a1.退屈ですわ
少し遅れましたが昼更新しました
わたくしはこの日を楽しみにしておりました。
それにはいくつかの理由があります。
一つは他の方の固有魔法を見ることができるから。
魔力量や放出量でわたくしの上をいく者はクロを除いていないでしょうから、基本魔法についてはあまり他者のものに興味はないのですが、固有魔法は別です。非常に強力なものを持っている者がいるかもしれませんわ。
パオラのように。
もう一つはクロとサラと試合をするチャンスだから。
クロには先日、遅れをとってしまいましたが、油断さえしていなければ……。本当はそう言いたいところですが、あの時のわたくしであれば、負けは必至であったでしょう。
正面からぶつかり合ってお兄様やお父様以外に自分が負けるわけがないと思っていましたから。自分以上の放出量で押し潰されることなんて夢にも思いませんでしたわ。
けれど、今のわたくしは敗北を学び、成長致しましたわ。
それで確実に勝てるという自惚れも今のわたくしにはございません。ですが、この国の姫として負けたままというわけにはいきませんわ。
パオラがクロを倒してくれてもいいのですが。
サラのことはエルフの国の姫が魔法の天才があるということでは聞いておりましたが、それも所詮エルフの国での話としてあまり気には留めておりませんでしたわ。
案の定、五年くらい前からはその話も全く聞かなくなりました。
しかし、今年魔法学校にその姫がやってくるということでその存在を思い出しました。
入試の結果はわたくしの方が上でしたが、従者であるクロがあのレベルであるならば、もしかしたらサラも相当なレベルの魔法を扱うのかもしれません。
けれど、わたくしは負けません。この国の姫として。
わたくしが優勝して、一年生での最強の座をいただくといたしましょう。
最後はパオラの晴れ舞台になると思っていだからです。
彼女は魔力量や放出量は少し優秀程度ですが、彼女の五感を奪う固有魔法は非常に強力ですわ。
彼女の両親はそれを腫れ物のように扱ったらしいですが、わたくしには理解できません。
だって強いじゃないですの。
彼女は多くの人に羨望の視線を向けられるべき存在であり、わたくしの側にいるのですから彼女の強さは多くの者に理解されるべきですわ。
朝、パオラを連れてクロとサラのお部屋に宣戦布告に行ったのですが、サラには相手にされず、メイドであるはずのパオラに茶化され、クロには哀れまれてしまいましたわ。
その後、会場が違う為にパオラとクロと別れて、サラと二人で会場に向かうことになりました。
何故よりにもよってサラなのでしょう。パオラかクロが良かったのに……。
でもこれもサラとの仲を深めるいい機会かもしれないですわね。
なんてことを思っていると、サラはわたくしを置いてスタスタと先に行ってしまってるので、急いで追いかけました。
「五感を奪う能力とは、君の従者はなかなか面白そうな固有魔法を持ってるじゃないか」
「……え? なんで知ってますの?」
サラが急にパオラの固有魔法の話を始めたので驚きを隠せずに反応してしまいました。
「隠すほどでもないから言うが、それが私の固有魔法だからな」
「他者の固有魔法がわかるんですの?」
「まぁそんなところだ」
「そんな強力な固有魔法がまだあるなんて……」
「強くなんかないさ」
「そうなんですの?」
「あぁ。確かに固有魔法がわかるから不意打ちの様に負けることはないが、別に無効化できたりするわけじゃない」
「そう言われるとそこまで強力なものではないように思えてきましたわ」
「特に君みたいに火力を上げるなんて固有魔法は、知ったところでだからどうしたという感じだ」
確かにわたくしの固有魔法は単純な基本魔法のパワーアップ。バレたところで超火力で焼き尽くすだけだ。
「わたくしにそれを言ってよかったんですの? 知らなければわたくしはあなたの固有魔法を警戒したのに」
「素直に信じてくれるのは嬉しいが、私が嘘をついているかもしれないぞ?」
「それはありませんわ、パオラと私の固有魔法を言い当てたのですし。それに……」
「それに?」
「あなたはそんなことで得られる勝ちを望む様には見えませんわ」
そう言うと彼女は少し寂しそうに笑って言った。
「高く買われたものだな」
もしかしたらとは考えていたのだが、わたくしが四回戦まで試合をすることはありませんでした。
当たった相手が尽く棄権してしまったからです。
負ける気は毛頭ございませんが、それでも試合をしてもらえないというのは寂しいです。わたくしを倒そうという気概すら無くて、この先成長できると思っているのでしょうか。
一方、サラの方はというと全ての試合を一瞬で終わらせており、とても楽しそうにしておりました。私の方を見て、羨ましいだろうという表情をしており、少しムカつきましたが、本当に少しだけ羨ましかったですわ。
わたくしの方を順調と言っていいのかはよく分かりませんが、わたくしたちは順調に準決勝に駒を進めました。
もう一つの会場の方のことは聞いていませんが、パオラとクロが負けることはまずないだろうと確信しておりました。




