s8.想うからこその
久しぶりの1時台更新です
「……んっ」
目を覚ますと、目私やレアとは違う愛嬌のある顔をした女の子が目の前にいた。
「おはようございます」
「……おはよう」
正直、身体からまだ疲れが取れきっておらず、まだまだ寝ていられそうだ。
「身体の調子はどうですか?」
「問題ない」
彼女は私のことを心配してくれる。
私はアデーレに勝ったんだよな?
勝ち名乗りが聞こえた気がしたが、意識も朦朧としていたため記憶が定かではない。
「いかがなさいましたか?」
「あぁ……」
もし、負けていたらと思うと怖かったが、結果を確認しないわけにもいかなかった。
「私は……勝ったんだよな?」
クロは少し間を置いて私の質問に答えた。
「覚えて……いらっしゃらないんですね」
彼女を見て、私が勝っていたことを理解した。けれど、茶番に付き合うのもいいだろう。
「え……」
できる限り、ショックを受けたような表情を作る。あまり演技に自信はないのだが、クロのことは騙せているようだ。
「…………」
「…………」
気まずい沈黙が二人の間に流れる。
沈黙を先に破ったのはクロよ方だった。
「サラさ」
「少し一人にしてくれないか?」
しかし、私は彼の言葉を遮って、弱音を吐く。
可能な限り辛そうな表情をして。
少し悪い気はするが、私を騙そうとして罰だと思えば躊躇はない。
「すみません、サラ様」
「……あとではダメか?」
「サラ様はアデーレに勝ってます!」
クロの方が先に耐えられなくなったらしい。
私の渾身の演技の勝利である。
「…………」
「申し訳ありませんでした」
彼女は私の前で再び土下座を姿を晒す。
「…………」
彼女の不安を煽るためにあえて何も言わない。
しばらくはこの状況に怯えているクロが可愛いくて楽しかったのだが、流石に少し経つと可哀想にもなってきてしまった。
「知っていたさ」
「え?」
クロが頭を上げる。
「私がアデーレに勝っていたことはな」
「そ、そうだったんですか」
「あぁ」
彼女は私が覚えていたのだと思っているのだろう。本当に忘れていてクロを見たことによって思い出したのだが、わざわざ説明するほどのことではない。
「……それは良かったです」
「あぁ、とても良かった」
私は悪い笑顔をしている気がする。
「だが、君が主人である私に嘘をついた事実は変わらないな?」
「……はい、その通りです」
「じゃあ、罰を受けてもらおうか」
私は丁度いい理由ができたと思っていた。
「さて、今日は何をしようか」
ベッドに腰掛けると、私は今から何をしようかと妄想を膨らませる。やりたいことはたくさんあるが、今日は何にしようか。
「可能でれば優しくしていただけると嬉しいのですが」
最近少し生意気な彼女が口を挟んでんくる。
「今の君に意見する権利があると思うのか?」
「……すみません」
怒っているわけではないが、彼女の提案を受け入れる気もない。
「とりあえずこの前みたいにもっとこっちに寄って、頭を下げろ」
私は靴を脱ぎながら命令した。
「はい」
彼女は私の前で再び土下座をする。その頭を足で踏みつける。
「やはりこれは楽しいな」
なんと言葉にすればいいのか分からないが、とても楽しい。あれだけ強いはずのクロを完全に服従させているということに心が昂る。
「最近、君は自分の立場を忘れているのではないか?」
「……申し訳ありません」
彼女が楽しそうに生活してくれていることに私は満足していたのだが、彼女をいじめるためにそんなことを言ってみる。
「別にアデーレたちにはどんな態度を取っても構わないし、家族に対しても別に私は気にしない。ただ、私のことだけを第一に考えろ」
クロがアデーレやパオラと仲良くしてるのはいいことだと思うが、私のことを第一に優先するように念を押しておく。
「はい、かしこまりました」
「……まぁいいだろう」
文句ありそうに言うが、特に不満はない。
「それでは罰を発表する」
彼女の頭の上に乗っけていた足をどける。
「はい」
「今からクロのお尻を叩こうと思う」
「え」
尻叩き。幼い子供が躾けられる時にされるような罰だ。
間違ってもクロのような成長した女の子が受ける罰ではない。
けれど、私はそんな罰だからこそ彼女にしてみたかった。
「何か文句があるのか?」
「いえ、ございません」
クロはえぇ……みたいな顔をしていたが、これ以上反抗してくることはなかった。
「なら早く私の膝の上に腹這いになれ」
自分の膝をポンポンと叩いて、彼女を急かす。
「かしこまりました」
彼女は指示通り私はの膝の上に腹這いになる。が、それだけだ。
「それでどうするつもりなんだ?」
私は彼女に準備を促す。
「どういうことでしょうか?」
「それでは叩けないじゃないか」
クロは少し察しが悪いところがある。そこも可愛いのだが。
「申し訳ありません」
そう言うと彼女はスカートを捲り上げる。
「はぁ」
態とらしくため息をつく。
「どうされましたか?」
「君は私が尻を叩くというのにパンツを履いたままなのか?」
「…………」
彼女の反応が鈍い。流石にパンツを下ろすことには抵抗があるのだろう。
「私にパンツを叩かせる気なのか?」
しかし、私はそれを許すつもりはない。
「……わかりました」
彼女は諦めた様子でパンツを下へとずらす。
体勢的にクロの顔が見れないのが残念だと思っていたら、彼女の方からこちらの様子を伺ってきてくれた。
頬を少し赤く染め、羞恥を感じている様子はこれ以上ないくらい愛おしい。
「それでは十回叩くから、数えておくんだぞ」
そんな彼女に私は罰を始める。
ブクマ、評価ありがとうございます。




