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魔法世界の剣術士 上  作者: 相會応
レンタルバイ、バレンタイン
198/211

3

 二月一四日、バレンタイン当日。結局。相村あいむらの部屋のソファで僅かばかりの仮眠を取り、誠次(せいじ)は授業に遅れないよう、電子タブレットの目覚まし時計機能の最大音量で、どうにか起きていた。

 まず漂うのは、どこまでも甘ったるい、チョコレートの香りだ。


「……くっ。全然、寝れてない……」


 シャワーにも入れず、身体中チョコレートまみれのままだ。それでも寝れるほど、昨夜は疲れていたのだろう。


「まずいっ、遅刻する!」


 よりにもよって今日と言う日に遅刻はしたくない。誠次はソファから飛び起きながらも、二段ベットの方でまだぐっすりと寝息を立てている二人の女子先輩の方へ向かう。


「相村先輩! 渡嶋わたしま先輩! 貴女たちも授業に遅れちゃいますよ!?」


 さすがに寝ている女性の身体に触るのは気が引けるので、誠次は大声を出して、一階と二階の住人にそれぞれ声を掛ける。

 相村も渡嶋もワイシャツ姿のまま布団にくるまって眠っており、まだまだ寝足りないようだ。


「むにゃ……もうちょい……」


 渡嶋が喋る目覚まし時計とでも勘違いしているのか、誠次の頭をぽんぽんと叩いて来る。


「俺もう行きますからね!」

「まあ、待ちなさいってば……」


 誠次が二段ベットの梯子から降りようとしたその時、上の段の相村がむっくりと身体を起こし、誠次の口元までいきなり手を伸ばす。


「朝ご飯、あげる」


 思いのほかはっきりとしていたその一言と共に、誠次の口元まで運ばれていたのは、不格好なチョコレートだった。ずっと隠し持っていたのか、微妙に溶けてしまっているが。


「むぐっ?」

「昨日はありがとって意味。……義理、だかんね……」


 寝ぼけているのかどうか、相村は次には寝返りをうって背を向け、再び布団に包まってしまう。


「でも、もしかしたら、本命だったり……」

「はいはい……長谷川はせがわ先輩と末永くお幸せに」

「あはは固すぎ……。じゃあ、おやすみなさーい……」

「……行きますからね」


 口いっぱいの甘いチョコを溶かしつつ、頬を少しだけ赤くした誠次は゛女子寮棟の女子先輩の寮室゛から出た。

 朝のHR前、誠次が飛び出した通路には、当然のごとく大勢の女子たちが、それぞれの教室に向かう途中であった。


「え……」「あ……」「は……」


 教室がある学科棟に向かおうとしていた女子たちの足が、こちらを見て一斉に止まる。まるで、何かの軍隊の動きのように。

 そして、誠次の口はもぐもぐとチョコレートを溶かしている最中だった。それが何を意味するか、道行く女子たちには、容易に想像できたようで、

 

「女子寮棟に朝から突撃って、いくらなんでもチョコレート貰いたくて、必死過ぎ……」


 電子タブレットのフラッシュがたかれ、証拠写真を収められる。


「ご、誤解です! 俺はただ、長谷川先輩の身も心も虜にするチョコレートを作っていただけですっ!」

「天瀬くんが、長谷川くんにチョ……ぎゃああああああーっ!」

長谷川はせがわくんに大至急連絡っ! 長谷川君を守ってあげて!」

「ご、誤解です!」


 天瀬誠次あませせいじの長い一日は、ヴィザリウス魔法学園内の新聞部朝刊ニュースに載る事から始まっていた。

 相村と渡嶋が誤解を解いてくれると信じ、女性たちの悲鳴を浴びながら、誠次は学科棟へと急いで向かっていた。


「よし、出鼻は挫かれたが落ち着け天瀬誠次あませせいじ……。極めて平然を装うんだ。今日は、決してがつがつしてはいけない……! まず、女子と目線を合わせるなっ! それだけで男子おれの敗北は決まる……!」


 ドアの前で誠次は深呼吸をして、教室へ入る。

 1-Aの朝は、寮室から持ってきた話題をいち早く友達同士で共有したく、いつもながらのお喋り声が響いている。


(やはり、男子は男子。女子は女子で固まって話しているな……。両グループの間に、僅かながらの壁も感じる。ここは冷静に、慎重に行くべきだな)


