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第019話 まさかの家だよ!


 ミステリー映画を見終わった後、俺とみゆきちは映画館をあとにし、1階にある喫茶店に向かった。

 喫茶店に着くと、カフェオレを2つ買い、席に着いた。

 もちろん、いつものように並んで座り、筆談用のノートを取り出す。


 そして、映画の感想を筆談で語り合った。

 あそこはどう思ったとか、あそこが伏線だったよねーとか、あそこは予想を裏切る展開だったよねーとか、語りだしたら止まらなかった。

 というか、みゆきちがめっちゃ書く。

 正直、俺は圧倒されている。


【みゆきちって、ミステリー好きなんだねー】

【あ、ごめん。しゃべりすぎた?】

【全然。ただミステリー好きってイメージがなかったもんで】

【そうかな? 図書委員だよ】


 …………言われてみればそうだな。

 というか、俺も図書委員だったわ。


【本、読むの?】

【アバウトだねー(笑) 読むよー。それこそミステリーものもいっぱい持ってるし】


 ほえー。

 俺、漫画しか持ってねー。


【文字のやつ?】

【そらね(笑) いや、漫画も持ってるよ】


 みゆきちは文学少女だったようだ。


【なるほどねー】

【…………読む?(笑)】


 軽くバカにされてる気がする……

 いや、みゆきちが思っていると通り、活字はまったく読みませんけどね。


【俺が読んでもいいのかなー】

【いや、資格とかいらないから(笑) 読んでみたら面白いかもよ?】


 まあ、読んだことがないから面白いのか面白くないのかはわからんけども…………


【かねー。じゃあ、読んでみようかなー】


 どうせ帰宅部で暇だし、いい機会かもしれない。

 俺、図書委員だし…………


【良いと思う!】


 テンション高いなー。

 まあ、自分が好きなものを他人が興味を持つと嬉しいもんだしねー。

 俺も小学校の時に三島をバスケに誘い、ハマってくれて同じバスケ部に入った時は嬉しかった記憶がある。


【おすすめとかある? 俺、全然、わかんないんだけど…………出来たら図書館にあるやつね。お金もそんなにない】


 これはやっぱりバイトだなー。

 今後のデート代もだし、親からお金を何度もせびれない。


【本も安くないしねー】

【一冊で長く楽しめるから漫画よりかはいいんだろうけどねー】


 読んだことないから知らんが、漫画よりかは読むの時間がかかるだろう。


【だねー……うーん、おすすめかー…………】


 みゆきちは俺にその文章を見せるが、ノートを渡してはくれない。

 そのまま悩みだした。


 いや、そんなに悩まなくても…………

 これ、絶対に最後まで読まないといけない雰囲気だな……


【あのさ、これから時間ある?】


 長考の入っていたみゆきちが文章を書き、俺に渡してきた。


【あるよー。今日はこれ以外に予定は入れてないし】


 そもそも予定なんか滅多にないし、あったとしても、優先度はみゆきちとのデートが最優先だ。


【じゃあ、今から家においでよ。貸してあげるから】


 …………ん?


 俺は目をこすって再度、ノートを見る。


【じゃあ、今から家においでよ。貸してあげるから】


 あれれ?

 幻覚じゃないぞ?

 俺の理解があってるのならば、みゆきちの家に誘われてない?


【みゆきちの家?】


 俺は確認のため、聞いてみる。


【うん。家に本あるし、貸してあげようと思って…………迷惑だった?】


 とんでもありません!


【ううん。急だったからビックリしただけ、じゃあ、借りようかなー。お邪魔しようかなー】

【うん。おいでよー】


 マジか!?

 財布には、えーっと…………入ってる!

 いや、しゃべれないのにその展開にはならないか。

 しかし、みゆきちって実は俺の事が好きじゃない?

 家に招くってすごくない?


【じゃあ、これを飲んだら行こっかー】


 俺はそう書くと、机の上にあるカフェオレを一気飲みした。


【早いよー(笑)】


 隣からクスクスという笑い声が聞こえ、みゆきちも残っているカフェオレを一気に飲んだ。


「じゃあ、行こっか」


 みゆきちがそう言って、立ち上がったので俺も立ち上がった。


 俺達は喫茶店を出ると、そのままショッピングモールも出て、バスに乗り込んだ。

 バスの中でも引き続き、携帯で映画の感想を言い合っているが、内容があまり頭に入ってこない。

 だって、これからみゆきちの家に行くんだもん。


 今日までの間、妹と一緒にありとあらゆるデートのシミュレーションを行ってきた。

 だが、どのシミュレーションでもこの展開は予想にはしていなかった。

 そら、そうだ。


 俺がほぼ、うわの空で話をしていると、みゆきちの家の最寄りのバス停に到着した。

 ここのバス停は以前にも降りたことがある。

 みゆきちと一緒にファミレスに言った時に降りたバス停だ。


 俺達はバス停を降りると、みゆきちに案内され、家を目指した。


【あそこだよー】


 みゆきちが先に見えているマンションを指差し、教えてくれる。


【わー! あそこかー!】


 すごーい!


