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魔法世界の剣術士 上  作者: 相會応
メーデイア Fallen 解放戦 Snow...
172/211

5 ☆

 クリスマスイブの大阪にも、雪は降っていた。眼鏡を掛けて太鼓を鳴らす陽気な人形も、今日はサンタクロースの格好をしている。

 雪降る大阪のとあるスラム街。ビルとビルの間に挟まれた細長い路地裏に、クリスマスイブの街から外された人々の拠り所はあった。ブルーシートの屋根に、気休め程度の金網で出来た裸の王国である。そこでの夜は゛捕食者イーター゛の脅威に怯え、極めつけに冬の寒さが押し寄せる。


「……」


 錆びたドラム缶の中で灯される炎に手を向ける青年は細めた目で、炎が風に揺れる光景をじっと見つめていた。のび放題の口ひげと青みがかった黒髪。ぶ厚いコートを羽織った青年の表情には、色濃い影があった。


「――メリークリスマス」


 すっと、横から差し出された湯気が立つコップ。大好きな苦みのあるブラックコーヒーが淹れられている。


「ありがとうございます」


 青年――影塚広かげつかこうは、横に立つ男性からそれを受け取っていた。

 長い黒髪に、細身の身体つきの男性は、影塚より少しだけ年上であるが、まだまだ若い。


「いえいえ。貴方ががひょっと来てもうすぐ一か月になる。魔法が使える貴方が来てくれて、ここの皆さんも感謝していますよ。怪我や病気も魔法の力ですぐ治る。不思議なものです」

「そんな魔法が、人を追い詰め、殺すこともありますが……」


 コップを片手に持ち、影塚は遠くを見つめていた。

 ここにいるのはほとんど魔法が使えない世代の人ばかり。ここは魔法世界から見放された人々が集うような場所だ。

 そんな人々が集まるスラム街の中でも、影塚と男の二人は目立っていた。


「……かく言う貴方も、魔法が使えるじゃないですか。それも相当な手練れだ」

「フフ。お褒め頂き光栄です」


 男性は腕を組んで微笑んでいた。


「貴方が連れて来た男、まだまともに口もきけないようですね?」

「……専門の治癒魔術師でないと、回復は厳しいです」


 理由わけあって影塚がこの場に逃れて来た時に、一緒に連れて来た志藤康大しどうこうだいは、プレハブ小屋の中で、眠っている。幻影魔法に強く汚染されてしまった意識の修復は、今の影塚には出来なかった。せめて大きな病院にでも移せればだが、それではすぐに見つかってしまうだろう。

 しかし、追われている今の自分の状況では、追手の追跡から逃げる事で精いっぱいであった。 


「珍しいものですよ。ここに来るような人は自分の事が第一と思ってるような人ばかり。それなのに貴方はあのよくわからない男をかくまっているようで。明日の生活も分からないと言うのに」

「あの人にはまだ生きていてもらわなければならないんです。それでも、ここに匿わらせていただけて、感謝はしています」

「ここにいるのはこの魔法世界から隔離されてしまった人々です。来る者は拒まず、ですからね」


 コップのコーヒーを飲み干し、横の男は人々が身を寄せ合うスラム街を眺める。


「そして私は、そんな人々を守るためのレジスタンスのリーダーを務めていると言ってもいいでしょう」


 男はちらりと、青い目で影塚をうかがう。


「レジスタンス……。少し昔の僕ならば、取り締まる立場にいました」


 影塚もまた、青い瞳を男に向け返す。

 忘れもしない因縁の相手ではあった。それが今や、共通の敵を持ち、雌伏しふくの時を共に過ごす仲間となっていた。他に追跡者から身を隠す方法は浮かばなかったとはいえ、この男に頼る事になるとは思いもしなかった。

 

朝霞刃生あさかばしょう……。どうしてこんなところにいるんですか?」


 スラム街に潜むレジスタンスのリーダーとなっていた朝霞は、五体も満足の状況で健在していた。相変わらず挑発的な笑みを浮かべ、朝霞は影塚を面白気に見る。


「かつてのエースが見る影もありませんね? 科連の戦いで致命傷を負わされましたが、誰かさんに死ぬなと言われたので死ななかったようです。彼の言葉は人を動かす魔術師のようですよ。そうしてたどり着いたこの大阪の地で、宗教団体の教祖のような事をしているのですよ」


 朝霞の説明に「運が良いんだな」と影塚は言い返す。

 

「大阪で貴方に負けてから、僕は自信を失くしていました。そしてそのまま、隊長をも失ってしまった……」

「ではどうしますと?」


 朝霞は影塚をじっと睨む。

 影塚は慎重に息を吸い、答えた。


「隊長によって生かされた命です。粗末にはしません。今はここで、チャンスを待ちます」

「誰かさんによく似ている。夜ご飯の準備は出来ていますよ」


 その声に反応しぞろぞろと、それぞれのねぐらから出て来る自分と同じような身なりをした男たち。同じように髭が伸び、髪も伸びている。違うのは、魔法が使えないことぐらいだろうか。