 教室に入った直後、誠次は一瞬で室内を見渡し、内心で分析する。

 まずはいつも通り、冷静に自分の席へ着席するだけだ。


「おっ、天瀬おはようー。やっぱ剣持ってないと違和感感じるな」


 クラスメイトの男子に声を掛けられ、誠次は「おはよう」と声を返す。

 ――いいぞ、いつも通り、冷静だ。

 自分の席の前には志藤しどう、後ろにはとばりがおり、会話をしている。


「「ういっす」」


 志藤と帳は誠次を見ると、軽めの挨拶をし、再び会話に戻っていく。

 誠次は二人の間に着席し、適当なタイミングで会話に加わる。その刹那、周囲にはばれない手際の良さで、まずは机の引き出しに手を突っ込み、中をチェックする。前々日ほどから綺麗にはしていたが、さすがにそこに異物はなかった。


「昨日のテレビ見た? あれまじで腹抱えて笑ったわ」

「昨日はずっとゲームしてたな」

(相村先輩の言った通り。ここには、ないか……)


 志藤と帳の会話の中、少し、ほんの少しだけ不安になり、誠次は黒い瞳を窓際の席へと向ける。

 そこには香月詩音こうづきしおん桜庭莉緒さくらばりおがおり、香月は椅子に座ったまま、桜庭は前の席の机に腰を軽く乗せるようにして立ち、何やら二人で会話をしている。

 続いて、廊下側。篠上綾奈しのかみあやな本城千尋ほんじょうちひろがお互いの電子タブレットを起動し合い、朝のニュースか何かを見ながら会話をしている。

 ルーナとクリシュティナは後ろの方の席なので、下手に振り向いて様子を確認できない。

 その他、クラス内の男子も女子も、お互いに目立った動きは今のところ見せてはいない。

 

(まずは様子見と言うわけか……?)


 誠次は顎に手を添え、戦局を見守る構えを見せていた。

 

「――はよっす。マイスチューデンツたちよ」


 間もなく、チャイムぎりぎりのタイミングで担任の林政俊はやしまさとしが来たが、特にバレンタインがどうとかなど言う事もなく、いつも通り気怠そうに朝礼を開始していた。

 一、二、三、四時限が順当に終わり、あっという間に昼休みへ。

 

