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a3.舐めプして負けるほど恥ずかしいことはありませんわ

すみませんまた遅くなりました

「すみません、情けないところをお見せしました」


 パオラがわたくしよ腕の中で泣いてくれていたのは一分もなかった気がします。


「もう大丈夫ですの?」


「はい、ありがとうございました」


 既にパオラはいつもの様子に戻っておりました。


「それならいいですわ、あなたも早くお行きなさい」


 先ほどまでパオラと試合をしていたクロはもうステージから離れている。


「かしこまりました」


 そう言って、クロと同じ方向へと向かって歩き出します。

 しかし、すぐに私の方へと振り返ってきました。


「一つだけよろしいでしょうか?」


「なんですの?」


「私にアデーレ様の輝くところを見せてください」


「……えぇ、もちろんですわ」


 わたくしが昔約束した私が輝くところを一番傍で見せるという約束。

 かならはず果たしてみせますわ。



 サラのことを決して馬鹿にしているわけではないが、わたくしが負ける可能性はほぼゼロだと考えております。

 クロより燃費の良さそうな魔法の使い方といえば聞こえはいいですが、逆に言えば魔力量に自信がないことが見て取れてしまいました。

 しかし、確実にわたくしとクロと彼女がこの学年のトップスリーとなるでしょう。

 きっと今後も試合をする機会はあるはずですから、彼女の本気を見てみたかった。いえ、本当はわたくしと張り合ってくださる方であるのか確かめたかったのでしょう。


 そのために、彼女の初撃を邪魔せずに発動まで待ちました。

 彼女は私の期待以上の魔法を披露してくれました。


「それは、なんですの……」


 十メートルは超えているであろう、巨大な龍。とても彼女が発動可能な魔法ではなかった。


「君なら死にはしないだろう?」


 彼女が腕を振り下ろすと同時に、巨大な土の龍がわたくしへと迫ってきます。

 時間をかけることにより、本来の放出量から大きく離れた規模の魔法を放つことができる技術。

 わたくしにはできませんし、できる者をわたくしは知りません。彼女の技術面での高さには本当に驚かされます。

 けれど、魔力量と同じように放出量もわたくしのレベルで無いことを理解しました。

 時間を与えなければこれだけの魔法を放たれることはないと。もう今のような彼女を舐めた真似はしないと決めました。


「はぁぁぁぁぁぁあああああ」


 わたくしの全力で彼女の魔法に立ち向かいます。

 全力であるのになかなか燃えてくれませんし、彼女の魔法の勢いは衰えません。

 それでも相手を舐めたような真似をしてそのまま負けたりなんて許されませんし、一生噂されることになるでしょう。

 しかし、わたくしの全力が僅かに彼女の全力を上回ります。

 そして、彼女の土の龍を全て灰にすることに成功しました。



 こちらもかなり消耗させられましたが、サラの消耗は私の比ではなさそうでした。


「正直に言ってあなたのことを低く見積もっていましたわ」


 わたくしが灰の中から登場したことにより会場全体が歓声に包まれる。この歓声が全て自分に向けられていると思うと気持ちがいい。


「時間をかけて魔法を発動することで少ない放出量を補うことができるとは……、いえ、あなたの場合は放出量も少なくはありませんわね」


 土の塊が飛ばされてくるが、大した魔法ではない。私の炎ですべて灰へと変える。

 わたくしは勝ちを確信しました。


「残念ながら先程の一撃でもう勝負はつきましたわ」


 彼女は力を使い果たし、満身創痍であると。

 しかし、勝ちの喜びと同じくらいにこのレベルの魔法を扱える方と今後も一緒に生活できることが嬉しくて仕方ありませんでした。

 そのせいでわたくしはだいぶ饒舌になり、話をしてしまいました。


「精霊以外であなたほど魔法の扱いに長けている者はいないでしょう。いえ、精霊であってもあなたに勝る者は片手で数えるほどしかいません。きっとわたくしでなければ先程の魔法を防ぐことはできなかったでしょう。流石はエルフの国の天才と呼ばれただけはありますわね。これからあなたやクロのような方々との学校生活は楽しみで仕方ありませんわ」


 サラがジリジリと後ろに下がっていくのを少しずつ追い詰めていく。


「おそらく、わたくしがクロの魔法からパオラを守るために放った魔法の威力から先程の魔法でいけると踏んだのでしょう。ですが、わたくしがクロの魔法に対抗した時は発動が急であったり、移動しながらであったために最大威力というわけではありませんでしたの。もちろんあの時の本気ではありましたが」


 調子に乗ったわたくしはいらないことまで口に出してしまいました。それでも今から勝負がひっくり返るようなことはありませんけど。


「流石にあの時から騙されていたのかと思ってたけどそうじゃなくて安心したよ」


 やっと彼女が返事をしてくれました。

 今の私はそれだけで心躍るほどに機嫌がいいのです。


「流石にクロのさっきの魔法は危なかったですからね」


 次の試合、彼女と戦うのも今から楽しみです。

 おそらく、この試合とは真逆でわたくしがどうやって相手の虚をつくかということになるでしょう。


「さて、長々とお話ししてしまいましたが降参してくださりませんか?」


「まだ負けてないのに?」


 確かにまだあなたは動けますが、誰が見てももうわたくしの勝ちは確定的でしょう。


「往生際が悪いんですのね」


「君だってなかなかのものだと思うが」


 耳が痛いことを言われてしまいましたわ。

 私もなかなか諦めが悪いことは自覚しております。それが悪いことだとも思っていないのですが。


「まぁ、否定はできませんわね」


 では、どうやって彼女に負けを認めさせましょうか。

 それを想像するとなかなかに楽しそうでした。

ブクマ、評価ありがとうございます



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― 新着の感想 ―
[良い点] まいどの事ながら良いですねぇ、相手の視点から見る話も。最初はサラさんの技量にクロ程の力は出ないとふんでからの、あの巨大な土の龍でしたからねぇ、先攻を譲ったとわいえサラさんの方質量に驚いてる…
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