 特別な理由で身を隠している自分と違う点はたったそれだけだと言うのに、それだけでこの魔法世界からは除外されてしまい、このような場所に押し込まれる。魔法が使えない彼らの居場所は、ここだけだった。


『――特殊魔法治安維持組織シィスティムの局長がテロと共謀していた事件からもうすぐ一か月。なずな総理は改めて司法の汚職問題を正し、二度と同じ過ちを繰り返せないようにしなればならないことを、国会で強調しました。国を揺るがした事件に野党も、与党の考えに賛同する動きを見せています』


 レトロなミニコンポから、ニュースを報道するアナウンサーの声が聞こえる。高官の過ちを正す、と言う大義名分を掲げる薺代表の与党に反対する野党など、この国にはもはや存在しなかった。言ってしまえば、独裁状態に他ならない。

 だが、国民がその事実に気づくことはない。


みんな、無事でいてくれ……。僕は必ず戻ってみせる」


 そのための、一時的な協力関係だ。

 途方もない喪失感が押し寄せる胸にぎゅっと左手を添え、影塚は誓うように呟いていた。いつか、この国の人々が真実を知る日を願って。そして、その日に起こるであろう混乱の時に再び、特殊魔法治安維持組織シィスティムの存在が必要になる時に備え――。

  

                 ※


『メーデイアを奇襲して解放するだと!? 正気か!?』

「いたって正気だ」


 右肩と頭の間に電子タブレットを挟み、八ノ夜はちのやは山梨で留守を任せた草鹿くさかと通話をしていた。手元までしか見えないような薄暗闇の中、八ノ夜はどこかの地下室で、機材をいじくっていた。

 すぐ後ろでは、八ノ夜の魔法によって気絶させられた二人の見張りの男が仰向けで倒れている。


『お前、謹慎中だと言われているんだろ?』

「バレなければ大丈夫だろう。……これはこうでいいのか……? それに、天瀬あませばかりに頼るのは私の面子が許さん」

『こうでいいのかとか聞こえたんだが、大丈夫か……?』


 ぶちんと、何かを引き抜けば、地下室全体が振動したような音が起こる。


波沢茜なみさわかねを助けたいのは私も同じだ。上手くいくのか?』

「さあな。なにぶん今回は時間が足りなかった。まともな作戦らしい作戦も打ち立てられなかったが、それでも天瀬はやる気らしい」


 ぶちんと、八ノ夜は容赦なく機材に繋がれたケーブルを再び引き抜いていく。一見すると、かなり大雑把な作業現場である。


『……こんな危険な真似までして、剣術士アイツも茜を助けたいのか……?』

「良い奴だろ? お前には渡さん」

『いらんと言ってるだろ! ……全く、心配している身にもなれ』


 ため息混じりの草鹿の声を聞きつつ、八ノ夜は左耳に電子タブレットを持ち変える。


「……きっとだ。アイツも悔しいんだと思う」


 口調を変え、真剣な表情で八ノ夜は天瀬誠次あませせいじについて告げる。


「子供の頃からずっと憧れて、血の滲む様な努力をしてまで目指していた組織が腐敗していた現実。認めたくないからとどうにか足掻いているようなんだ」

『それが波沢を助ける理由か?』

「まああとは、妹の生徒会長さんに格好いいところでも見せたいんだろう。なんだかんだあの二人、脈ありだと思うぞ?」


 にやと微笑んだ八ノ夜は最終的に魔法を使い、周辺の電子機器を一斉にただのなまくらへと変えていく。緑色のランプは赤色に変化し、監視カメラ映像にも砂嵐が走る。


「さて。私は正体を明かすわけにはいかないが、それはアイツも同じこと。化けさせてもらおう」


 八ノ夜の影が徐々に小さくなっていき、変化した黒くしなやかな影が、メーデイアの地下室で揺れ踊っていた。


                  ※


「――時間だ。運べ」


 その瞬間は、看守の冷酷な言葉を合図に訪れた。黒い目隠しをされ、身体の前で手錠を嵌められた両手。収監されていた波沢茜なみさわあかねが、処刑の為の場所へ移動される。たった一人を処刑する為だけに、十数人の付き添い人が前と後ろに続いている。


「……」


 すっかり覇気と生気を失ってしまった茜は、もはや抵抗する気力もなく、されるがままの運命を受け入れようとしていた。自分で歩く事もままならず、二人の男に両腕を支えられ、細くなった裸足は床の上で引きずられていた。


「……?」


 しばし引きずられた後、茜は両手足に鎖を嵌められた状態で、放置される。

 目隠しされたままの顔を、茜は微かに上げた。

 この空気が顔に張り付くような凍てつく冷気は、雪? まさか、外で処刑されるのか?