「でさー、かくかくしかじかで」

「それマジか。面白いな」

「゛ちょこ゛っとだけ、面白いな」


 志藤と帳と一緒に教室で昼飯を食っている間にも、誠次は熟練された目の動きで、教室内を一瞬で見渡す。

 するとなんと、香月と桜庭と篠上と千尋とルーナとクリシュティナの六人で、教室の外へと一緒に出て行ってしまう瞬間を目撃してしまった。


「嘘、だろ……」

「確かに嘘っぽいぞ志藤」

「いやそれがよ、マジで本当なんだってこれが……」


 思わず飛び出た誠次の呟きに、帳と志藤が会話を続けていた。

 五、六時限目も終わり、放課後へ。ここでついに、誠次の制服のスラックスへ入っていた電子タブレットが振動する。

 待ちに待った知らせに、誠次はすぐに電子タブレットを起動し、周囲の目線を確認しながら、メールを確認する。差出人は、香月だった。


【屋上階段に一人で来て】


 それは、夕暮に包まれる教室内で差し込んだ、希望の光だった。

 ――ガタンッ! 思わず立ち上がった誠次は、膝を机に勢いよくぶつけていた。


「痛い……がっ、それすらも忘れられる!」


 一人でにガッツポーズを決めた誠次は、廊下に飛び出して行った。


「――アイツ……心底バレンタイン楽しみにしてそうだったな……」


 寮室に戻る支度をしながら、志藤が誠次の背を眺め、ぼそりと呟く。一人だけ朝から顔立ちが違っていたのだ。それに何より、彼の゛後姿゛が全てを語っていた。


「まあ、アイツの勝ちは確定だな。精々太っちまえよ、剣術士殿」


 志藤はほくそ笑む。

 どちらにせよこれで、中学生時代の頃から続いた゛どっちがチョコレート多く貰えるか対決゛では、志藤は初めての敗北を覚悟していた。


「つっても俺も、母さんから一つ貰えていただけなんだけどよ……。今年は――」 

「――はーい男子並んで! 今から笠原かさはらさんがモテない君たちの為に、義理チョコ渡すから!」

「「「はーい……」」」


 切ない声がこだまする中、最後まで希望を捨てずに教室に残っていた男子たちがのろのろと立ち上がり、教卓へ向けて綺麗に整列する。


「……はあ。アイツ、明日殺されてなきゃいいけど……」


 志藤は髪をがしがしとかきながら、ちゃっかり列に並ぶ。ひとつ前に並んでいた男の姿を見た時は、唖然としたものだ。

 しれっと立っていたのは、担任教師の林であった。


「いやなんでアンタが並んでるんだよ!?」

「うるせえわい! 俺だってチョコ貰いてーんだよ!」

「そこ、見苦しいから喧嘩しないの」


 バレンタインの負の側面を覗かせると言わんばかりに、列に並んでチョコを受け取るまでの最中、二人の男の口論は続いていた。 

 一方、教室を飛び出した誠次は、高まる期待を胸に、学科棟の屋上へと続く階段を上っていく。

 だいだい色の夕日が差し込む屋上階段にて、誠次は一人、その時を待ち続けた。


「やばい……。自分でも情けない。こんなに浮かれた気分になってしまうなんて……」


 胸の鼓動は早鐘を刻み、律する為に叩いた頬は、火傷するかのように熱い。二月一四日に女子からのメールを貰えると言うこと自体が、去年までを考えれば異常なのだ。

 やがて、静かな足音が聞こえて来る。待ち合わせの少女を待つ間、意味もなく立ったり座ったりを繰り返していた誠次は、完全に立ち止まり、ごくりと息を呑んで、彼女の姿が見えるのを待った。


(――お待たせ。《インビジブル》を使っているわ)


 銀髪に月の髪留めをした少女、香月詩音だ。彼女も緊張しているのか、少しぎこちない笑みを浮かべて、階段を歩いて上がって来た。


「あ、ああ……」


 香月の両手に握られている袋をどうしても見てしまいつつ、それでも香月の紫色の瞳をじっと見つめ、誠次は答える。


(まあ、分かるとは思うけれど、その……バレンタインだから)


 香月はすぐに無表情に戻り、誠次に袋を差し出そうとする、が。


(……上を脱いで)

「えっ?」


 完全に香月からのプレゼントを受け取る気でいた誠次は、両手を伸ばしかけていたところであった。

 穏やかだった雰囲気に、妙な雰囲気が流れ始める。

 香月の表情は真剣そのものだった。


「いや、何で、上を脱ぐ必要が?」

(その反応……どうやら、悪戯だったみたいね。それで少しほっとしたけれど、いいから上を脱いで)


 香月が何故かどこかほっとしているようで、軽くため息をついている。


「? いまいち意味が分からないんだけど」


 ひとまず誠次は香月の言う通り、制服のコートを脱いでワイシャツ姿となる。

 香月は誠次の手から制服を受け取り、それの背中側を見せつけて来る。白の無地のはずのそこには、黒いペンらしきもので、大きく文字が描かれていた。


【チョコレート下さい! お願いします!】

「なんじゃこりゃあっ!?」


 これ以上にないほどの雄叫びを、誠次は上げていた。    


(……まったく)


 誠次の制服を広げて見せている香月もまた、恥ずかしそうに顔を俯けていた。

 これはおそらくとも言わずとも、相村と渡嶋の仕業だ。おそらく自分が先に寝た時に、悪戯で書かれてしまっていたのだろう。

 つまり図らずとも誠次は今日一日、大々的にすれ違った生徒に゛チョコレート欲しいですアピール゛をしてしまっていたと言うわけだ。


(貴方のこんな恥ずかしい書き込みをしている制服のせいで、私たちもどうしたら良いかお昼ご飯の時に話し合っていたのよ?)

「帳も志藤も、何も言ってくれなかった……」


 誠次は正直に、昨夜からずっと相村の部屋でチョコレート作りを手伝っていたと打ち明けていた。


(相村先輩も、長谷川先輩にチョコレートを渡す気だったのね)

「そうなんだ。上手くいってくれるといいけど」


 何だかんだで、自分と関りのある先輩同士の色恋沙汰だ。応援する気はあった。

 微笑む誠次の横顔を見つめていた香月は、改めて、両手に持ったバレンタインプレゼントを誠次に差し出す。


(チョコレートプリンよ。一応、私の手作り)

「香月の手作りか。懐かしいな、GWの時」

(そうね。その頃よりは、上手に出来たつもり)


 東馬とうまの事を思い出すかもしれないので、あえて避けていた頃の話題でもあるが、今となってしまえばこれも二人で歩んできた大事な思い出の一つであった。


(あの……できればここで食べて、感想を貰いたいわ。……来年の、参考にしたいから)


 香月は少し恥ずかしそうにだが、誠次をじっと見つめて言いきる。


「そ、そうか……分かった、食べる」 


もう来年も渡すことが決まっているような物言いに、誠次もどきりとし、誤魔化すように袋の中からチョコレートプリンを取り出した。

 見た目はシンプルな茶色のプリンだが、言い換えればそれは香月らしい気品と優雅さでもあった。


(美味しくないかもしれないけれど……どうぞ)

「ありがとう。美味しくなくても絶対に美味しく頂くつもりだ」

(それはフォローのつもりなのか、いまいち理解に苦しむわね)


 まるでお店の商品のようなプラスチックの蓋を開け、これまたお店の物のようなプラスチックのスプーンを手に、一口食べてみる。口いっぱいに広がったのは、ほろ苦くも甘い、大人のような味わいとコクだった。


「……美味しい! 本当に美味しい!」

(そう、かしら……?)


