと!?」


 表情はうかがえないが、更に二発の発砲。銃口から噴き出した白煙と、銃身から飛び跳ねる薬莢やっきょう

 至近距離で、二発の銃弾が誠次の身体へ直撃のコースで迫る。

 だが。


「――遅い!」


 木材の地面を蹴り、誠次は銃弾をかわす。

 広かったステージの裏側で、青く光る剣をスピードに乗せて振る。男の手に握る小さな凶器を、誠次は真ん中から真っ二つに断ち切った。

 次いで剣の柄を握り直し、誠次は男の腹部に強烈な一撃を叩きこむ。


「沈め!」


 激痛を浴び、悲鳴とともに身を屈めた男のヘルメット頭を、誠次はさらに足蹴りで一蹴していた。


「ひっ……」


 腹を抑えながら立ち上がろうとした男の喉に、誠次は冷たく剣先を向ける。

 

「太刀野桃華をどこにやった?」


 そして誠次は、冷たい言葉をかける。


「こ、この先だ……」


 誠次の後方を指差した男。指をされた方を見ると言う隙はさらさない。


「ぐおっ!?」


 誠次は容赦なく、しゃがんでいた男の腹部を蹴り上げてから走り去った。

 目の前に広がる暗闇を見据えてから、ライブのスタッフたちが通るような通路を走る。相手が゛ただの゛魔術師なら、誠次が十中八九有利だ。――しかし銃を持っているのなら、香月の付加魔法が消える前に勝負を決めなければならない。


「二人……っ!」


 前方に。

 今までのと変わらずヘルメット姿で、敵は二人だった。


「……うぅっ」 


 そして、男によって、太刀野桃華は捕縛されていた。


「……」


 白い布で猿ぐつわを噛まされ、両手を後ろで縛り上げられている。ステージで歌っていた時の華やかな姿は消え失せ、まるで今は売り飛ばされる寸前の奴隷のようだ。

 うつむく太刀野桃華の姿をまざまざと見た誠次は、自然と頭に血が上るのを感じていた。

 

「ホールの連中はどうした」

「全員やられたのか」

「貴様らっ!」


 平然と会話をする二人の敵の中央に向けて、誠次は剣を振る。二人は左右に別れたが、すぐに阿吽あうんの呼吸で魔法式を展開。

 空振ったために崩れた体勢の誠次に、攻撃魔法こうげきまほうの光が浴びせられる。

 相変わらず貫通する魔法だが、敵の二人にその事実を知られてしまった。


「魔法が効かない!?」


 片方の男が事実を知る。

 ならばとこちらに向けられる、殺意を込めた腕。


「甘いっ!」


 付加魔法エンチャント状態の誠次はそれをしかと見ると、左手で男の腕を掴み返した。そしてすぐさま自身の足を伸ばし、男の足にかける。基本的な体術を使い、自身の身の丈以上ある男の身体を、誠次は地面に打ち据えていた。


「ぎゃ!」


 男の悲鳴を聴き、振り向こうとしところで、 


「お遊びはここまでだ小僧」


 冷たい声だった。

 もう一人の敵がこちらの頭に向けていたのは、銃だ。しかも、戦争体験のゲームで出て来るような、銃身の長いライフルと呼ばれる種類の銃。

 それが両手で構えられ、目と鼻の先の距離で銃口がこちらを捉えている。 


「……っ!」


 見せつけられた兵器を前に、誠次は息を呑んでいた。


「死ね。クソガキが――」


 とっさに身体を後退させる。

 間に合うか、どうか!?

 直後、乾いた破裂音と共に、ライフルから一発の弾丸が発射された。


「かわせっ!」


 痛みや死をイメージする間もなく、誠次は身をひるがえして弾丸を回避する。

 

「――!? 今のを避けたのか!?」


 射撃の反動で仰け反る男が、うめき声を出す。

 存命の喜びを噛み締める間もない。


「こっちだ!」

「……っ」


 今のうちに誠次は、太刀野桃華の身体を引き寄せ、敵に向けて剣を構えつつ、一時後退した。

 ――直後。


「頭が……!?」 


 視界がぐらっとし、思わず誠次は歎息たんそくする。

 ――限界が、近付いていたのだ。


「エンチャントが……っ!」


 誠次は頭に手を添え、呻く。

 青い視界がかすみ、剣にまとっていた魔法の光も消えかけていた。

 立て続けに放たれた二発目のライフルの弾を、今度は危なく回避しつつ、誠次は太刀野桃華とともに角を曲がる。

 曲がった先にあったのは、なんと壁だった。

 

