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魔法世界の剣術士 上  作者: 相會応
プロローグ
1/211

1 ☆

題名横に☆マークが入っている個所は挿絵有りです。キャラクターの容姿や場面が分かりやすくなれば幸いです。(クオリティは商業レベルではなく、あくまで素人の趣味レベルの自作ものです。過度な期待はしないでください……)

挿絵は必ず最終段に挿入していますので、不必要な方は切り替わりのところでスクロールをお願いします。


※ただいま全編に渡り主に挿絵と細かい文のリメイク中です。消した旧挿絵はご要望があれば再び掲載します。

 ――憧れていたのだ、夜の世界に。少女を連れ戻すためとは言え、どこかで外に出れると言う期待感があった。いつか人が、再び自由に出歩ける日を。

 だが、この世界の夜は昔ほど人間に優しくはない。


 春の夜は、白い息を吐いてしまうほど寒かった。走り続けた身体からは、汗も大量に出てくる。

 おれは一体何をしているんだ? ……と思い直すも、躊躇ちゅうちょはしていられなかった。


「さっきの娘は、一体どこに……!?」


 誠次せいじは開け放たれていた正門から外へと出る。

 今までこう言った事例はなかったのか、学園敷地内の警備は極めて緩かった。


(夜って、こんなに暗いのか……?)


 あれほどうるさく感じた生徒の話し声も聞こえない。昼は豊かな緑色の景色を見せてくれた学園の中庭も外も、夜になってしまえばその姿を一変させていた。


「っ! 止まれ!」


 誠次は先ほどの少女を追いかけていた。ここは間違いなく都会だが、夜の周囲に人は誰もいない。店のシャッターは全て閉ざされ、広い国道を走る車さえ一台もいない。しんと静まり返った都会の夜にいるのは誠次と少女、たった二人だけだ。 


「学園に帰るぞ!」

「――え?」


 追いつけないとでも思っていたのか、少女が驚いている。

 誠次は少女の細い腕を、きっちりと掴んでいた。二人の現在地は、高層ビルに囲まれた無人のスクランブル交差点。そのど真ん中だった。 

 誠次は険しい表情で、少女の腕ををぐいと引っ張る。

 やがて、振り向いた少女と顔が合った途端、

 

「――どうして私の姿が見えるの?」


 抑揚の無い声で、少女に言われた。

 その声は、どこか挑発染みているなと誠次は感じた。


「……っ!」 


 それでも、誠次は我に返りつつ、

 

「見えてない方が変だ! 目の前を横切ったんだぞ!?」

「変なのはあなた。……私は《インビジブル》を使っているのに」


 今度は残念そうに、肩をすくめて言う少女。月光に照らされる表情は、冷淡な印象であって、同時に美しくもあった。


「それは……」


 少女の姿に思わず、動揺してしまった。

 だから誠次は、意識を少女の言葉に集中させる。

 ――《インビジブル》。

 それは確か、自身の身体と触れたモノを透明化させる、高位幻影魔法こういげんえいまほうの一種だ。それはとても、゛魔法学園に入学したて゛の女子生徒が扱える魔法では無いはずだ。


「どこでそんな魔法を……」


 しかし、今は考える時間も無い。

 咄嗟とっさに、誠次は首を横に振っていた。なぜなら、この世の夜の世界は、もはや奴らのモノだからだ。


「とにかく学園に戻るぞ! このままじゃ゛捕食者イーター゛に襲われる!」

「構わないわ! ゛捕食者イーター゛を倒すのが私の目的だから」


 夜空の下に、響いた少女の声。力強く、こちらを突き放す口調で。


「何言ってるんだ……?」 


 少女の発言の意図が、誠次はいまいち理解できず、動きを止めてしまった。 

 

「来た」


 少女が無愛想な無表情で、誠次の後ろを見ていた。

 ――いる……!?

 背筋が凍りついたとも思うほどの冷気に、誠次は思わず生唾を呑み込む。 

 少女につられるようにして、おもむろに振り向けば――ヤツがいた。


「あっ……ああ……!?」 


 視線の先で黒くうごめく影の姿。

 悲鳴混じりの、誠次の声。――思わず後ずさりしていた背中に装備していた漆黒の剣が、かちゃりと、冷たい金属の音を立てていた。


挿絵(By みてみん)

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