 落ち着きなく前髪を触りながら、戸惑う香月は喜ぶ誠次に確認する。


「ああ。お店の味がする! もちろん、手作りな感じもあるけど……!」

(お店で作ったから、かしら。でも、褒めてくれて嬉しいわ。あなたに喜んでもらえると、私も作った甲斐があったと思えるし)


 香月はほっとしたように、健やかな表情を見せていた。


「バレンタインにプレゼントを貰うのは初めてだから、なんだか夢みたいだ……」

(そんなに喜んでくれると、嬉しいわ。そして、バレンタインは本来は感謝を伝える日でもあるの。だからいつもありがとう、天瀬くん)

「香月……。こっちこそ、ありがとう」


 誠次は香月からのプレゼントを大事に受け取っていた。

 香月が去った後、二人の少女が誠次の元へとやって来る。ロシアより更に北の果て。オルティギュア王国出身の少女、ルーナとクリシュティナだ。


「――すまない誠次。修行して来年こそは手作りにする! だからどうか、今年はこれで許してくれっ!」

「いや、手作りじゃないといけない決まりなんてない!」


 開口一番、ルーナはチョコレートを差し出しながら謝ってくるが、誠次は慌てて受け取っていた。この日に何かを貰えるのであれば、もう何でも嬉しいのだ。


「クリシュティナも、ありがとう」

「感謝の気持ちです。誠次やルームメイトの皆さんには、本当にお世話になりました」


 ルーナからは華やかなチョコレートセット。クリシュティナからはお手製のチョコレートケーキを受け取る。二人は他にもこちらのルームメイトと志藤にプレゼントを渡していたようだ。

 クリシュティナは一礼をしてくる。

 

「自分で言うのもなんですが、腕によりをかけて作りました。どうぞ食べてください」

「誠次のだけ、クリシィのは手作りだからな?」

「……は、はい」


 傍らのルーナに言われ、クリシュティナはどちらかと言えば東洋人の顔立ちに近い頬を赤く染める。


「そ、そうか……。特別、って事だよな……?」

「そ、そう言う事に、なりますね……」


 それが意味することを理解した誠次もまた、恥ずかしく俯きがちになる。


「誠次。感謝の気持ちと親愛の気持ちを君に。日本のバレンタインとは、素晴らしい行事だな」

「はい。これからの二年間……いえ遠い未来まで、不束者ですが、よろしくお願いします」

「ありがとうルーナ、クリシュティナ」


 海外からの転校生二人のプレゼントを受け取り、誠次は嬉しく微笑んでいた。

 ルーナとクリシュティナが去った後、四人の少女が誠次の元へとやって来る。部活終わりの桜庭、篠上、千尋と生徒会の職務終わりの香織だ。


「う……っ。三人とも手作りなのが肩身狭い……」

「だから、そんなことないから!」


 桜庭がしょんぼりとしながら手渡してきた美味しそうなチョコレートを、叫ぶ誠次は受け取る。こちらはそうは思わないのだが、やはり手作りの方がそれらしいのだろうか。


「ともかくいつもありがとう天瀬。やっぱり、来年は絶対手作りにするからっ!」


 張り切る桜庭の隣から、篠上と千尋がそれぞれ箱に入ったチョコレートを差し出してくる。


「はいどうぞ。せっかく作ったんだから、ちゃんと食べないと怒るわよ?」

「頑張ってお作りしました。まさしく本命チョコです!」


 すでにこの時点でチョコレートの箱は、誠次の両手には抱えきれないほどとなっていた。香月とルーナとクリシュティナの分もあるのだが、篠上と千尋はその上へ、さらに手作りのリボンが巻かれた箱を乗せて来る。


「……その、受け取ってくれてありがと。なんだかアンタがいると……毎日が本当に楽しく感じるわ」

「綾奈ちゃんと同じく。私も誠次くんがいてくれて、本当に嬉しいです」

「……ありがとう。絶対完食する」


 最後に香織が前へ進み出て、誠次に向けてチョコレートを差し出す。


「昨年はありがとうございました、誠次くん」   


 (かしこ)まった口調の香織は深く頭を下げてから、誠次の腕に抱えられた大量のチョコレート箱の上に、自分の手作りチョコレートを乗せる。


「お姉ちゃんとお母さんの分も、これは一緒の感謝の気持ちです」

「波沢さん一家分って事ですか」


 三人家族なので、三人分の重みを感じる。


「誠次くんがいなかったら、今の私はきっとここにはいない。こう言う特別な日だけじゃなくて……ちゃんと毎日誠次くんの事を思っています」

「ありがとうございます、生徒会長」


 四人ともとても恥ずかしかったのか、その後は口数も少なくなり、目線を合わせては互いに逸らすを繰り返していた。


「じゃあ、またね誠次くん……」


 年上である香織が三人に目配せをし、三人はまるで姉妹のように同時に頷き、階段を後にした。

 一人残った誠次は、本日受け取った計七個のチョコレートプレゼントの数々に、甘さよりもの感動をまず味わっていた。

 

