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第51泳

 大輪のサンゴ礁の中でしか生きられないとしても、せっかく生んだ卵が孵化しないとしても、食べ物は豊富だし、身を隠せるところも多い。だからグリンはリムに聞いた。


「僕が大都市リュウキューウに行くあいだだけでも、リムは大輪のサンゴ礁で待つのは嫌かな?」




 リムが答える前に、厳しい目をしたままのハンゾーが割り込んだ。


「それは、あそこがどれくらい持つかによるねえ」




 グリンもリムは、ぞっとした。鱗が逆立つような感覚さえした。


 絵の具を撒き散らしたあの場所の温度は、墜落物がやってくる前の状態に戻ろうとしている。つまり、寒い海という姿に向かっているのだった。




「今すぐにどうこうというわけじゃ、ないと思うけどねえ」


 ハンゾーはため息をついてから、続けた。


「なにしろはじめてづくしの出来事だからねえ。温度が高くなったり低くなったり、だんだん不安定になってる、なんて話も聞いたし」




 豊かに見えたが、こうして聞くと不安定な場所である。その話を聞いて、マリンとシズルは大輪のサンゴ礁を推薦した自責もあって、大急ぎで飛尾を雇ってグリンとリムを連れ戻したのだ。




 驚くことに、大輪のサンゴ礁について熱心に研究していた学者は途中で研究を放り出して、北の海に行ってしまったらしい。


 長らく高温状態にあった北の海の温度が冷め、前進したところに大規模な遺物が見つかったので、その学者はそこに情熱が移ったのだ。




 ハンゾーは、かつて大輪のサンゴ礁を研究していた学者と、北の海の遺物調査で出会ったのだと言う。その学者を尊敬する心が、黒い瞳に明かりとなって表情をつけた。


「ナンデモミルっていう学者なんだけど、海藻に詳しいのさ。医者でもあるし。このあいだ会ったときは、大都市リュウキューウで本をしばらく執筆すると言っていたから、そこにいるんじゃないかねえ」




 真面目な顔で話を聞いていた者のうち、マリンがぱっと顔を明るくして言った。


「海藻に詳しいお医者様ですって! グリン、その方にお会いしてはどう?」




 大都市リュウキューウで、医者・ナンデモミルに会うことが決まった瞬間だった。

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