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5.旧交

「失礼いたします。アーデンロイド陛下がお見えです」


 メイドの声が掛かるとともにアーデンロイドが応接室に入ってくる。ライドは素早く起立すると、最敬礼を以ってアーデンロイドを迎えた。


「久しいな、アーデンロイド」

「お久しぶりです、リュート先生。招待に応じていただきありがとうございます」

「良い良い。弟子からのお招きだからな」


 しばらく見ない間に成長している弟子の姿には感慨深いものがある。


 アーデンロイドの面倒を見たのはだいたい20年前くらいか。もともとリュートは高弟たちとともに世界中を巡る旅をしていたのだ。元はリュートの一人旅であったが、気が付けば周りに人が集まっていた。旅を始めたのが今から100年ほど前。その間に多くの人や物に出会い、また同時に多くの別れを経験してきた。再開せぬまま寿命を迎えてしまった知人や弟子も少なくはない。


 旅先で野垂れ死ぬほど軟な弟子はいなかったが、都市や町を観光するにはやはり金がいる。とはいえ、一所にとどまって定職を持つつもりもなかったため、リュートと高弟たちの多くは冒険者に就いた。


 冒険者とは対魔物を主な仕事とする傭兵団体だ。魔物という脅威が身近にある以上、それらを相手取る職業も必要である。他にも素材の採取や商人の護衛など仕事は幅広い。


 冒険者ギルドは国家から独立した組織である。尤も、建前上は、というだけだが。人が運営する組織である以上、職員も自身の出身国は思い入れがあるし、置かれた地域との付き合いもある。それでも独立した組織という体を取っているのは、有事における冒険者同士の戦闘を避けるためだ。


 冒険者にはギルドカードが発行される。このギルドカードは身分証として広い国々で認められており、国境をまたぐ際にも使用できる。尤も、素行の悪い者はギルドカードが没収されることもあるし、五年に一度は更新しなければ効力を失う。また、冒険者ギルドの独立的立場を容認していない国家にはギルドも置かれず、そういった国ではギルドカードが使えない場合が多い。


 話が脱線したが、世界を渡り歩く旅の中で、未踏の地や僻地に赴く機会も多かったために、報酬の良い高難易度依頼をかなりの数達成してきた。そして気が付けばリュートを筆頭に冒険者になった高弟もみな、冒険者としては最高位であるSランクに至っていたのだった。そこまで積極的に活動したつもりはないが、なんせ冒険者歴約100年だ。本当に気が付けばランクが上がっていたといった感覚だ。


 20年前に偶然ウォンカード王国を訪れた時、当時国王だった先代の王ルーカスに召喚された。どうやら幼いころに冒険譚に惹かれていたが、王族という立場から冒険者になるのを諦めていたらしい。リュートたちを召喚した目的は、Sランク冒険者の生の冒険譚を聞きたいという純粋なものだった。


 普段なら王族や貴族からの召喚を、リュートは無視する。権力という不可視で曖昧な力を、さも自分の実力のように思い込んでいる輩が嫌いなのだ。ルーカス王の召喚に応じたのは本当に偶然、リュートの機嫌がすこぶる良かったからに過ぎない。


 ルーカスは国王でありながら冒険者相手に傲慢な振る舞いわせず、むしろリュートたちを大いに歓迎した。結果としてリュートもルーカスに悪い感情は抱かず、ついにはルーカスの子であるアーデンロイドとその弟ダヴァディロンの家庭教師を請け負うほどに親しくなった。


「ルーカスは元気にしているか?20年そこらでくたばるあいつではないだろう」

「はい。父は退位後、一代限りの大公として領地に戻られました。元気ではあるのですが…」

「なんだ?病気という雰囲気ではないな。あれか、剣を振り始めたとかか?」

「良くお分かりで。『ようやく儂の冒険が始まるわい』とかはしゃいでいたようで、母とローデリン妃にひどく叱責されていたと報告が上がってきましたよ」

「はっはっは、相変わらず奥方たちには頭が上がらんか」


 アーデンロイドは王位を継ぎ、良くも悪くも変わっただろうと思っていた。しかし少なくとも、こうして子弟として話している今は、アーデンロイドの根は昔と変わらないらしい。弟子が真っすぐに育つことは、師としての喜びのひとつだ。

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