「こんなに、貰えるなんて……」


 しかもそれらは全て、本命のものだ。彼女たちにとって自分がどれほど大きな存在となっているかを再認識し、身が締まる思いだった。彼女たちが自分を大切で必要だと思ってくれる限り、自分はそれに応え続ける事だろう。


「しかし、どうやって持っていこう……」


 さすがに七個分のチョコレートプレゼントをこの場で全て食べきる自信も図々しさもなく、ひとまず寮室に持って帰りたかった。だが、持ち帰る途中に限りなく男子の目には触れる事になるのも分かりきっており、敢えて見せつけるという意地の悪い性分でもないので、誠次は頭を抱えていた。男友だちを呼んで一緒に運んでもらうなど、論外だろう。


「香月を呼んで《インビジブル》をしてもらう……って、それこそなんて性格の悪い……」


 結局、どうにか自力でチョコレートを運ぶ事にした。分厚い書類の束のように積み上げたプレゼントを、器用にバランス感覚を取り、ゆっくりと歩いて運んでいく。


「――はあ……。何がバレンタインだよ、ったく」

「ちょっとお前、ローマ帝国の歴史変えてこいよ」

「無茶言うなし! 別に……チョコなんか貰っても嬉しくねーっての――ってはあ!?」


 階段を降りた直後早速、他クラスの同級生男子三人組と、誠次はばったり遭遇してしまう。

 

「っと、とと。すまない! 前がよく見えないから、ぶつかったら悪いっ!」


 ふらふらと歩きつつ、誠次は唖然としている三人の男子の間を通って行く。

 立ち止まれば慣性の法則のような何かで、積み上げた塔が崩れそうなので、立ち止まれなかった。


「「「剣術士……」」」

「あ。これは別に、自慢とかしてるわけじゃないんだ! 本当にっ!」

 

 やがて角を曲がって見えなくなった誠次の残陰を、三人はその目に焼き付けるかの如く睨み続けていた。


「二月一四日。煮干しの日、始まったな……」

「ローマ帝国の歴史変える前に、このくそったれな現実リアルを血に染めてやろうぜ……」

「チョコ……ウラヤマ……ヨコセ……」


 チョコレートを運ぶ誠次の姿は、瞬く間に写真を撮られ、SNSで学園中に拡散されることとなる。プレゼントの数や、誰が誠次にチョコレートを渡したのか等、不毛な議論が、そこでは交わされているのであった。


「しまった。上の方が、傾いている……っ!」


 男子寮棟はもう目の前だと言うのに、誠次の積み上げた塔は、崩壊寸前であった。

 

「――ずいぶんと景気良さそうじゃないか、剣術士」


 そんな絶体絶命のピンチを迎えている誠次の目の前に立ち塞がったのは、1―D所属のとある男子生徒だった。


「そ、その声は! 次期男子サッカー部キャプテン候補の通称フィールド上の魔術師か!?」


 プレゼントで視界が塞がっている誠次は、相手の顔をよく確認することが出来ないでいたが、


「説明どうもありがとう! そう僕こそが、次期男子サッカー部キャプテン候補の通称フィールド上の魔術師だ!」


 当たりだった。球技大会でマッチアップした志藤が言うには、ただひたすら面倒な奴、とのことだったので、誠次は先を急ごうとする。


「まあ待てよ剣術士。お前、今年何個貰ったんだ?」

「初詣の御守りか? 四個だ」

「誰が初詣の御守りの話してるんだよ!? 状況的にバレンタインのチョコだろ! いや御守り四個ってのも凄いなおい!」


 誠次の小ボケに、敬称略、フィールド上の魔術師は地団駄を踏む。


「悪いけど話なら後にしてくれないか!? 今非常に不味いんだ!」

「まあそう言うなって。なあ北久保きたくぼ?」


 くるりと、フィールド上の魔術師が振り向く。

 そこにはクラスメイトの北久保がいたのだが、何故か男子寮棟の廊下で、サッカーボールのリフティングをしている最中であった。


「なあキャプテン。こんな廊下でリフティングして、本当にサッカー上手くなるのか?」

「勿論さ北久保。僕もそうしてサッカーが上手くなったんだ。あと、俺はまだキャプテンじゃない」

「そっかあ。じゃあ俺も頑張るっ! ――ってやべ!」


 意気込みと共に気合いを込めたのか、北久保は思いっきり右足を蹴りあげてしまい、サッカーボールを蹴飛ばす。吹き飛んだサッカーボールは北久保の頭頂部に激突し、天井をワンバウンド。跳ね返ってきたサッカーボールは、神の悪戯か、誠次の手に持つチョコレートプレゼントの塔へと向かって行った。


