35.働き者のパオラちゃん
更新大きく遅れました、すみません。
「間に合えっ」
倒れていくサラ様に駆け寄り、倒れるギリギリのところで彼女を抱えることに成功する。
彼女の顔はやり切ったという表情をしていて、とても気持ちよさそうに寝ている。
「いいところに邪魔するようで悪いのですけれど、このままでは壊死してしまいますので、溶かしてくれませんか?」
「あ、わかりました」
僕は外側から炎で彼女の周りの氷を溶かしていく。
ちょっとシュールな光景かもしれない。
「もう大丈夫ですわ、ありがとうございました」
「はい」
ある程度溶かしたところで彼女からストップをかけられた。
アデーレ様は残りの氷を自分で溶かしていく。
コントロールは彼女の方がいいため、制服を燃やしたりしてしまうことを考えたら、彼女自身でやる方がいいだろう。
彼女は氷を溶かしながら言った。
「あなたは知っていましたの?」
「どういうことでしょうか?」
質問の意図が分からず、聞き返してしまう。
「サラがあれだけ強いことを、ですわ」
「いえ、彼女があれほどの魔法を使っているところは見たことがありませんでした」
「ではやはり、試合の最中で彼女は進化を遂げたということでしょうかね」
彼女の推測は半分当たりだと思うが、おそらく半分は外れている。
特に根拠があるわけではないが、僕は彼女が昔の力を取り戻したのだと確信していた。
進化ではなく、あれが本来のサラ様の力であるのだろう。
しかし、サラ様が今の試合中にその力を取り戻したことも確かだろう。
今まで隠していた可能性もゼロではないが、僕に嘘をついていなければ、まだエルフの国にいた時点では力を取り戻していなかったし、それからもきっかけになりそうな事は起きていないはずだ。
考えることを中断すると会場の声が耳に入ってきた。
「アデーレ様〜お疲れ様でした〜」
「とってもいい試合でした!」
「やっぱり次の王はアデーレ様だな!」
「エルフの姫様もカッコよかった!」
「今後も頑張ってくれ!」
みんなが今のサラ様とアデーレの試合に感動していた。
色々と動いていたから感動に浸る時間がなかったが、本当にどちらが勝ってもおかしくないいい試合だった。
最初にサラ様が巨大な土の龍を作り上げた時はその迫力と威力に驚いたし、それを防ぎ切ってみせたアデーレの火力には素直に凄いと思った。
その後のサラ様がパオラさんの真似をして風の魔法を身体の動きに合わせて使用したのを見て、彼女の魔法のセンスというものを感じた。
アデーレの炎の渦に囚われた時は彼女が勝つと信じていながらも、少しだけ心配してしまった。
けれど、彼女は僕の期待に応えてくれた。
覚醒した彼女は今までとは段違いの威力で魔法を繰り出し、最後にはアデーレの炎との力比べを制して、勝利してくれた。
胸が熱くなるものを見せてもらった。
僕も二人みたいな試合がしたい。
けれど、勝者であるはずのサラ様はまだ僕の腕の中で眠っている。
とてもこの後試合ができるような状態ではないし、やれと言われても僕はできない。僕にとって一番大切なのはサラ様だから。
しかし、僕の心配は要らぬものとなった。
「決勝戦は出場者の体調を鑑みて明日に延期します」
審判の教師から会場全体に向けて発表される。教師たちが話し合っていると思っていたが、このことについてであったのか。
ひとまず、今日でなくなったことに一安心する。
「今晩、一緒にディナーでもどうですか?」
アデーレが僕に声をかけてくる。
「もちろん、サラも一緒にですわ」
是非と答えたいところだが、サラ様のことが心配である。
「サラ様がお目覚めになって体調に問題がなさそうだったらでもよろしいですか?」
「ええ、構いません。場所は一週間前に訪ねてきて下さったビルにまでお越し下さい」
「わかりました、ありがとうございます」
「パオラが素晴らしい料理を用意してくれますわ」
彼女は自信満々にそう言う。
「なんで林檎の皮すら剥けないアデーレ様が得意気なんですか。パオラちゃんも試合で疲れてるんですけどー」
パオラさんも疲れているようで、これ以上の労働に不平を告げる。
「……そうですわね。とても疲れてしまったので、パオラの美味しい料理が食べたかったですけれど、パオラも疲れているでしょうし、他の料理人に頼みますわ」
アデーレは残念そうに俯きながら言う。
「はぁ、仕方がないですね。アデーレ様とサラ様のおかげで明日はまだ学校始まらなくてすみそうですし、頑張らせていただきます」
「流石パオラですわ!」
さっきまでの落ち込み具合が嘘のように、笑顔になる。
「それでは準備しないといけないので、私たちはこれで失礼しますわ」
そう言うとこちらの返事も待たずに、アデーレはパオラさんを連れて会場を出て行ってしまった。
僕も早くサラ様をベッドに寝かせてあげようと思い、出口へと向かったところで入学式の時に見た校長に声をかけられる。
「二人とも……と言っても、寝ている彼女には聞こえていないだろうが、本日は見事であった。魔法学校の一年生の中の大会でありながら、この国一番の使い手を決める大会といっても過言ではない試合であった。クロ、サラ・ド・ブルゴーニュ、両者の健闘を期待する」
「ありがとうございます」
校長はそれだけ言うと、背を向けて教師たちの方へと戻って行ったので、僕も寮の方へと急いで戻るのだった。
総合評価1,000ポイント達成いたしました。
皆さんありがとうございます。これからもよろしくお願い致します。