 

「貴様を楽に殺す気はない。貴様にとっては屈辱的で、耐え難い苦痛を味わってもらう」


 背中の方から声が聞こえたかと思えば、身体を地面に押し倒され、目隠しを強引に外される。そこで茜は、くたびれた瞳を大きく見開いた。


「……っ!?」


 口から放った白い息が視界を遮り終わり、広がるは一面に雪の絨毯が敷かれた、メーデイアの塀に囲まれた夜の外。夜の世界に広がった銀世界の中に、茜は地中に埋め込まれた鎖に手足を縛られて、放り出されていたのだ。処刑゛人゛のいない、処刑台の上。それが今の茜の状態であった。


「はは……あ、はは……」


 笑えてくる。こんな処刑が、あっていいのか……?

 満身創痍の心身で茜は辺りを見渡す。立ち上がろうにも、膝立ちの姿勢で鎖に繋がれ、身動きが出来ない。とにかくまずは寒い。身体を温めたいものだが、それさえも両手を縛られた今の茜では、出来なかった。


「寒い……」


 首にも冷たい鎖は巻かれており、視界は前にしか向かない。

 後ろから、看守の男の返答が聞こえた。


「波沢茜。この夜の支配者による刑の執行だ。――゛捕食ホショク゛の為の餌を撒いたと言った方がいいかな? 裏切者の魔術師」

「……っ?」


 茜は愕然とした面持ちで、視線を持ち上げる。

 光が集うクリスマスイブの街から伸びる影が、恰好の餌を見つけていた。


 メーデイアの最上階。刑務所の所長と言うべき矯正監の部屋、矯正監室はメーデイアの敷地内を見渡せる造りであった。

 温かい風を作り出すストーブを稼働させ、光ある室内は温かい。高みの見物とはこの事か、学校で言うのならばグラウンド、メーデイア敷地内の中庭真ん中に、鎖で縛られた波沢茜の姿はあった。普段は囚人たちが運動をする為の中庭は、今では降り積もった雪により遊具も真っ白に染まっている。


「ぐっちーひどーい。あの娘可哀想ー」

「あれは犯罪者なんだ。処刑されるのは仕方ないんだよぉ」


 子供が母親に甘えるような口調で、メーデイアの矯正監である溝口みぞぐちはソファに座り、傍らで胸元が大きく開いたデザインのドレスを着ている女性二人に話しかける。

 机には果物の盛り合わせに、赤ワインの瓶。瓶はすでに二本目に突入しようとしており、溝口も赤ら顔であった。ドレスを着た二人の女性は、ヒールを履いた生足を組み、溝口の両脇に寄り添う。


「あの娘、゛捕食者イーター゛に喰われちゃうの?」

「まあ、運だよね。喰われなかったらどっちみち地下で処刑だし」


 女性の手により注がれた赤ワインが入ったグラスを優雅に傾け、眉根をわざと寄せた溝口は、ふっと気取って笑う。


「「ぐっちー偉そうー!」」

「だって僕は矯正監! ここで一番偉い人なんだもーん!」

「「ぐっちー格好いいー!」」

「そうだろう!?」


 ご機嫌に笑う溝口は、今まさに一人の人が生死の境に置かれているような状況にも関わらず、愉快にワインを一気飲みする。


「でもわたしぃー。人が食べられちゃうの見ても面白くないかもー」

「じゃあ゛捕食者イーター゛の代わりに、僕が君たち子ネコちゃんを食べちゃうかもーっ」


 ぐへへと笑い、寄り添う女性二人に溝口は手を伸ばす。

 きゃあ、と女性たちは悲鳴を上げながら、しかし溝口を喜ばせるための反応を繰り返していた。


                   ※


 午後六時過ぎ。外はすっかり暗くなっている。すでに誠次せいじは起きており、香織かおりと共に窓の外を見つめていた。昔はあったと言う屋外野球場のように、四方から照明が当てられているメーデイアのグラウンドに、一人の女性が置き去りになっているのだ。


「なんだあれ。まさか……あれが処刑だって言うのか!?」


 全身が怒りで震え、誠次は唇を強く噛み締める。とても同じ人間がやる所業とは思えない。


「夜の外に置き去りって、まさか゛捕食者イーター゛に喰わす気なの!?」

「そんな、残酷すぎる!」


 見ているに堪えず、誠次は近くで待機しているはずの八ノ夜に連絡をする。


「八ノ夜さん! 茜さんの姿を確認しました! 今からでも動けます!」

『待て! まだ動くな。戦闘準備をして待機しろ! 今出れば向こうの思うつぼだ』


 あくまで待機を命じて来る八ノ夜であったが、一筋の汗を頬につたわせている誠次は首を横に振る。


「茜さんは身動きできない状況で外に出され、今にも゛捕食者イーター゛が出てもおかしくないですっ! 急がなければ手遅れに!」

『なんだと……』


 さすがの八ノ夜も、言葉を失っているようだ。


「あれは……誠次くん! 下!」


 香織が窓からすぐ下を指差している。

 誠次は八ノ夜と通信したまま、香織の指さす先、メーデイアの外壁周辺を見渡す。そこでは何台かの車が停まっており、明らかに外部からの侵入者に対し待ち伏せを行う警戒網を敷いている。