「なにやってんだ北久保ーっ!」

「フ……」


 迫るボールに慌てる誠次に、微笑むフィールド上の魔術師。

 自らの手を汚すことなく相手を潰し、蹴落とす。それが、フィールド上の魔術師の常套じょうとう手段だった。

 弾んだサッカーボールは、誠次の持っていたプレゼントの塔の中心点へと衝突。反動の衝撃が全体に伝わり、更には焦った誠次も手を離してしまい、計七個のチョコレートプレゼントが宙を舞った。


「なんて……事だ……っ」

「はーはっはっ!」


 天を仰ぐ誠次に、フィールド上の魔術師は嘲笑う。

 しかし、最終的にチョコレートたちが地面に不時着することはなかった。誠次の後ろの方から、心羽ここはが右手を伸ばし、物体浮遊の汎用魔法を浴びせ、チョコレートを浮かばせていたのだ。


「心羽!?」

「なにーっ!?」


 驚く誠次に、驚く敬称略、魔術師。


「ぎりぎりせーふ! はいせーじ!」


 心羽は空中で縦一列に綺麗に並び替えたチョコレートを、再び誠次の手元へ乗っける。そこへは新たに、もう一つのプレゼントが追加されていた。


「私を助けてくれてありがとうせーじ! だーい好きっ!」


 天真爛漫な笑顔で、心羽は誠次にストレートな想いを伝えていた。


「ぐはあっ!」


 胸をかきむしって崩れ落ちる魔術師に、


「よ、良かったー。て、悪かった天瀬! もう二度と室内でサッカーボールは蹴っ飛ばさない! 跳ね返ったボールで頭が痛くなったから!」

「やめる理由そっちか!」


 相変わらずのマイペースな北久保に、誠次はツッコむ。


「心羽、このまませーじのお部屋まで一緒に運ぶ!」

「それは助かる。ありがとう心羽。お礼にココア入れてあげるよ」

「わあ! せーじの美味しいココア!」


 髪の尻尾を揺らして張り切る心羽と共に、誠次は再び歩きだす。


「あっ、そう言えば話ってのは?」


 誠次は視界が塞がっていた為に、魔術師がどんな表情をしていたかよく見えていなかった。


「な、何でも、ないです……」


 何故か気落ちしている魔術師の横を、誠次は「そうか。じゃあ行くからな」と言い残して通っていた。


「そう言えばキャプテン。今日バレンタインなんだぜ? 知らなかった?」

「……逆にこれで知らないって言ったら俺は頭のネジが外れてるだろ……。あと、俺はまだキャプテンじゃねえ……」

「? よくわかんないけどやっぱ知ってたか。さすがキャプテン!」

「もうキャプテン関係ねーよ……」


 残された北久保は、サッカーボールを脇に抱え、制服のポケットから何かをごそごそと取り出している。


「なんで俺は、チョコを貰えないんだ……?」

「キャプテンまだチョコ貰ってないの? 俺は一つだけだけど義理チョコ、クラスメイトの女子に貰ったんだ」

「ぎゃふん」


 北久保が取り出したのは、あくまで義理であることを強調するような、笠原が用意した安い市販のチョコレートであった。しかし長時間ポケットに入れてしまっていたため、ふにゃふにゃに溶けてしまっている。


「うーん。貰ってないんだったらキャプテン。俺の貰ったの半分あげるよ」

「っ。北久保……お前……」

「チームメイトだしな! 遠慮するなって!」


 ふにゃふにゃに溶けたチョコレートを素手で半分に゛千切り ゛、北久保は次期男子サッカー部キャプテン候補通称フィールド上の魔術師に、半分を差し出していた。


「ほら!」

「北久保。案外、良い奴だな、お前……」

「天瀬ほどじゃねーよ、キャプテン!」

「だから……キャプテンじゃねーって……」


 エースと補欠。まるでビターチョコとミルクチョコのようだった二人の関係が、微妙に近付いた瞬間であった。


 心羽の助けもあり、寮室へと無事帰還した誠次は、本日頂いたプレゼントの数々を心羽と一緒に確認する。手元にあるのは計八個で、意地で相村のを含めれば、計九個だ。


「わあ! すごいチョコレートがいっぱい! 全部美味しそうだし、せーじ、虫歯になっちゃうよ!?」

 

