40.その結果
これまでにないくらい大幅に遅れた夜更新です。
こんな時間ですが、なんとしても1日2回更新を守りたいので投稿します。
明日も遅れる可能性が高いですすみません。
そして、少し話が動きます。
「まぁこんなものだろう」
なんと、サラ様は配られた手札を誰とも交換することなくすべて捨てることに成功していた。
「え、なんですのそれ」
「すごいです、サラ様」
「…………」
先程まで饒舌だったパオラさんも、あまりのことに言葉をなくしている。
「それでは私はこれをもらうぞ」
そう言って一番大きく取り分けられたものを取っていく。
「まぁ気を取り直して始めましょう」
パオラさんの声で仕切り直され三人で始める。
「最初にアデーレ様が私のを引いていいですよ」
「それでは早速私から」
そう言って、アデーレはパオラさんから一枚引いていく。
アデーレは喜んでいるけど、ババ抜きって最初に引く人が不利なのでは……?
パオラさんは表情ひとつ変えず、進めていく。
淡々とアデーレを不利にしていくのこわい。
しばらく続けているとパオラさんが上がった。
「それでは私はこれをもらいます」
当然、二番目に大きいものを取っていく。
「むぅ〜、負けませんわよクロ!」
「あ、はい」
正直アデーレとパオラさんへのお土産なので僕は小さいやつでもよかったのだけれど、彼女がとてもやる気に溢れているのでそれに付き合う。
「さぁ次はクロの番ですわよ」
そう言って彼女は二枚のトランプを見せてくる。
僕が右のカードを取ろうとすると、彼女の表情がパァっと明るいものになり、逆に左のカードを取ろうとすると絶望的な顔になる。
こんなことがあるのかとびっくりするほどわかりやすい。
負けたいわけではないが、別にどうしても多く食べたいわけではない。
譲ってあげることを決めた僕は左のカード引いた。
「なんでですの〜」
勝利した僕は小さい方のケーキを取る。
しかし、アデーレはそれが不服なようだった。
「情けはいりませんわよ」
「パオラさんの料理でお腹いっぱいになってしまったので、アデーレが食べてください」
「それなら仕方ありませんわね」
彼女はそれ以上は何も言わずにお皿を取る。
「クロは甘いな」
サラ様は全てを分かっていたようで僕にそう言ってきた。
「私の分もいるか?」
彼女は気を遣って私に尋ねてくれるが、僕は遠慮する。
「いえ、自分の分だけで大丈夫です」
「そう言うな。私もこの量は食べきれない」
やっぱり僕の主人は優しい。
「だったらなんで一番大きいのを取るんですの!?」
「私が一位だったんだ。文句を言われる筋合いはない」
彼女は毅然とした態度で告げる。
「最下位のアデーレ様に発言権なんてないんですから黙っててください」
「パオラはわたくしに対して辛辣すぎますわ」
「せっかくなので私は紅茶を入れてきますね」
「パオラぁ〜」
パオラさんが紅茶を淹れて戻ってきてくれてから、僕たちはケーキを食べ始めた。
「魔法学校ってここ以外にもあるんですか?」
僕は前から疑問に思っていたことを尋ねる。
「ダンピールの国にもありますわ」
アデーレが僕の質問に答えてくれる。
「ダンピールですか?」
「ダンピールを知らないのですか?」
アデーレは僕の方に聞き返してきた後に、サラ様の方を見る。
「クロは訳あってこの世界に疎くてな。よければ説明してやってくれ」
「しょうがないですわね、わたくしが説明してあげますわ」
アデーレは全くしょうがないという感じではなく、嬉々としてそれに応える。
「ダンピールとは知能と魔法能力が高く、吸血鬼を狩るものですわ」
「吸血鬼を狩るもの……」
なんかいきなり物騒な話になってきた。
「まぁもうこの世界に吸血鬼なんていないのですけれど」
「そうなんですか、よかったです」
「争いがないという意味ではいいですけれど、二つの種族を滅ぼしたということを考えると物騒な種族ではありますわね」
「他にも滅ぼした種族があるんですか?」
「ええ」
「それはなんという種族だったんでしょうか?」
「……人間ですわ」
「…………」
今の僕の頭の中には全くその考えはなかった。けれど、エルフの国での反応を見る限り、人間が滅んでいたとしても納得できる。
別にこの世界に知り合いがいたというわけではない。しかし、自分の種族が滅んでいるという情報は衝撃的だった。
「どうかしたのですか?」
「いえ、なんでもありません」
僕は平静を装う。人間だということをバレてはいけないとサラ様にもアガタさんにも念を押されていたからだ。
けれど、興味が勝ってしまった。
「どうして人間は滅ぼされたのでしょうか?」
「……本当に何も知らないんですのね」
「申し訳ありません」
「人間は科学という力を使い、他の種族を屈服させようとしていました。その力は強大で、詳細は省きますが彼らに容赦はなく、多くの種族が滅ぼされてしまいました。ヴァンパイアもそのひとつです。その事態を重く受け止めた残った種族は協力してこれを倒そうとしたのです」
「…………」
「結果、人間の国を滅ぼすことができましたが、人間のしたことは大きな被害を残しており、恨むものも多くいました。そして、人間とヴァンパイアの血を引くダンピールが自分たちに遺恨を残さないことを条件に人間を滅ぼすという汚れ仕事を請け負ったのです」
「ダンピールは人間とヴァンパイアの間に生まれた種族だったんですね」
「そういうことです」
ダンピールという種族を恨む気持ちはない。むしろ、会ってみたいと思うくらいであったが、やはり人間がいないということへの言葉にできない喪失感があった。
「アデーレは人間についてどう思ってるんですか?」
僕はこの質問をしたことを後悔する。
「彼らに魔法の才能はなかったと言いますけれど、仮にあったとしても彼らだけは許されてはいけないと思っております。それだけ彼らの行いは容赦がなく残虐非道でした」
彼女は一呼吸おいて続けた。
「ですから、人間は滅んで当然だったと思っております」