「あの胸の紋章バッジ……特殊魔法治安維持組織シィスティム!?」


 眼鏡を掛けている香織が叫ぶ。


特殊魔法治安維持組織シィスティムが人を守らずに゛捕食者イーター゛を守るのかっ!」


 それも、かつての同僚が命の危機にあると言うのに、処刑の手伝いをする気でいるようだ。

 怒りで身体の血が沸騰しそうになるが、誠次はぐっと抑え込む。かつて憧れていた組織の今の体たらくに、全身が拒否反応を起こしているのだろうか、全身が震えていた。

 ひとまずホテルの利用料金とやらを、お茶とコーヒーの空き缶が置いてある机の上に置き、誠次は香織と共にその時を辛抱強く待っていた。近くに寄れば、香織の心臓の音が聞こえて来る。助けたい気持ちは、同じだ。


「お姉ちゃん、必ず、助けられるよね……?」

「俺と香織先輩が力を合わせれば、きっと茜さんは助けられます。俺を信じてください」

「勿論だよ」


 二人して頷き合い、覚悟を決める。

 誠次はレヴァテインを収めた黒い袋を背中にかけ、コートを羽織る。

 香織も眼鏡をはずし、誠次と同じく壁に掛けてあったコートを羽織っていた。


「すみません八ノ夜さん……。でももう時間がありません。俺と香織先輩で先に行きます」


 向こうからの通信は、やや間があって、


『……分かった。やむを得ない。出来る限りの時間稼ぎを頼む。……無事でいろよ』

「了解です」


 誠次は窓の外を見つめる。見ているだけで寒そうな雪の夜空の下、照明が爛々らんらんと輝きを増し、その影を捉える。


「゛捕食者イーター゛!」


 雪原の影が浮かび上がるようにして直立し、頭部のない人型がそこに生まれる。格好の餌を見つけたと言わんばかりに、゛捕食者イーター゛は茜の方を向き、雄たけびを上げている。

 付近で散開している特殊魔法治安維持組織シィスティムメンバーたちは、同僚の身に危険が迫ってもなお、塀の外の警戒を緩めようとはしなかった。


「人が喰われようとしているんだぞ!」

「お姉ちゃん……っ!」


 叫んだ誠次は香織の手を引き寄せ、ぎゅっと握り締める。戸惑っていた香織の方も力を込め、誠次の手にすがるように力を籠めて来る。

 誠次はその行動に後押しされ、窓を勢いよく開ける。


「塀を飛び越えます! 香織先輩は形成魔法で足場を頼みます!」

「私も行く!」


 香織が左手を伸ばし、魔法式を展開する。空中に半透明な長方形の立体的なブロックが生み出されたかと思えば、それらが次々と氷で固められる。

 誠次はレヴァテインを抜き放ち、窓枠を大きく踏みしだき、香織が作り出した足場に向け跳んだ。

 ――しかしその直後、下から魔法の攻撃が二人に襲い掛かって来る。白亜の閃光が閃いたと思えば、それが打ち上げ花火のように高速で飛来し、香織の作る足場を次々と打ち壊していく。


「なに!?」


 誠次は絶句する。

 遥か下では、特殊魔法治安維持組織シィスティムの人々がこちらに向け攻撃魔法を放っていた。


「――空間魔法に魔法の反応有り、上空です!」

「プレゼントを届けるサンタクロースだな。撃ち落とせ!」

「了解!」


 黒スーツの腕から放たれる魔法の連撃は、誠次と香織の足場を次々と打ち砕いていく。


「やめろ! 俺はただ、茜さんを助けにっ!」

「きゃあっ!?」


 あと少しで塀を越えられると言ったところで、後方より香織の悲鳴が聞こえる。

 渡ろうとしていた足場が撃ち落とされ、香織の身体が斜めに傾いていた。


「誠次くんっ!」

「香織先輩っ!」


 誠次は慌てて振り向き、左手を伸ばし、空中から投げ出されようとしていた香織の腕を掴む。香織の身体をどうにか引き寄せた直後、誠次が立っていた足場にまで攻撃魔法が被弾する。