 心羽はテーブルに肘を乗せ、目の前に広がる豪華絢爛なプレゼントの数々に水色の瞳を輝かせていた。


「ちゃんと歯は磨くさ。はいココア。さっきは本当に助かったよ」

「せーじのチョコ、守れてよかった。かおりん先輩と一生懸命作ったの!」

「そっか。全員の分、大事に食べないとな」


 ルームメイトたちが部活から帰って来るまでの間、心羽と心羽の作ったチョコレートを食べて過ごした。

 香織の手を借りたと言っており、形状も似通っていた。味はと言うと……ここはまだ、伸びしろを感じると言ったところであった。


「う、うん……。正直貰えるだけで何も言う事はないんだけど……敢えて、敢えて言うのであれば、今後が楽しみな味だ……」

「うう……」


 心羽にも自覚はあったようだが、胸の前で小さな手をぎゅっと握っていた。


「で、でも……。次はもっと美味しく作る! 心羽、成長する!」


 ココアを飲みながら、心羽は決心していた。

 しばらくすると、寮室の玄関をノックもなしに開ける音がする。ルームメイトの誰かが帰って来たのかとも思ったが、違った。


「おおいたか天瀬」


 ヴィザリウス魔法学園のトップの魔女、八ノ夜美里はちのやみさとだった。

 

          ※


 一方そのころ、1-Aの教室で義理チョコを有難く頂いた志藤は、何気なく談話室の方へ向かった。


「お邪魔しま――」


 ドアを軽く開け、中の様子を窺えば、そこでは本日の戦死者たちの葬儀の光景が広がっていた。男子生徒の群れが、カウンター席で突っ伏している。あの仲間にだけはなりたくなく、志藤はそっとドアを閉じた。


「今年は母さんからのは、なしか。毎年天瀬には勝ってたんだけど、今年はぼろ負けだなこりゃ」


 笠原の義理チョコをもぐもぐと食べてしまいつつ、志藤は苦笑交じりに呟く。舌と心に染みる、ほろ苦い味だ。

 今日はもう寮室に戻ってしまおうかと、夕暮れ差し込む廊下を歩いていたところであった。

 

颯介ソースケ! 探したぞ」

「エレーナ!?」


 私服姿のエレーナが、何故か魔法学園の廊下を歩いている。周囲の他の生徒たちも、長身のロシア人女性の登場に、驚いているのだが。


「なんでここにいるんだよ!?」

「入っちゃ駄目とは言われてないからいるのだが、何か問題が?」

「い、いや問題はないけどさ!」


 言っては何だが論理的な何かが大きく欠如していると言わざるを得ないエレーナであった。

 しかしエレーナも、周りの空気に気付けないほどではない。


「駄目だったら……次から気をつける」

「ああ、そうしてくれ」


 本来、根は真面目なのだろう。傭兵として生きていくしかなかったがために、一般常識が欠如してしまっているだけだ。

 素直に反省するエレーナの前で、ここら辺はこの国で暮らすうえで覚えていけばいいじゃないかと、志藤は思っていた。


「んで、何の用スか? 俺を探してたんスよね?」

「ああ、その通りだ」


 エレーナは服のポケットから、無造作に何かを取り出す。それは硬貨一枚で買えそうな、駄菓子に分類されるようなチョコレートであった。


「お前にやる。日本だとバレンタインは女が男にチョコレートを渡す義務がある日だそうだからな。テレビでやってた」

「えっ、はっ!?」


 まさかの展開に、志藤は変な声を出してしまう。


「全く日本は面倒だな。毎年必ず渡さないといけないとは」

「いや別に必ず渡す決まりはないと思うんスけど……」

「手頃な男と言ったらお前だソースケ。これで私のバレンタインは終わりだ。まったく」

「なんか、変な行事と勘違いしてないか、エレーナ……」


 それでも志藤はエレーナからチョコレートを受け取っていた。


「まあサンキューなエレーナ。貰えると、嬉しいわ」


 一応、例年と比べると獲得チョコレート数は一つ増えていた。

 志藤がにこりと笑ってやると、エレーナも微笑んだ。


「そ、そうか。お前が喜んでくれるなら、わざわざここまで来た甲斐があったもんだな」


 夕日を浴びる頬を、ほんの少し、赤くして。


            ※


「いやー回収終わり終わり。やっぱデスクワークには糖分よ」


 志藤と同じく、担任する生徒からの義理チョコをちゃっかり頂いた林は、職員室の自分の机の元まで戻る。


「なんだこれ?」


 差出人不明の、チョコレートボックスが自分の机の上にぽつんと置かれている。


「……」


 周囲の教師は、確認できる限り、目の前の席の向原琴音むかいはらことねだけだ。茶髪のポニーテール姿で彼女は今、黙々と電子タブレットのホログラムキーボードを叩いている。