「行き止まり……!? ……うあ!?」 


 袋小路の中。

 縛られている太刀野桃華を壁のほうにやり、誠次は角に背中を預けた。

 剣に纏っていた青い光が、虚しく消えていく――。

 エンチャントが完全に消え、押し寄せる疲労感と倦怠感けんたいかんを誠次はどうにか呑み込む。青の世界の意識が現実に戻り、異常な量の汗が頭の先から流れてくる。


「なんだこれ……? ここでかよ……っ」


 誠次は肩を激しく上下させ、息を吐いていた。 


「そこは行き止まりだと分かっている! 剣を捨てて出てこい!」


 言葉とともに、敵のライフルによる威嚇いかく射撃。

 本来の、目に見えない速度で放たれた弾丸は、誠次のすぐ横の角に着弾する。弾丸の着弾点には白煙と小さな穴が空いていた。


「嘘、だろ……」


 従来の人間の生み出した殺傷兵器の威力をまざまざと見せつけられ、誠次は身体が怖気づくのを否応なしに感じた。

   

「――ん~っ! ん~っ!」


 太刀野桃華が、猿ぐつわをされている顔を、押し付けてくるような勢いでこちらに向けていた。

 それを見た誠次は左手で、猿ぐつわを細い首元まで降ろしてやる。

 ぷはっ、と口の自由を得た太刀野桃華は、赤い双眸そうぼうを揺らし、


「あ、ありがとう……」


 素直に感謝してきた。


「まだ終わってない……!」


 少し動いてしまった鼓動を律するため、誠次は太刀野桃華から視線をらして言う。


「で、でもあなたさっきは至近距離で銃を……」


 そこまで言うと、何かに気付いたように太刀野桃華は、目を大きく見開いていた。


「目の色……青だったのに……」


 言われた誠次は、片目を抑える仕草をして、


「たぶん、エンチャントの所為せいだ。剣にエンチャントをすると、動きが遅く見えるんだ」

「エンチャントって……。今時……」


 ふと、魔法の影響は受けないこの身がどうしてエンチャントの効果だけは受け付けるのか、と言う疑問が沸いて来た。研究は中止されていたので、エンチャントのことは詳しくは知らないが。

 ――だが今は、この場をどうにかしなければ。

 誠次は太刀野桃華の両手を縛っていたロープを、ひとまず剣で斬ってやった。


「出てこい!」 


 先ほどから相手の足音が止まっているのは、おそらくまだこちらがライフルさえも回避できる魔法でも使っているとでも、思っているからだろう。それでも少しづつだが接近して来ているのは分かる。


(どうする……!?)


 角から身を乗りだしてみようかと思った瞬間に、二発目の威嚇射撃。

 今まさに誠次がいた所のアスファルトへきが、小さく崩れていた。容赦ない殺意を前に、情けなく完全に委縮いしゅくしてしまっている自分が、いた。心臓が破裂するほどの勢いで鼓動を刻み、胸の内で恐怖が巻き起こる。


「怯えてるのか……ここに来て俺は……っ」 


 それを無理やり沈める為に、誠次は深呼吸をしていた。   


「く……っ。魔法は使えるか? 悪いけど、自分の身は――」


 敵の銃撃が次第に壁を崩す中、誠次は桃華を見る。

 