 あっとなったのも一瞬のことだった。まるで吸い込まれるように、誠次は香織と共に空中から落下する。

 雪が降り積もるメーデイアの敷地内へ、香織は直接。誠次は鉄の柵に身体を強く打ちつけられ、そこに巻かれていた有刺鉄線に腹部を大きく引き裂かれて、落下していた。


「かはぁっ!?」


 雪は想像以上に降り積もっていたようだ。運よくメーデイアの敷地内に入る事は出来たが、誠次は仰向けの状態で雪に埋もれるように倒れてしまった。

 そんな二人が墜ちた先に、今度はメーデイア施設内から何発もの閃光が瞬く。やや遅れて、辛うじて動く頭の視界の先の雪が弾けたかと思えば、ちゅんと言う乾いた音。銃で一斉に撃たれているようだ。


「《シェルプロト》!」


 急いで起きた香織が防御魔法を発動し、銃弾の雨を防ぐ。

 

「か、香織先輩!」


 身体を起こそうとする誠次だが、頭はくらくらし、満足に上半身も起こせなかった。おまけに、


「レヴァテイン、は……?」


 有刺鉄線に腹部を引き裂かれた際に、あまりの痛みで右手に掴んでいたそれを投げ飛ばしてしまったようだ。吹き飛ばされたレヴァテインは白い雪に埋もれてしまったようで、見える限りではどこにもない。

 もしかしたら外にあって、特殊魔法治安維持組織シィスティムに回収されたのか?

 最悪の状況が脳裏に過るのと同時に、香織の悲鳴が緊急事態の現実へと誠次を引き戻す。


「対策されてる……!?」

「くっそ……っ!」


 誠次は両手でかきむしるように雪の大地に手をつけ、どうにか身体を起こす。

 遥か彼方からは、止まる事のない銃弾の波状攻撃が、香織の高位防御魔法に襲い掛かっていた。


「絶対に、誠次くんは私が守る! 生徒会長してでも……一人の人としても!」

「香織先輩……」


 完全に身体を起こし、しかし何もできないでいる誠次の目の前で、香織は必死に耐えていた。


 サンタクロースは天から墜ち、今や完全に格好の的だった。あとは特殊魔法治安維持組織シィスティムが内部へとやってくれば、あの二人は完全に包囲され、その場で始末されるだろう。


「これは、確かなんだな……」


 相手は反逆者を助けようとする敵だ。しかし、それがまだニ〇代もいっていないような子供だとは思いもしていなかった。女子もいるようだ。

 ゛捕食者イーター゛出現の危険性もある為、室内より代わる代わる銃撃隊を配置し撃つように指示を出していた看守長の元へ、外の監視カメラの映像が入って来る。

 呆然と立ち尽くす男子に、そんな彼を必死で守ろうとしている魔術師の少女。


「この女子……まさかこの容姿は……!」


 看守長はうなっていた。

 青い髪の少女は、処刑される波沢茜とよく似ている。まさかとは思ったが、血縁者なのではないだろうか。


「撃ち方をやめろ!」


 看守長は声を張り上げ、銃火器で武装していた隊員たちに射撃中止命令を出す。


「何故です!?」

「子供を撃っているんだぞ!」

「子供だろうが向こうは魔術師です! 向こうがその気になれば簡単にこちらの命を狙えます!」

「……ならば――!」


 その通りではあるが、看守長は険しい顔で首を横に振る。


 銃弾による波状攻撃が急に止まった時、香織は思わず片膝をついていた。


「止ま、った……?」

「香織先輩!」


 なにも、出来なかった……! 

 レヴァテインを失った誠次は香織の傍に駆け寄り、肩に手を添える。香織の防御魔法の範囲内を探したが、近くには落ちていなかった。雪は次々と降って来ては、地面に悪戯するかのように新たな絨毯を敷き始める。


「っ。まだ狙われている!?」


 香織の左肩に添えた自分の右手に赤い点がついている事に気づき、誠次は思わず硬直する。

 赤いレーザーのようなものが、いつでも誠次と香織を狙撃できるように、彼方から向けられている事に気づく。見れば、苦しそうな香織の額にも赤い点が向けられている。


「誰か、来る……」


 香織が顔を上げ、メーデイアの施設の方をじっと見つめている。

 香織よりは視力の良い誠次も顔を上げると、メーデイアの看守らしき男性が一人で、こちらに向かって歩み寄って来ていた。


「やはり、子供か……」


 向こうがぼそりと言っている。

 

