表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/82

第46泳

 芸術品のような姿をしたマリンはいつものハンモックに腰かけることもせず、前に差し出した両手に飛尾を乗せて、プニプニの質感をそれとなく味わっていた。

魅せられることには特別疎い飛尾だから、こうしてマリンに見つめられてもどうということもない。それどころかしっかりと見つめかえして、エヘンと得意気に営業を始めた。

「ピカピカ、たったひとつから!」

 料金の話をしつつ、飛尾の小さく凹んだ目にはマリンのまつ毛に光る、極小粒の宝石が映っていた。

 大粒の真珠で支払おうとするマリンに、飛尾は澄んだピンク色の輝きを放っているまつ毛の上の宝物を要求した。

「困ったわ。これはくっつけてあるから、簡単にはとれないのよ」

「そのピカピカが、良いで、ござい!」

 マリンは飛尾を小机の上に降ろし、ガラガラ声で繊細なものを欲しがる様子をなんだか可愛いと思いながら、まつ毛の宝石にそっと触れてみた。これは入念に接着したところだから、なおさらとれそうもない。


「そうね、同じものをあげるわ。それも、いくつかあげる。それで、速達で伝言してくれる?」

 シズルがその言葉を聞いて、別室からすばやく小袋を持ってきた。その中から三つのピンク色の「ピカピカ」が選びとられた。飛尾はがまぐちを大きく開けてカメレオンのようにすばやく舌を伸ばすと、宝石をペロリと飲み込んだ。


 ここで飛尾について少しだけ触れておくと、飛尾は何頭もいる。みんなが同じ「飛尾」で家族が多い。見た目は本当によく似ているが、並べてみると差異が分かる。


 マリンからの伝言を仰せつかった飛尾は、しっぽを左右にうねうねと動かして、魔球のように自在かつ高速で任務にあたった。

 本来なら、届け先が移動し続けるとあれば仕事の難易度も高い。飛尾はポコリと凹んだ耳の穴から、海水の振動をしっかりと気にしていた。

大輪のサンゴ礁を目指していくが、そこにグリンがいなければ、大都市まで超特急で向かうつもりであった。そうでなければ、お代を返しに戻らねばならない。


 疲れ知らずの体力である。飛尾はその特別な耳のおかげで、遠くの声も拾う。大きな魚に出会わないように、危険なものの視野に入らない程度の迂回ルートをとった。


 誰にとっても幸運なことに、グリンの小さな尾も猫背は、はやい移動に適していない。


飛尾は、大輪のサンゴ礁でグリンとリムを見つけたとき、仕事がずいぶん楽だと思った。

元気もまだまだあったから、うんと大声をがなりたてて宣伝してやるつもりでいたし、それで二人がびっくりした様子が最高のごちそうになった。


 しっぽをうねうね動かして、飛尾は人魚の集まる場所へ行く。

実は、腹に宝石がいくらか貯まると家族の元へ向かうのだが、まだまだお土産が足りないのである。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