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穏やかな時間からの、不穏な知らせ(アレクセイ視点)1

 マリーツァと僕が、心も体も結ばれたのが数日前。

 結ばれた翌朝は、ただただ幸せを噛み締め──られるはずもなく。待ち構えていたアシュリーとエマの質問攻めに、余韻どころじゃなくなっていた。


 逃げ出したくともこればかりは正直に伝えないとならないわけで、「おかげさまで……」と報告すれば、ふたりして本気で感涙。25歳にもなって、「童貞卒業おめでとうございます」って祝われながら泣かれる身にもなってほしい。


 とはいえそこは騎士団長兼国王陛下補佐と、その補佐だ。マリーツァが帰国するにあたっての算段を始める手際の良さは、さすがの一言に尽きた。

 とくに今回はマリーツァのご両親へ、ぜひ彼女を伴侶にというお願いを持って帰国してもらうことになる。丁寧な挨拶文をしたため、国からの贈り物も旅の邪魔にならない程度を取り揃えた。


 許可をいただけたならすぐに嫁いでもらえるよう、支度金を送金する手はずも整えないとならないし、どのタイミングで民や各国へ宣言するかも考えないといけない。

 まあ、マリーツァは伴侶候補の女性であると、民たちは信じて疑ってもいないんだけどね。


 彼女もそこは理解してくれているから、今は自分からみんなに声をかけ話をするようになっていた。それは騎士団員だけでなく、城に勤める誰にでもだ。

 もともとマリーツァは、別け隔てなく挨拶してくれていた。それでも充分なのに、もっと自分を知ってもらう必要があると願われ許可を出し。


誰と話すかも任せアシュリーたちと見守っていたら、マリーツァは井戸端会議中の女性の輪へ迷うことなく突進して行ったものだから、アシュリーが「ふおおおおおっ!?」と変な叫び声を上げていた。


 マリーツァの性格を把握し始めていたとはいえ、せいぜい庭師や騎士団員と、挨拶の延長程度の会話だろうと彼は予想していたらしく。未来のお后様だろうとそれぐらいならいいかと許可を出したのに、まさかの世間話大好きな年配女性軍団へ真っ先に突っ込むとは! という焦りと驚きが、変な叫びとなって出てしまったとか。


 どう考えても「やばい! マリーちゃんもアレクと同じ、ひとりで平気でフラフラするタイプだ……!」と判明し頭を抱えてもいたけれど、こればかりは似た者夫婦だと思うしかないとエマに説得されていた。


 で、まあ、声をかけられたみんなも始めこそ恐れ多いと驚いていたのに、マリーツァの人柄に触れすぐに打ち解けていた。そうなったらなったで、ちょっと……だいぶ困るのは、みんながマリーツァを楽しませたいと、僕の失敗談を教え出したこと。


 食事の時間に「ひとりで真面目に考え事をしながら歩いていて、石につまずいてそのまま庭の池に飛び込んだって本当?」とか。「落ちていた袋を猫だと思ってそーっと近寄って、撫でようとしたのは?」とか、楽しげに聞いてくるんだからたまらない。


 でも、マリーツァは本当に嬉しそうで。知り合う前の僕を知れるのが嬉しくてと言ってくれるから、アシュリーとエマに、なるべく自由に過ごさせてあげてとは言ってるんだけどね。

 ただそのせいで一回、マリーツァがいないとエマが慌てふためいて探し回る事件が発生。一応すぐには見つかったものの、その場所が調理場の裏でみんなと一緒に芋の皮むきをしていたっていうんだから、らしいといえばらしく。


 聞けば、僕の執務室に花を飾ってあげたくて庭園へ摘みに行くと、それは伝えて移動していたら。女性陣がぞろぞろと歩いて行くのが気になって、つい後をつけてしまったのだとか。

 始まる芋の皮むきと井戸端会議も楽しそうで参加させてもらって、自分の居場所の伝言を頼むのをすっかり忘れたしまったと。


これにはさすがに、「一言もなく行き先を変更しないでいただきたい!」と、エマにしたたか怒られ珍しくしょんぼりしたのを僕からも注意した後は、慰めてあげたり。


 そんな、今までにはなかった時間も幸せで。

 ほんと、アシュリーの言うとおりだったなって。愛する人がいると、こんなにも癒やしを与えてもらえるんだなって、僕はしみじみと喜びを噛み締める日々を送っていた。


 そこに、暗く不穏な影が近づいているとも知らず――。

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