「貴様らが……っ!」


 茜を喰わせようとしている敵を前に、誠次も一歩二歩と歩む。


「茜さんを解放し――!」

「下手に動くな。お前たちは二人とも狙撃手によって狙われている。いつでも撃てる状況にいる。私はメーデイアの看守長だ」


 看守長が片手をすっと上げれば、それに反応したかのようにまたしても赤い点が誠次と香織の胴体につけられる。


「子供、だな……?」


 こちらをまじまじと見つめ、看守長は確認するように訊いてくる。

 香織の命までもが危ういこの状況で迂闊な真似は出来ず、誠次は両手を上げたまま、無言で頷いていた。


「波沢茜さんの救出に来ました……」

「彼女が反逆者だと知っての行動か?」


 看守長は軽く振り向き、両手足を縛られた状態で外に出されている茜をちらりと眺めつつ、誠次に問う。


「反逆者だったとしても……香織先輩……この人は、茜さんの妹なんです!」


 左手を押さえてよろよろと立ち上がり、看守長をじっと見つめる香織へ目配せしながら、誠次は答える。


「やはりか……」

「血の繋がった人がこんな残酷な処刑方法で処刑されるなんて、黙って見ていろなんて出来るわけがないでしょう!?」

「お願いします……せめてお姉ちゃんと話をさせてください!」

「……」


 雪が肩に降り積もるまで看守長は黙り込み、思いつめているようだ。

 まるで判決を下す裁判長を前にした、哀れな被疑者の気分を、二人は味わっていた。


「解放は出来ない。しかし引き返して逃げろ。そうすれば、君たちは見逃そう」


 看守長から出た言葉は、降りしきる雪よりも冷たく、残酷な勧告であった。


「そん、な……」


 寒さではなく、悔しさと悲しさからか、身体を震わせてしまう香織。


「黙って、逃げろって言うんですか……。この目の前で繰り広げられようとしている残酷な処刑を見て見ぬふりして……忘れろって言うんですか……」


 伸びた髪をだらりと垂らし、誠次は視線を落として、男に問う。


「……忘れろとまでは言わない。憎しみを宿した君たちがこれからこの先私を殺そうとして来ようとも、それはそれで仕方のない事だろう。それでも私はメーデイアの看守長だ。多くの部下を預かり、情に流されるわけにはいかない。だから私からも頼む。どうか降伏し、逃げてくれ」


 向こうの言葉はとても甘い逃げ道で、また正しいのかもしれない。どろどろと融けてしまう、ハチミツの様だ。


「香織先輩は、自分の身に防御魔法をお願いします……」


 ――それでは、きっと駄目だから。

 覚悟を決めた誠次は、顔を俯けたまま、香織にぼそりと告げる。


「え……誠次、くん……?」

「俺は大丈夫ですから、心配しないでください」


 誠次は香織に向け、力強く頷いて見せる。

 

「……何をする気だ?」

 

