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s8.君から奪い、君に捧ぐ

「今から何をするかわかるか?」


 私がこれを言うときは確実にクロに罰を与える時だろう。


「いえ、わかりませんけど……」


「君に罰を与えようと思う」


 クロがまたか……と思っているようだが、まただ。

 彼女が反応ほどに嫌がってないないことを私は知っている。


「何かサラ様のご意向に沿わないようなことしましたか?」


 今日の彼女は大人しく罰を受ける気がないようだ。


「私に勝っただろ」


「それはサラ様のご命令でしたので」


「それでも私が悔しい思いをした。私がクロに罰を与えるのを楽しみにしていた。これだけで君が罰を受ける理由には十分ではないか?」


 自分でもなかなか理不尽なことを言っている自覚はあるが、たまには主人らしくしてもいいだろう。


「……かしこまりました」


 クロは私が折れないと察したらしく、諦めた。


「それ昨日の夜、また僕と言っていたしな」


 彼女が理不尽でも罰を受け入れてくれることを確認したところで、一応理不尽でもない理由を伝える。一人称を強制するのが本当に理不尽でないのかどうかは議論の余地があるかもしれないが。


「本日は何をすればいいのでしょうか?」


「とりあえず脱げ」


「…………」


 彼女が停止した。

 脱げという命令は初めてではないが、この前と違って明かりがあるためよく見えてしまう。

 彼女は恥ずかしがりながらも、そこまで嫌がることなく制服を脱いでくれる。


 やっぱりこの時のクロはとても可愛い。本当に可愛い。世界一可愛い。何故、こんな可愛い子が私の奴隷なのだろうか。

 頬を赤く染めてわかりやすく恥ずかしがっているのに、他者に見られながら服を脱ぐという非日常的な行為をそこそこ嬉しそうに行っているのだから。


「これでよろしいでしょうか?」


 流石に裸を晒す勇気はないようで、下着姿で私に確認を取ってくる。


「まぁいいだろう」


 私からの許可を得て、彼女は服を脱ぐ手を止める。

 本音を言えば、見てみたいという気持ちもあるが、それは無理矢理命令として見るものではないと思っている。

 自分でも変なところだけ律儀だと思うが、こういう性分に育ってしまったのだから仕方ない。


「何をされても直立不動の姿勢をとっていろ」


 彼女に動かないように指示を出す。


 ちょん。


「ひっ」


 私がクロの脇腹に指先で触れると、彼女が変な声を出す。


「そのまま動くなよ」


 そのまま私はお腹で円を描くように指を動かし続ける。くすぐったいのか、恥ずかしいのかわからないが、クロが動かないようにと必死に我慢しているのは可愛い。


「君のお腹はとても綺麗だな」


 シミ一つなくすべすべな肌を褒めるつもりが、お腹を褒めることになってしまった。

 別に構わないか。


「……あっ、りがと……うごさまあす」


「クロはすごい声を出すな……」


 クロがなにかイケナイことをしているかのような声を出す。そんな声を出されてしまうと私の中でも何かが燃え始めてしまう。

 そのため、指を止めることができなくなる。


「ふぁっ……」


「…………」


「ひゃぁ……」


「…………」


 私は喋ることも忘れて彼女のお腹を触り続けていた。

 触れるたびに彼女が変な声を出して、身体がピクピクと動くのが楽しくて、とても愛おしかったのだ。

 つい夢中になってしまったが、もう少し彼女に構ってあげればよかったと後悔する。


「前戯はこのくらいでいいか」


「ぜんぎ……?」


 今のでクロは結構疲れてしまったようだ。

 私も想定外にやりすぎたとは思っているが、今日はこれだけで終わるわけにはいかない。


「失礼、準備? 前哨戦? と言えばいいのだろうか。今日やりたかったことはこれではない」


「一体何が今日のメインなのでしょうか?」


「私の足にキスをしてもらう」


 彼女にしてもらいたいことはそれこそ無限にあるのだが、あまりいきなりに言っても困ってしまうだろうから、一つずつこなしていこう。



「キス……ですか?」


「足の甲にだ」


 足にキスというのは隷属の証だ。

 今更、それを嫌がる彼女ではないと思っていたが、なかなか動かない。

 まさかと思い、彼女に尋ねる。


「もしかして、クロはキスの経験がないのか?」


「……お恥ずかしながら、覚えている限りでは」


「……なるほど」


 そうか、そうか、クロはキスをしたことがないのか。

 今の身体ではないのは分かっていたが、男であった時もキスをしたことがないとは思っていなかった。

 とても嬉しい。

 しかも彼女のファーストキスの決定権は私にあるのだ。

 こんなにも世の中うまくいっていいのだろうかと思うほどだ。


「少し目を瞑っていろ」


「わかりました」


 彼女がファーストキスだと分かった瞬間に、彼女のファーストキスは私の唇であってほしいと思った。

 本当であれば取っておいてもよかった。今度にしてもよかったのだ。

 けれど、私は今すぐにしたかった。

 これから学校生活が始まる。

 クロであれば自分の身を守るくらい容易いことだろうが、もしかしたら何かの間違えで彼女の唇を奪おうとするような不埒な輩がいるかもしれない。

 万が一のためにも、ここでファーストキスを貰いたいと思うと、私の唇は彼女に吸い寄せられていた。

 そして、その距離がゼロになる。


「っ!!」


 触れた瞬間、私は顔を離したが、すぐに彼女が目を開いてしまう。


「目を瞑っていろと言っただろう」


「で、ですが」


 クロは今の状況にとても困惑している様子だ。そんな彼女を見ているのも面白い。


「ですがも何もない。私の命令にはきちんと従え」


「い、今のは?」


「私が君のファーストキスを奪ってあげただけだ。流石に最初のキスが足というのも可哀想だろう」


 私はなんでもないことのように答えるが、内心バクバクして仕方なかった。

 自分のドキドキがバレないように努めて答える。

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