「剣を貸して」

「な――っ」


 背丈の低い――ハッキリと言えばちびっ子の部類に入る――太刀野桃華は、誠次に向けて自由になったばかりの両手を差し伸ばして来た。

 雰囲気を見れば、ライブで見せていた傲慢ごうまんさが、今は如何いかんなく滲み出ている。


「エンチャントをしてたんでしょう? さぁ、早く貸して。そして倒しなさい。゛私の熱狂的なファンならね゛」

「ファン!? 熱狂的な!?」

「ええ。だから助けに来てくれたのでしょう? だったら早く倒して御覧なさい」


 多大なる誤解をされている気がするが、この際構っていられなかった。今はお互い助かる為に、この少女の言葉に乗るとする。


「そ、そうだ。だから太刀野さんの魔法の力を貸してほしい!」

「太刀野? ゛桃華゛でしょう?」

「わかりました桃華さん! お願いします!」


 誠次は剣を、桃華に手渡した。


「なにしてやがるんだ!」


 角の先から、テロリストの怒号。

 気にせず桃華は゛緑色゛の魔法式を、床に置いた剣を中心に展開していた。


(緑色……!?)


 緑のおぼろな光が、誠次と桃華を包みこむ。目に見える、蛍の光のような魔法元素エレメントの粒子が、魔法式から溢れては消えていく。 

   

「っ!?」


 桃華の顔を窺ってみると、色白の頬がやはり赤く染まっている。


「力が……抜けていく……?」

「やはり、魔素マナを無理やり吸い込んでいるのか……?」


 誠次は身体が熱くなってくるのを感じた。


「な、なんだ!?」


 突然聴こえたであろう少女の甘美の声を聴き、ライフルを持つ男はうわずった声を出していた。

 色々な誤解が積み重なったその瞬間、光が爆発した。

 誠次が冷静に剣の柄に手を伸ばし、強く握ったのだ。


「……桃華、さん?」


 まばゆい閃光が止むと、はぁはぁと息をする桃華が誠次の目の前にいた。

 薄い生地のステージ衣装からむき出しの肩やうなじには、透明な汗が滲んでいる。

 半開きの小さな口で大きく呼吸をする桃華の姿に、゛タイムラグ゛はない。


「目が……゛緑゛色……。綺麗……」

 

 桃華はこちらを見つめ、呟く。

 対して誠次の意識はハッキリとしていた。

 香月の付加魔法とは効果が違っているのか……?  


「これは……?」


 右手に握る剣に誠次が視線を落とすと、香月の付加魔法を施された剣とは違う光景が、そこでは広がっていた。

 緑色の光を放つ黒い剣が、壁の幅一杯まで、刀身を伸ばしている。それはもはや片手剣ではなく、大剣と言うに相応しい見た目だ。


「効果が違う……?」


 大剣と呼ぶべき部位を形成している、緑色の光を浴びながら、誠次は驚く。


「何をしている!?」


 テロリストの男が一人、とうとう角を曲がりきって来た。

 それを確認した誠次は考える間も無く、咄嗟とっさに剣を両手で持ち、


「うおおおおーっ!」


 振り向きながら、勢いよく振った。

 すると緑がかった゛光の風゛が、振りきった剣から巻き起こり――。


「ぬわっ!?」


 剣から放たれた衝撃波が、悲鳴を上げる男を襲い、身体を簡単に吹き飛ばした。いくら大剣と言っても距離は確実に離れていたので、今は間違いなく遠距離攻撃をしていたのだ。


「なにが起こった!?」


 もう一人の男が、驚き、戸惑う声を上げていた。

 大剣は見た目に反して軽く――むしろ普通の状態で持っている時より軽く感じる――誠次は角から一息で飛び出した。

 警戒していたのか、もう一人の男はしゃがみ、ライフルをこちらに向けていた。

 

「遠いい……っ!」


 距離にして十メートル以上。

 とても一瞬で詰められる間合いではない。


「剣が伸びてやがる……!? だが、この距離ではっ!」


 テロリストがライフルの引き金に指を添える。そのライフルから覗くレーザーサイトの赤い点が、男の動揺を表すかのようにぶれてはいた。


「当たれーっ!」


 誠次は緑色の眼光で敵を睨み、躊躇ためらわず大剣を振り抜いた。

 すると、振り抜かれた先にあった長い銃身が、大剣から具現化した風に、切断された。


「な……なっ!? 魔法か……!?」


 真っ二つに両断されたライフルを真下に落とし、男はうろたえていた。


「ま、魔法がまだある!」 


 魔法を発動して最後の抵抗を試みる男が、誠次には滑稽に見えた。

 無駄なことを、と心の中で呟いた誠次は大剣を男に向けて、降伏を勧告していた。

 

