38.僕の主人が人気になった日
更新遅くなりました。
明日かなり忙しく、もしかしたら昼更新ないかもしれません。
「ということでアデーレに誘われました」
事を終えた僕は服を直して、サラ様に食事の誘いについてお話ししました。
「せっかくだからご馳走になろう」
迷う事なく即決されます。
「かしこまりました、もう出発されますか?」
「時間的には大丈夫なのか?」
時間には余裕があったはずだが、想定外のことで時間がかかったため、ちょうど良い時間になっていた。
「はい、今から準備をすればちょうど良いと思います。ほどよく時間が潰せましたので」
僕はこれ見よがしにお尻をさするが、彼女は知らん顔をしている。
「じゃあ準備が出来次第、出発しようか」
それ以上僕にはアピールすることができない。
「かしこまりました」
今日は久しぶりにきちんとしたメイクをしよう。
最近は簡易的なもので済ませてしまっていたが、せっかくのお出かけだからたまには気合を入れてメイクするのもいいだろう。
まずはサラ様からだ。
「サラ様、こちらにお掛けください」
彼女をドレッサーのチェアへと誘導する。
「え、いやだ。私はメイクなんていい」
しかし、彼女はこれを嫌がった。
今まで彼女は自分で簡単なメイクはしていたはずだ。人にやられるのは嫌という事だろうか。
「ご自分でやられますか?」
「私はいい」
しかし、彼女はそれも拒否する。
「どうしてですか?」
「逆にどうして私がメイクをするんだ?」
「その方が綺麗になれるからです」
メイクをすることに見た目を良くする以外に何かあるのだろうか。
「もしかしてクロは私がすっぴんだと見ていられない顔だとでも言うのか?」
「そんなことはありません! サラ様はとてもお可愛いです! サラ様より美しいものはこの世にはありません!」
「あ、あぁ。ありがとう」
聞いてきたはずのサラ様が戸惑っているのを見て、自分が彼女の質問に対してかなり大きな反応を見せてしまったことに気づく。
少しやってしまったと思うが、本心ではあったため後悔はない。
「だったら私がメイクする必要性はあるのか?」
彼女も照れ臭かったのか、それ以上そのことには触れずに話題を元に戻してくる。
必要性と言われても、僕も今まではメイクなんかせずに生きてきたのだ。わかるわけはないが、アガタさんに言われた事をそのまま伝えることにする。
「メイクは礼儀だからです」
「礼儀だと?」
「はい、会う相手に対してちゃんと準備をしてますよというアピールになります」
「それ、アガタの受け売りじゃないのか?」
「……はい」
流石はサラ様、鋭いです。
「今更、アデーレにそんな事をする必要があるのか?」
「アデーレにあるかはわかりませんが、他にの方も食事の席にいらっしゃるかもしれません。その時にエルフの国の姫として恥ずかしくないようにしていただきたいのです」
そこまで言うと彼女は渋々といった様子で言った。
「はぁ……わかった。君がそこまで言うのならばメイクをされる事を甘んじて受け入れよう。そのかわり、君が全部やるんだぞ?」
「はい! かしこまりました!」
自分以外にメイクするというのは初めてだったので、ただでさえ美しいサラ様をどこまで美しくできるかということでやる気に満ち溢れていた。
「どうでしょうか?」
「いいじゃないか」
サラ様のメイクが終わり、本人に確認してもらうとお褒めの言葉を頂けた。
「ありがとうございます」
「これからは毎朝私のメイクも君がやってくれないか?」
彼女から思ってもいなかった相談をされる。
「いいのですか?」
僕としては願ったり叶ったりだ。自分のメイクをするのも最近楽しくなってきたが、やはり美少女のメイクの楽しさは別格だ。
「自分でやるのは面倒だからな」
「ありがとうございます!」
その後、自分のメイクも終える。
「お待たせいたしました」
やはり自分の方がやりやすいのか、僕のメイクは彼女のメイクの半分くらいの時間で終わった。
「クロも十分可愛いぞ」
唐突に彼女に褒められた。
今までもサラ様が可愛いと褒めてくれることはあった。
けれど、僕の中で何かが違った。
ただ、嬉しいだけじゃない。
何が変わってしまったんだろうか。
いつもはすぐに出てくる感謝の言葉が、なかなか口から出てこなかった。
「……あ、ありがとうございます」
僕はどうしてしまったんだろうか。
準備を終えた僕たちはアデーレの住むビルへと向かって街を歩く。
僕は一歩後ろを歩こうとするが、サラ様は隣を歩けと促してくる。
今日はトーナメントで盛り上がったからか、魔法学校の制服もチラホラと見かける。
僕たちも制服を着ているから周りからは学生がお出かけしてるように見えるのだろうか、いや、学生がお出かけしているだけなのは確かであるが。
「あ、もしかしてサラ様とクロさんですか?」
「そうですけど」
知らない黄色い髪をした女の子に話しかけられる。
彼女の髪はサラ様のブロンドよりかなり黄色が明るい。
今更ながら、この国は本当に髪の色がカラフルだ。未だに目が慣れていない気がする。
「やっぱりそうですよね。噂に聞いたんですけど、お二人って主人とメイドって本当ですか?」
「ええ……」
特に隠しているわけではないが、どこでバレたのだろうかということは気になる。
「主従二人で決勝戦なんて凄いですね! 私、アデーレ様を応援してたんですけど、今日の試合を見てサラ様のファンになってしまいました!」
あの試合を見たらサラ様、アデーレどちらの虜にもなりかねないのは深く共感できる。
「ありがとう」
「よかったら握手してくれませんか?」
「別に構わないが、今後も学校で会うことはあると思うぞ?」
そう言ってサラ様はその子と握手する。
「ありがとうございます! お二人とも明日頑張ってください!」
彼女は握手を終えると早々に立ち去ってしまう。
主人の人望が厚くなるのはいいことだ。
そんなこと分かってはいるはずなのに、サラ様が今の子と握手しているのを見て何故かスッキリしなかったのだった。
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