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31.彼女の秘密とカツカレー

更新遅くなりました。すみません

「よろしくお願いします」


 パオラさんは相手に深くお辞儀をしていた。


「……ふん」


 相手の腕を組んで偉そうにしている男子生徒はいかにも貴族のお坊ちゃんって感じだ。


「お前棄権しろよ」


「は?」


「誰か知らないけどお前みたいな見るからに平民くさいやつにこの俺が負けるわけないだろ。時間の無駄だ」


「早く始めてください」


 彼女は審判の先生に早く開始の合図をするように促す。


「始め!」


 その瞬間、パオラさんが目に見えない何かを男子生徒に放ったように見えた。

 すると、男子生徒の様子が急変する。


「なんだこれは!」


 彼が魔法を四方八方に向かって乱雑に放ち始める。

 パオラさんがそんなのに当たる気配はない。


「くそっ! なにをしやがった!」


 彼は錯乱しているのだろうか?

 あれがパオラさんの固有魔法……?

 

 彼女は少し遠く離れたところからその状況を観察して、手を出すことはしない。

 なぜ何もしないのだろう……。

 五分くらいすると魔力を使い果たしたのか、男子生徒が崩れ落ちる。


「勝者パオラ!」


 彼女は特に嬉しくもなさそうに、男子生徒のことを冷たく見下ろしていた。




「おめでとうございます」


 先程とは逆に僕が彼女を出迎える。


「ありがとうございます」


「さっきのは何をされたんですか? なぜ何もされなかったんですか?」


 僕は気になっていたことをすぐに質問してしまう。


「何をしたのかは教えませんよ」


「どうしてでしょうか?」


「だってあなたに勝てなくなっちゃいますし」


 僕は何も考えていなかった。このまま勝ち進めば僕たちは準決勝で当たることになる。簡単に手の内を明かすはずがない。


「でも、先程は質問に答えていたいただいたのでもう一つの疑問にはお答えしましょう」


「ありがとうございます」


「私の放出量がゴミクソだからですね」


「ゴミクソ……」


 この人は自分にもそういう表現を使うのか。


「そのせいで基本魔法ではよくて強いホースくらいの威力しか出ないのでダメージを与えるには至りません。そのため、無駄に魔力を使う理由もないですしお相手の魔力切れを待っていました」


「相手が魔法を使ってこなかったら?」


「それは秘密です」


 分かってはいたけど、教えてもらえなかった。

 いったいどうしたものかと考えているうちに一回戦は次々と消化されていった。



 その後も僕たちは苦戦することなく勝ち上がって行ったが、四回戦でパオラさんの手の内の一つを知ることができた。

 相手が無闇矢鱈と魔法を振り回さなくなったのである。

 お互い膠着状態が続いたが、先に動いたのはパオラさんであった。相手の女子生徒に思い切り腹パンを加える。

 流石に耐えかねた相手が魔法を使い始めるが、先程までの相手と同じ様にパオラさんを狙うことはできてない。

 魔法が止まると再びパオラさんの腹パンが決まる。


「降参します」


 そこで相手の女子生徒が降参したのであった。



「クロさんと戦うまでは見せたくなかったのですが」


 戻ってきた彼女は不本意そうにそう言う。


「次、よろしくお願いします」


「こちらこそ」


 僕たちは共に四回戦を突破したため、次の準決勝で当たることになる。

 彼女が素手で来ることが分かったのは幸運だったが、彼女の固有魔法がどんなものであるかわからない以上、その対策はいまだに悩んでいる。

 彼女と戦った生徒に聞けば、固有魔法についてわかるかもしれないがそれはフェアではないと思う。

 正々堂々と決勝まで勝ち上がることをサラ様は望んでいるだろう。


 ここで一度お昼休憩となった。

 僕たちは主人たちと合流するために彼女たちが試合をしている会場へと向かう。


「待っていたぞ、クロ」


「お待たせいたしました、サラ様」


「順調な様だな」


「はい、ご期待に添える様頑張ります」


 私たちが食堂へと向かおうとしたところで声をかけられる。


「午後はよろしくお願いしますわ、サラ」


「泣くことになるからハンカチでも用意しておくんだな」


 サラ様がアデーレに宣戦布告する。


「あなたこそ負けても泣かないでおくんなまし」


「それはそれとして、アデーレ様は淑女の嗜みとしてハンカチを持ち歩いた方がいいと思います」


「だからあなたはなんで余計なことを言いますの!?」


 私もパオラさんに勝たなければならない。

 けれど、宣戦布告というのは僕の性には合わなかった。


「それではまた後でパオラさん」


「はい、クロさん」


 僕たちは淡々とその場を別れるのだった。




「クロ、パオラというメイドの固有魔法についてだが……」


 僕の予想していた通り、サラ様は彼女の固有魔法の話題を出してくる。


「大丈夫です、サラ様。クロにはどんな固有魔法なのか分かっておりませんが、絶対に勝ちます」


「君ならそう言うと思っていた」


 そう言うと彼女は嬉しそうに頷いた。



 食堂では何にしようか迷っていたが、ちょうどカツカレーというものがあり、私は験を担ぐつもりでそれにする。

 サラ様に理由を聞かれ、説明すると笑われてしまった。


「カツと勝つなんてクロは子供っぽいな」


 彼女もカツカレーを食べていた。

ブクマ、評価ありがとうございます

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