 看守長も誠次の気配が変わったのを感じ取ったようで、声に力を込めて来る。


「……そちらが降参する気は、ないんですね?」


 誠次の口から出た言葉に、看守長は思わずと言ったように、誠次の額を狙っている赤い点をまじまじと見つめる。状況は完全にこちらが有利だと思われているのだろう。


「……諦めないつもりか? この状況でもか?」


 腹の肉はズタズタに引き裂かれ、大気は凍てつくような寒さだ。

 それでも誠次は、息を深く吸うと、一気に顔を上げる。


「貴方に何と言われようと、茜さんは必ず救い出します!」

「……君の覚悟、しかと受け取った」


 看守長は冷静に右手を高々と掲げ、一息に振り下ろす。

 ――直後、誠次の額目掛けて放たれた銃弾は、誠次のすぐ背後の壁に着弾していた。

 誠次は身を屈めて銃弾をかわすと、看守長の懐に一気に潜り込む。


「むうっ!?」


 驚愕する看守長の左手を払い、誠次は看守長と共に雪の上にもつれ合い、墜ちる。


「茜さんを、解放してくれ!」


 倒れた看守長の胸倉を掴むが、逆にこちらの胸倉を掴まれ、雪の上で揉み合いになる。


「聞けん! 反逆者をみすみす解放するわけにはいかない!」


 誠次は逆に雪の上に押し倒され、頬を一発殴られる。


「人を゛捕食者イーター゛の餌にされてなるものか―っ!」


 切れ、血が滲む口で叫んだ誠次は足で男の腹部を蹴り押すと、看守長を雪の上に倒し、馬乗りになる。

 そして、両頬を交互に二度殴り、三度目の時点で、伸びて来た看守長の手が誠次の両手をがっしりと掴む。


「これは処刑だ……。人が殺すのも゛捕食者イーター゛が殺すのも結果は同じだ!」

「違う……絶対に違う! こんなのはただの虐殺だ!」


 誠次の左頬を、銃弾が掠める。伸びた茶髪が宙に舞い、怒りで歪んだ表情をする誠次の目の前で消えていく。

 看守長の腕力はかなり強く、誠次は両手を広げられ、押し返されてしまう。


「ぐああああああっ!?」


 痛い痛い痛いっ!? 無理やりに関節を曲げられ、骨がきしみ、全身が悲鳴を上げていた。光安の男にしてやった技と同じ痛みが、誠次に襲い掛かる。


「腕の骨を折らせてもらう! 自分の無力を恨め!」


 自分の無力なら、もう恨み尽くした……。魔法も使えず、今もこうしてなす術もなく、大事な人の大切な人を失おうとしてしまっている。

 込み上げる痛みと、それ以上の悔しさ。誠次は涙を堪え、男へ爛々らんらんと光る黒い瞳を向けた。


「例え腕を折られようとも、地を這ってでも、俺はもう絶対に失わない……!」

「っ!? 馬鹿なっ!」


 誠次は男に向け逆に倒れ込むと、男のネクタイに嚙み付き、全身を使って引き上げようとする。誠次の黒い瞳には血が滲み、看守長はそれをまじまじと見つめる。


「お前……まるで゛捕食イー゛――」

「看守長!」


 看守長を救おうと、銃を構えた若い看守が一人、駆け寄って来る。


「俺が撃ち取ります!」


 誠次に向け銃を構えたその直後、急に看守の身体が暗闇の奥へと引きずられる。


「えっ?」


 銃を手放し、呆気に取られた表情を浮かべる看守の腹を貫き、空中に持ち上げていたのは、゛捕食者イーター゛であった。゛捕食者イーター゛はまるで自分の庭を荒らされたかのように怒り狂った動きで、看守を高々と持ち上げ、丸呑みにしようとする。


「やめろ、やめてくれっ!」


 看守長が誠次の腕を離し、身体を反転させようとする。

 誠次もまた看守長の身体から離れ、すぐに立ち上がる。


「゛捕食者イーター゛!」

「誠次くん! 私たち、囲まれている!」

「っ!?」


 メーデイアの照明が作り出す影から、続々と黒い影が立体的に動き出し始める。


「全員に告ぐ! 射撃中止! メーデイア敷地内に出現した゛捕食者イーター゛を殲滅しろ! 繰り返――」


 立ち上がった看守長が耳元の通信機に命令を掛けた直後、看守長の右腕と左足に銃弾が命中する。


「ぐおっ!?」

「っ!? 同士打ち!?」


 香織の悲鳴の中、撃たれ、倒れる看守長の身体を急いで支え、誠次は「しっかりしてください!」と叫ぶ。


「どうしてっ!」

「光安だ……っ。狙撃部隊は、光安のものだっ!」


 口封じの為か、更なる狙撃の銃弾が、誠次と看守長の間の僅か数ミリの部位を掠め、雪の大地の中へと打ち込まれる。


「人間同士でこんな事をしている場合か!」


 誠次は降り積もった雪を蹴り上げ、敵の照準を攪乱させようとする。

 しかし、向こうは暗視スコープでも装着しているのか、かわそうとする誠次の動きを読み、正確な照準で狙撃をしてくる。


「このままではお前も撃たれるか、゛捕食者イーター゛に喰われる……。私を置いて、逃げ――」

「茜さんを解放する鍵を渡してくれ! 全員でここから逃げる! 貴方もだ!」


 ゛捕食者イーター゛を前に人間を置いていく選択肢など、誠次の中にはなかった。


「……許せ」


 最初こそ戸惑っていた看守長は、すかさず右手を自分の腰に添え、拳銃を取り出す。誠次がぎょっとしたのもつかの間、男は拳銃を自分の頭の右に銃口を向けて添えた。


「っ! 《フロスト》」


 それを見た香織が、咄嗟に氷属性の魔法を発動し、男の右手を拳銃ごと、氷の結晶の中へ封じ込める。

 

「貴方が死ぬ必要はない! お姉ちゃんに謝ってもらいます!」


 香織は看守長を軽蔑した目線で睨んでから、再び防御魔法を発動し、二人を狙撃から守る。

 ゛捕食者イーター゛はぐったりしている看守の男を高々と持ち上げたまま、中心部の茜の方までゆっくりと向かっている。

 香織の防御魔法は本人の技術もあり強固であったが、それが崩されるのも時間の問題だ。


「これが、鍵だ……」


 瀕死の状態である看守長の男から、誠次は茜解放の為の鍵を受け取る。大量の鍵が輪っかに連なった、キーリングであった。

 全身でずきずきと痛みを感じる中、左頬から血を流す誠次は、改めて周囲を見渡す。


「レヴァテインがなければ、この状況を打破しようにも……!」


 いつの間にか、雪は止んでいた。

 それに気づいた誠次が天を見上げれば、ぶ厚い雲の狭間で、白く輝く月が覗いている。月光が降り注ぎ、誠次の全身を淡く濡らした。

 ――ワオーンッ!