「おい向原。これ、なに?」


 立ったままの林は、机の上の意味深な箱を指差して尋ねる。


「さあ、知りませんね」


 向原は顔を持ち上げて、林の机を見たかと思えば、すぐにホログラムキーボードに視線を戻す。


「いやお前ずっとここにいただろ? 誰が置いたかとか、分かるだろ?」

「見てませんね。なにせ、作業に集中していたので」

「目の前なのに?」

「魔法でも使ったんじゃないですか?」

「魔法学園の教師が分かんない魔法でか?」

「そう言う事になりますね」


 ホログラムをタッチしているので、カタカタと音も鳴る事もなく、静寂が職員室を包み込む。


「……怖いし、捨てるか」

「はいっ!? 何でそうなるんですか!?」


 包装が上品なせいで中身も分からない。差出人不明のプレゼントをゴミ箱に投げ入れようとした林に、立ち上がった向原が叫ぶ。


「だって危ないかもしれないじゃん。爆発物かも」

「どこまで性格歪んでるんですか貴方はっ!」

「老い先短い人生だ。慎重な性格だと言え」

「いいから大人しく食べればいいじゃないですか! ちゃんとしたビターチョコですよ味わってください!」

「何でお前、中身知ってんの……?」


 林がジト目を向原に向ける。


「しまっ!」


 向原はぎょっとなり、林を見つめ返す。


「ははーん。さては、お前――」


 林は得意気な表情でチョコレート箱を持ち上げ、向原に見せつけるようにしていた。

 向原は今にも聞こえなくなりそうな、か細い声で、


「そ、それは……いつも一人で寂しそうにしているから……」

「羨ましいからって、つまみ食いしようとしたな? 悪いが、ただのビターチョコって分かった以上、ありがたく頂くぜ? 美味そうにお前の目の前でよ」

「はあ!?」


 意地悪い笑みを見せる林であったが、それはそれで向原の思い通りな気もする。


「悪いな向原。これは俺様の物だ」

「か、勝手にしてください! どうぞ堂々と食べればいいじゃないですかっ!」


 職員室は長方形の構造で、縦参列に向かい合った机が並んだ列が出来ている。それぞれ学年の教師ごとに、列が異なるのだ。

 廊下側の列が一学年担当教師用、窓際が三学年教師担当用。そして中央の列が、現在生徒から貰った大量のチョコレートに難儀する森田もりたがいる、二学年生担当教師の列だ。


「チョコレートアレルギーで食えないし、ダニエルさんにでも渡すか……。あの人、めっちゃ食いそうだし」

「はい決まりー。お前俺に聞こえるように言ってるからそれ嫌味確定ー」

「ああ悪い。生徒から慕われている大事な気持ちだし、やっぱ俺食うわ」


 どや顔を浮かべてにやつく森田に、林は椅子に足を掛ける。


「いやてめえ食えねえだろ知ってるんだぞ! ゛ちょこ゛っとは俺に寄越せよ!」

「お前それ面白いと思ってんの? 今時誰も言わねえよそんな駄洒落」

「うるせ一人ぐらいいるかもしれねーだろ!?」

「いませんよそんな人……」


 最終的に向原がぼそりと声を出す。

 もうこんなやり取りを、学生の頃から繰り広げている、三十路の教師二人であった。    

  

         ※


「ま、まさか、八ノ夜さんまでバレンタインチョコを!?」


 部屋に入って来た八ノ夜を、誠次はまじまじと見つめる。一応は女性なので例年、何気なく八ノ夜からのチョコレートプレゼントを楽しみにしていたが、いちいち言葉には出来ず。


「バレンタイン? ああ、さっきチョコつまみ食いしたら全部なくなった」

「ですよねはい。分かってました」


 切り替え早く、誠次はあっさりと言葉を返す。

 と、八ノ夜と過ごした日々で迎えるバレンタインは、ことあるごとに用意はしていたのだがと、まるで宿題を忘れた小学生のような言い訳を言われる。去年はドブに落としてしまったそうで、一昨年は業者の発注ミスでチョコレートが届かない、等。毎年毎年一応は期待していた少年期誠次の心は、二月一四日になるたびに荒んでいくのである。


「せーじ、可哀想……」


 チョコレートをつまみ食いしてしまったと言う八ノ夜の言葉を鵜呑みにする心羽に慰められるが、今年はそれら苦い思い出をひっくり返すほどの大量のチョコレートを貰えたのだ。立ち直りは早かった。


「どうしたんですか。ここに何の用ですか?」

「チョコレートはないが、これだ」


 八ノ夜は誠次に、チョコレートプレゼントとは比べて極めて薄い封筒を差し出す。それはエアメールと呼ばれる、海外から送られてきたものだった。端に赤い線と青い線が交互に引かれている白い封筒である。


「これは?」


 誠次が受け取ったそれには、英語の文字が羅列されている紙が入っていた。


「アメリカ合衆国。ニューヨークはマンハッタン。――お前に召集がかかった。拒否権はない」


 八ノ夜のサファイア色の瞳が、有無を言わさぬ眼光で、誠次を見据えていた。


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