s5.固有魔法に魅入られた天才
私は魔法において天才という言葉では足りないほどの才能を持っていた。
王家ということもあり、兄妹全員が高いレベルで魔法の才能を有していたが、その中でも私は文字通り別格だった。
兄妹の中で三番目に産まれた私は産まれた直後から魔法を使っていたらしい。お兄様もお姉様も私が生まれた時にはまだ魔法を使ったことはなかったと聞く。
そのあと、二年後に妹のレアが産まれるが私の時の様なことはなかったという。
エルフの国では精霊の国の様に魔法の才能が全てではない。人柄、容姿、人望など様々なものを踏まえた上で、次代の王を決めることになっている。もしほぼ全てが同じであれば、長男のお兄様が王となるだろう。
しかし、レアが産まれた直後に私が次代の王の第一候補となったのだ。
それだけ、お父様が私の魔法に価値を感じたということだろう。
そのことを私が理解したのは五歳の頃だった。
固有魔法が扱える様になり、自分や他者の魔力量と放出量が見える様になった。
城の中の誰を見ても私より高い者はおらず、競うレベルすら国の中で見つけることはできなかった。
国で一番強いはずのお父様でさえ私の魔力量の十分の一程度しかなかったのだから。
お父様は魔法の訓練を私につけた。
お父様自身が私に教えることもあったし、外部から講師を呼んでいたこともある。
魔法の腕試しとして色々な相手と競わされたりもしたが、私の相手になるような者はいなかった。
さまざまな固有魔法も使われたが、何をする魔法なのかは私の固有魔法でわかってしまうため、全て基本魔法で対応することができた。
私はどこか物足りなさを感じて、自分の全てをぶつけたいと思うようになっていた。
その後、私は固有魔法に興味を持っていった。
一体どんな固有魔法があるのか私の固有魔法を使って、国中を歩いて探し回った。
メイドや騎士たちは姫、その中でも次代の王の第一候補である私に何かあったらまずいと、外に頻繁に出ることを止めようとしてきた。しかし、それくらいしか楽しみのない私は勝手に抜け出したりもした。
次第に彼らは私を止めることを諦め、私の後ろをついてくるようになった。見張られているというのは気分の良いものでなかったが、自分の楽しみを続けるためにそれくらいは妥協することにした。
そもそも魔法を使える者が少ないので、見つけるだけで一苦労ではあったが、見つけるたびに喜んでいた。
寝なくても活動できる魔法や動物を使役する魔法のように、便利そうな魔法もあれば、お通じが良くなる魔法や動物に好かれやすくなる魔法をなど、便利かどうか怪しい固有魔法もあった。
また、空を飛ぶ魔法や水を凍らせる魔法のように、基本魔法で事足りてしまう固有魔法も存在していた。
続けていると新しい固有魔法に出逢わなくなっていった。おそらくエルフの国のほとんどの魔法を使える者を見てしまったのだろう。
この頃からお父様の訓練もサボりがちになっていったが、お父様も私の才能の前ではあまり意味を感じていなかったのか特に強く言われることはなかった。
国の外に出ることは流石にお父様とお母様に許してもらえず、私は楽しみを見失っていた。
そんな時に出会ったのが城の中にある資料室であった。
そこにはさまざまな文献が資料として置かれており、その中から私は固有魔法についての資料を見つけ出した。
しかし、文献は所々今では使われていない文字などが使われており、読めるようになるまでに一ヶ月くらいの期間を使ってしまった。
だが、その苦労に見合った、いやそれ以上のことがその中には書かれていた。
国内で出逢った者が持っていた固有魔法はもちろん、私の知らない魔法についても詳しく説明されていた。
しかも魔法だけでなく、その固有魔法を使用していた人物についても詳しく書かれており、後転的に固有魔法を獲得した場合、その人物の人生や性格、コンプレックスなどが反映されることもわかった。
私は寝る間も惜しんで読書に努めたが、それでも全ての固有魔法についての資料を読み尽くすまでに三ヶ月はかかった。
しかも、それでも固有魔法はこの資料に載っていないものも多くあるという。
私は思った。こんなに固有魔法というものは奥が深く、種類も多く、好奇心をくすぐられるのかと。
その中で私が一番惹かれた固有魔法が、召喚魔法であった。
自分が望むものを何でも呼び出せる魔法らしいが、とんでもない魔力量と放出量を兼ね備えていないと成功しないと言われているらしく、今までに召喚に成功した例はないという。
私はこの召喚魔法を行うと決めた。
固有魔法は当人以外では使用できないというが、それはその程度の才能の者の間での話ではないだろうか?
私のような規格の外に位置する才能を持った者であれば、成功する可能性があるのではないか?
それから私は召喚魔法のイメージを毎日続けた。
自分の才能を信じてはいても、固有魔法を舐めているわけではない。
召喚魔法を持つ者ですら大変な才能が必要とされるのだから、持っていない私がいくら才能があるからといって準備を怠るわけがない。
私はお父様の訓練にもサボらないようになり、毎日のイメージ練習も欠かさず、修行の日々を過ごした。
そして一年後、ついに召喚魔法を決行する日がやってきた。
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