 桃華を束縛していた紐で、ぐったりとしているテロリスト二名を柱に縛り付け、誠次は桃華の元へ駆け寄った。


「大丈夫か?」

「う、うん……」


 目立った外傷はないようだが、床に手をついている桜華の呼吸は荒かった。

 エンチャントはまだ続いており、大剣と誠次の目は緑色の光を放つままだった。


「俺の友達から連絡が来た。もう安心だ」


 外との連絡を阻害していた妨害ジャミング魔法も消え、とばりから警察を呼んだとのメールが届いていたのを、誠次は確認していた。

 美味しい所を貰ってしまったなと、誠次は軽く罪悪感を感じているところだ。


「エンチャント、ありがとう。お蔭で助かった」

「ほ、本当よ……。この借りは必ず返してもらうわっ!」

「か、借り……」


 先日でやっと片付いたと思った案件が、また一つ増えてしまったようだ。ふてぶてしい態度の桃華に、誠次は苦笑交じりに頭を抱えていた。


「おんぶ……して。……立てない」


 恥ずかしげに目を背けつつ、桃華は誠次にか細い声を出した。


「……っ」


 誠次の中でその姿が……幼い頃の、妹と重なる。――幼い頃と言っても、成長した姿を見れたわけじゃないが。


「わかった。お安い御用だ」


 誠次は何かを振り払うように首を横に振りつつ、桃華に背中を向けた。

 ややあって、桃華が寄り添うように、誠次の背中に顔をピタッとつけてきた。


「ありがとう……」


 か細いが、熱のある息遣いだった。柔らかい女の子の感触も、誠次に火照った熱を伝えてきた。

 妙な気分になってしまい、誠次は人知れず慌てていた。

 

「魔法、得意なんだな」

「う、うん……!」


 肩を強く掴みながら、ばっと顔を上げる桃華。可愛らしいピンク色のマ二キュアが塗ってある爪が、肩に刺さり、それが痛くて誠次は思わず悲鳴を上げる。

 褒められた事が純粋に嬉しかったのか、それとも香月と同じく変な感情になってしまっているのか。どちらにせよ、今の桃華はこちらが声をかけただけで大きなリアクションを返して来る。


「あなたこそ、強い……のね……」

「魔術師だけにはな」

「その……格好、よかったわ。ありがとう、助けてくれて」


 ぎゅっとこちらの身体を掴んでくる桃華。そしてまんざらでもないような桃華の言葉に、誠次は思わず抱えていた手を解きそうになってしまった。

 瞬時に巻き起こってしまっていた心臓の高鳴りを呑み込みつつ、誠次は前を向いたまま、

 

「いや……。許せなかっただけだ……テロリストが」

「……」

「……」 


 正確には、力を持っているのに、その力を間違ったことに使う連中だ。

 

「格好良いわね……゛なんて言うとでも思った゛!?」


 鼓膜が破れそうになるほどの大きな声で、桃華は突然叫んだ。


「はっ!?」

「とにかく! ゛私を使ったんだから゛あんたは私の言うことに従う責任があるわ! あなたは私の言い成りよ!」

「いやだ断る!」 


 ――気付けば、左手に握っていた剣に纏っていたエンチャントの光が、消えていた。

 効果が切れた……。

 剣は元の片手剣と呼べる大きさを取り戻し、誠次はじっとそれを見つめていた。


「まずはそうね……。あなたの名前教えてごらんなさい」


 ふと、高圧的な口調で、桃華が背後から尋ねて来る。

 おんぶしている状況をみればとても強がっているだけにしか見えないが、そこを指摘するといけないと誠次は思い、留まる。


天瀬誠次あませせいじ……」

「そう。特別に覚えておいてあげる。感謝しなさい」

「……」


 不満げな顔を前面に押し出していたのだが、背中に乗る桃華は気付かない事だ。

 べつに、気付かないでくれても良いと誠次は思っていた。


「天瀬誠次、ね……」


 桃華の手が、誠次ををぎゅっと掴んで来る。

 ――エンチャント中と切れた後でも、桃華が誠次を握って来る手の力強さは、変わらなかった。


挿絵(By みてみん)

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