【何そのリアクション?(笑)】

【なんとなくねー】


 マジで来ちゃった!


 俺達はそのまま歩き、マンションに入った。

 そして、エレベーターに乗る。


【あ、今さらだけど、親がいるけど大丈夫?】


 いるのか…………

 まあ、土曜だしなー。


【大丈夫ー】


 というか、さすがのみゆきちも親がいなかったら呼んでないと思うな。

 そういう意味では親御さんに感謝しておこう。

 れっつ、ぽじてぃぶ、しんきんぐ!


 俺達はエレベーターで目的の階まで来ると、エレベーターから降り、そのまま進んで行く。


【ここだよー】


 みゆきちが扉の前まで来て、ジェスチャーで教えてくれた。


【ここかー。ちなみに聞くけど、アリアの家はどっち?】

【アリアの家は奥だよー。いるかなー? 呼ぶ?】

【いや、せっかくの休みの邪魔はしないでおこう】


 アリアには悪いが、さすがに遠慮してもらいたい。


【んー? それもそっかー。わかったー。ちょっと待っててね】


 みゆきちはそう言うと、家に入ってしまった。

 俺は扉の前で自分の格好が変じゃないか、確認をする。


 よーし、オッケー。

 まあ、みゆきちとデートだったから元々、変な格好はしてないけどね。


【おまたせー。どうぞー】


 みゆきちからメッセージが届いたと思ったら扉が少し開いた。

 俺は扉を開け、そのまま入っていく。


「お邪魔しまーす!」

「いらっしゃーい」


 出迎えてくれたのはみゆきちとどことなくみゆきちに似たおばさんだった。

 まず間違いなく、みゆきちのお母さんだろう。


「こんにちはー。春野さんと同じクラスの小鳥遊です。急にお邪魔してすみません」

「いえいえ、こちらこそ、急にミユキが誘ったようで。どうぞ、お入りください」

「はーい。お邪魔しまーす」


 俺は玄関に入り、靴を脱ぐと、ちゃんと靴をそろえ、上がった。


「あ、小鳥遊君、こっちね」

「う、うん…………」


 さすがに親の前で携帯でやり取りするのははばかれたので口頭でしゃべる。

 それだけで心がバクバクする。

 いや、そっちじゃなくて、みゆきちの家にいるからだな。

 今さらだけど、俺、大丈夫かな…………


 俺はみゆきちに案内され、とある部屋に入った。

 その部屋は女の子の部屋って感じで、きれいでかわいい感じだ。

 おそらく、というか、間違いなく、みゆきちの部屋だろう。


 部屋は机と本棚があり、本棚には本がいっぱいあった。

 これがミステリー小説かなーと思っていると、ベッドが目に入る。


 あかん!

 気分的に鼻血が出そう…………


【どうしたの?】


 みゆきちがメッセージアプリで聞いてくる。


【人の家だからねー。ちょっと緊張しちゃって】


 本当はベッドを見て、色々と想像しただけです。


【まあ、座ってよ】


 みゆきちはそう返事をすると、テーブルを取り出し、部屋の真ん中に置いた。

 そして、カバンからノートを取り出し、広げる。


【ちょっと待っててねー】


 みゆきちはノートにそう書くと、本棚の前に立ち、悩み始めた。

 俺に貸す小説を考えているのだろう。


 みゆきちが立ちながら悩み、俺がそのみゆきちを眺めていると、扉をノックする音が響いた。


「どうぞー」

「なんで小鳥遊君が言うの!?」


 あ、やべ。

 つい癖でふざけちゃった。

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[一言] いやいや、おうちにお呼ばれしちゃいましたか。みゆきちも攻めている。 しかしもちろん、母親とは話せるのね。やっぱり。みゆきちがどこかで「普通の女の子」にならないと、いけないのかな。今は、特別を…
[一言] おおう、緊張しすぎて逆に素が出てるのかな……? ミユキも普段通りの方が好きなはず……だし、いい傾向なのかな……?w
[一言] お互い攻撃を仕掛けているように見える
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