 すると、どこからともなく、オオカミの遠吠えが聞こえる。


「――よくやったぜ、フェンリル!」


 使い魔に名前を付けているようだが、まだ名前を付けて間もないのか、若干言い辛そうだ。

 誰かの声の元、フェンリルと呼ばれた白い毛並みのオオカミは、雪と同化しそうな体躯を懸命に走らせ、誠次の目の前までやってくる。強靭そうな牙が覗くその口に、レヴァテインを咥えて。


「よく耐えました! 《プロト》!」


 風属性の魔法で急接近し、小柄な金髪の女性が香織の前に降り立ち、防御魔法を発動する。


「「《フォトンアロー》!」」


 隻眼の女性と同じく、風属性の魔法を使って急接近してきた二人の人物が同時に攻撃魔法を発動し、彼方からこちらを狙撃してくる狙撃手がいる地点を威嚇する。


「悪いな、遅くなっちまったっつーか」


 赤いバンダナの上の白い髪をぽりぽりとかき、三人の部下を率いる南雲ユエが誠次の横に立ち並ぶ。


「゛捕食者イーター゛が出現したんだ。特殊魔法治安維持組織シィスティムの規則に従って、人命救助活動だっつーの」

「これもクエスト、なんですか?」


 フェンリルからレヴァテインを受け取り、誠次が問いかける。フェンリルは尻尾をはたはたと揺らしながら、ユエの元へ寄り添っていた。


「最近のゲームは自由度高いしな。サブクエストってやつ?」


 私服姿のユエはにやと微笑むと、゛捕食者イーター゛に向け破壊魔法の魔法式を展開する。

 続いて後方からは、一台のバイクがフルスロットルのエンジン音を鳴らしながら、突っ込んで来るところであった。

 魔法で反動でもつけたのか、五メートル以上はあるメーデイアの塀を飛び越え、そのバイクは横になりながらもメーデイアの敷地内に着地する。乗っていたのは、二人組の男子だった。


「あーあ、にけつは感謝だけどバイク駄目になるぜこれ?」

「気にするな! またやまなっしーのバイトをして小遣いを貯めればいいだけの事だッ!」


 ヘルメットを装着したまま、二人の男子もまた誠次の元へ集合する。


「待たせたなあまっち。もう平気だ。あまっちもな?」

「待たせたな誠次少年ッ! 反撃開始だ! 俺はこんな大勢でわくわくしているぞ!」


 私服姿の夕島伸也ゆうじましんや兵頭賢吾ひょうどうけんごであった。


「雪降ってたのに、また随分とむさ苦しくなったね」

「仲間が、たくさん。いい、事」


 環菜かんな義雄よしおも攻撃魔法を放ち続けながら、誠次の元へ駆け寄る。


「通信が遮断されています。おそらく敵の妨害ですね。となれば、陣頭指揮を頼まなければいけません、天瀬くん」


 南雲澄佳なぐもすみかがユエを挟んで誠次の横に立ち、誠次を見上げて「お願いします」と頭を下げる。


「誠次くん……。みんなが、お姉ちゃんの為に……」


 胸に手を添える香織が、誠次のすぐ後ろまで歩み寄る。瞳には、薄っすらと涙を浮かべていた。


「そうか……。みんな特殊魔法治安維持組織シィスティムやヴィザリウス魔法学園でお世話になった人たちなんだ」


 誠次の言葉に、タイミングは別々だが、一同は揃って頷いていた。


「俺にも仲間がいてくれる……。目標は波沢茜さんの救出。全員、油断するな!」

「年下のクセに生意気だっつーの。らしいけどよ」

「オーライだぜ。これ以上奴らの好き勝手にはさせねーよ!」


 苦笑するユエも伸也も、やる気を出して魔法式を展開する。


「皆さん、本当に、ありがとうございます……!」

「気にするな香織生徒会長! これも元生徒会長のよしみだ!」

「随分と個性的な生徒会長さんですね……。ですが、茜さんは力を合わせて絶対に助けますよ!」


 頭を下げる香織の傍で張り切る兵頭に、澄佳もまた負けじと声を張り上げる。

 狙撃の心配はなくなり、目の前に立ち塞がるのは無数の゛捕食者イーター゛。誠次は七人全員の先頭に立ち、レヴァテインを振り払う。


「伸也先輩と兵頭先輩はメーデイア内部への侵攻を。ユエさんたちは゛捕食者イーター゛及び敵対者の足止めをそれぞれお願いします」


 直後、メーデイアの照明が一斉に墜とされる。どうやら、八ノ夜の方も上手くいったようだ。

 明かりは月光のみとなった闇の中、誠次は鋭く光るレヴァテインの刃の先を、香織に向ける。

 阿吽の呼吸でもって、香織は目をそっと閉じ、両手をレヴァテインに向けていた。


「俺と香織先輩は茜さんを救出し、進路と退路を斬りひらく! 香織先輩、俺に魔法ちからを貸してくれ!」


 白銀の世界の中で無数にうごめく黒い影に、白の斬撃がほとばしった。


挿絵(By みてみん)

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