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写真部って何してるんですか?一緒に帰ったんですか?嫉妬してもいいですか?

「おーい。結城いる〜? 」


 写真部の誰の顔とも一致しない男子が、ドアを開けて部室を覗き込む。


「え?日下部くんならさっき帰っちゃったよ」


「え〜写真部電気ついてたからワンチャン…ぁ」


「どうした?」


 女子生徒の特徴的なウルフ髪が、首を捻る動きに合わせて揺れた。掴みどころのない目、だけども確実に、まっすぐ自分を見つめてくるその目に心を奪われた。


「っ…好きです!付き合ってください!」


「はあ…?」


 加賀崎織かがさきしき、一世一代の告白は見事、失敗に終わったのだった。


「ってなるかあ!!どうか!お名前だけでも!」


「名前?」


「はい!お名前!」


「私、七瀬。一色七瀬だよ」


 戸惑いながらも、優しく微笑み、返事をした彼女は、今まで出会ったどの女性よりも美しく見えた。織の顔はますます熱を帯びていく。


「お、俺は一年の加賀崎織ッス…名前だけでも、覚えといてくださ〜い!!」


 高鳴る鼓動を、走ることによる心拍数の上昇で誤魔化すために全力で廊下を駆ける。加賀崎織と名乗った少年は、嵐のように部室から去っていった。


「なんだったんだろ。加賀崎、加賀崎くんか…」


 △▼△▼


 私、瀬戸愛莉せとあいり。華のFJK。つまり高校一年生。私、実は恋する乙女なの。


 私ね、結城くんが好きなの。日下部結城。同じクラスの男の子。


 私ね、ほんとは写真部入れば良かったのかなって後悔してるの。だって、人付き合いの延長で入っちゃった吹奏楽部は思ったよりキツくって、不器用な私に楽器なんてできるはずないし。どうせ部活入るなら親友の陽夏がいる写真部の方が良かったかなって。それに、何より、結城くんがいるから。


 私ね、もう結城くんにゾッコンなの。別に、私は結城くんとそんなに仲良くないけど。ふとした瞬間の表情とか、何気ない会話で笑う時、なんだか悪戯っぽくて子供みたいなところとか。ちょっとダサい一面もあるけど、そんなところも全部含めて恋してて。


 私ね、陽夏のことずっと羨ましかったの。だって美人だし、かわいいし、勉強もできるし。なんでも器用にこなせて高嶺の花って感じ。でも、恋愛には無縁だった。誰が好き、だとかそんな話一回も出なくて。修学旅行の夜も、みんなが恋バナをしてる中ニコニコしながらそれを聞いているだけだった。だから、私が恋愛をする上で邪魔になると思ったことはなかった。


 私ね、今すごく怖いの。だって、もし、もしだよ? 結城くんが陽夏のこと好きになったりしたら、どうする?


 もし、陽夏が。陽夏が結城くんのこと好きになったりしたら…


 ───私、勝てる?


 △▼△▼


「陽夏さ、昨日結城くんと一緒に帰った?」


 見てたよ、私。陽夏のこと。羨ましいなーって、思って見てた。


「えっ、うん。帰ったよ」


 でもさ、陽夏のことだからただなんとなく帰ったってだけでしょ? なんの、意味もないでしょう?


「部活、長引くの珍しいね。下駄箱にいたら校門を出る二人が見えたからさ」


 引きつった作り笑いをする。私、今かわいいかな。結城くんに見られても、大丈夫かな。


「そういえば愛莉、日下部と同じクラスだったね。アルバム整理してて長引いちゃって。年に一回しかやらないから」


 結城くんと、一緒にやってたんだよね。羨ましいな。


「そっか…どう?部活では結城くんと結構仲良いの?」


 聞きたくない。なのに、好奇心が勝手に口から溢れでた。


「う、うん!初めてかも。こんなに仲良い男子がいるのって」


 やめてよ。好きになっちゃうじゃん、結城くんが。陽夏のこと。


「あはは。そっか、よかったね!陽夏」


 私の邪魔しないで。敵わない。私、陽夏に勝てるとこなんてなんもないから。


「それでね!昨日ね、日下部とアルバムを整理してた時にした話なんだけど、」


 聞きたくないよ。私の結城くんなのに。


「ごめん!ちょっとお手洗い行ってきていい? あとで聞かせて」


 逃げるように、違う。逃げてる。だって仕方ないじゃんか。部活が一緒で、絶対毎週接点があるとか、羨ましすぎるじゃん。今の私は、人間として陽夏に劣ってるだけじゃない。環境も、関係も、何もかも陽夏には及ばない。下を向きながら早歩きで逃げる。角を曲がろうとする私に、強い衝撃が襲いかかった。


「きゃっ!すみませ…」


「わ、ごめん」


 まるで運命の王子様みたいに私に手を差し伸べた彼は、


「結城、くん」


 夢みたい。なんかすごい偶然が起きて曲がり角で結城くんとぶつかったりしないかなって、何度も想像した。でも、いざ夢が現実になってしまうともっと欲が出る。私が好きでしょ? だったら、顔を赤らめて、照れて。なんで、そんなに平然としてるの? 結城くんが私を好きだなんて有り得ない話だ。でも、期待したいじゃん。思い込んで馬鹿になっていたかった。悪い? 夢見がちで、悪かった?


 気づけば、結城くんはもうどこにもいない。休み時間も終わっちゃいそうで、廊下にはほとんど人がいない。それでね、思ったの。とっくに分かってたこと。ああ、やっぱ私…


 ───好きだな、結城くんのこと。ってね。


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