4.雑談
【リュート視点】
式の後、王城を去ろうとしていたところをライドに呼び止められ、応接室へ案内された。先の場では意図して無言を貫いたが、何もアーデンロイドを嫌っている訳ではない。そのあたりもアーデンロイドなら理解しているはずだ。むしろ、こちらの方も個人的に話したいことが山ほどある。応接室で会おうというのなら、こちらにとっても渡りに船だ。
「間もなく陛下が参られます。今しばらくお待ちください」
「待て。客人に寂しく、茶をすすっとけとでもいうのか?お前も座りなさい」
役目は終わりとばかりに立ち去ろうとしているライドを呼び止めて、席に促す。
「私も暇ではないのですが…と言って折れてくれる先生ではありませんよね。分かりました、お相手させていただきます」
渋々といった様子で席に着くライドに反して、メイドは既にライドの分の紅茶を用意し始めている。仕事が早いのか、あるいは一対一で気まずくなるのを厭ったのか、さりげなくライドの逃げ道を塞いでいた。
「相変わらず固いな、お前は。部下に面倒がられるぞ、師団長殿」
「やめてくださいよ。気にしてるんですから」
久方ぶりの冗談を、苦笑いを浮かべながらも穏やかに受け流すライド。ついこの間まで子供だったのに、いつの間にか大人な対応を身に着けているものだ。ライドだけではない。気弱だったアーデンロイドも今では一国の王となった。エリックだって宰相になってから目つきに力が宿っていたし、やんちゃ坊のエドワードも近衛騎士として所作が精練されていた。聞けば近衛騎士長に就いたのだとか。
感慨深いものだが同時に、子供の成長は早いものだと、どこか寂しくもある。
「ところで高弟の方々はお元気ですか?今日はいらっしゃらないようですが…」
「ああ、相変わらず賑やかにしているぞ。あいつら、無駄に長命だからな」
「無駄にって…」
小さくツッコミを入れるライド。だが、こんな軽口をたたいたって気にしないくらいには、高弟たちとの付き合いは長い。
「今はほとんど帰郷しているから近くにはいないが、アカネとルシャーロは私に付いて着ている。今頃、王都の探索でもしてるんじゃないか?」
「アカネ殿が野放しに…。いや、ルシャーロ殿も一緒なら心配いりませんよね」
30以上も年下の弟弟子に心配される姉弟子。アカネにもきちんと伝えておこう。…いや、ライドが殺されかねないからやめておこう。
「そうだった。リゲルのやつだがな」
「リゲル殿ですか?…ああ、彼は高弟で唯一の人間でしたからね。私がお会いした時もご高齢でしたし、やはり…」
「いや、元気にはしている。しているんだが、お前が会った時とはだいぶ雰囲気が変わっているというか、今はア…。いや、やめておこう。直接会わせた方が面白そうだ」
「?一体何が…」
「失礼いたします。アーデンロイド陛下がお見えです」
ちょうどライドが問い詰めようとしたところで、ノックの音とともにメイドの声が掛かった。