28.入学式ですわ
「ふわぁぁ〜」
朝、目を覚まして時計を見ると6時を指し示していた。
隣のベットを見るとスヤスヤと寝息を立てている、世界一可愛い僕の主人がいる。
目を擦りながらシャワーへと向かう。
身体を流してシャワーから出て、初めての制服に袖を通した。
その後、メイクをして鏡で自分の姿を確認する。
金髪の美少女が黒いドレスのような制服を着ている。控えめに言ってなかなかいけてるとは思う。可愛いとも思う。サラ様の次には。
着替えが終わったら朝食の準備を始める。
城の料理人の料理と比べたら特段美味しくはないと思うが、サラ様は僕の料理を褒めてくれていた。
今日はホットケーキの予定だった。
いつもは朝からもう少し手の込んだものを作っていたのだが、今日からは制服を着なければいけなかっただめ、少し時間に余裕のあるようにホットケーキの準備をしておいたが、時間的にはちょうど良さそうだ。
焼け上がったところで時計は7時少し前を指していた。少し早いがサラ様を起こそうした時、彼女の身体が起き上がってくる。
「おはようございます」
「ふわぁぁぁ〜おはよう、クロ」
「先にご飯にされますか? シャワーを浴びられますか?」
彼女は三十秒くらい固まった後言った。
「いい匂いがする、ご飯にしよう」
「かしこまりました、準備いたします」
「顔だけ洗ってくる」
サラ様はそう言うと洗面台へと向かっていき、顔を洗ってきたようだ。
そのまま彼女は料理が用意してある席へと着く。
「クロの分も持ってこい」
「……かしこまりました」
僕は自分の分も皿に用意し、彼女の席の向かい側に置いて、席へと着く。
「何故毎日同じやりとりをさせるんだ」
彼女の言う通り、一週間ずっと朝はこのやり取りを続けていた。
「やはり、従者が主人と一緒にご飯を取るのはどうかと思いまして」
「何を今更言っている。これまでだって一緒に食べてたことはあったじゃないか」
……自分でもそう思う。
「朝食を用意していると自分が従者であったことを再認識して、今までの自分の行動の甘さを実感するのです」
「……そうか」
サラ様にこいつは何を言っているんだと言う目で見られる。
「とりあえず毎日同じことを言うのは面倒だから今後は一緒に食事を取るように、いいな?」
「……はい」
この朝、僕は主人と一緒に食事を取ることを許された奴隷となったのだった。
食事を終えた後、シャワーに入る前にサラ様が声をかけてきた。
「クロは制服姿もとても似合ってるな」
「ありがとうございます!」
鏡で見て自分でも悪くないとは思っていたが、彼女に褒めてもらうのは格別の嬉しさだ。確信する、今日の僕は新入生の中で二番目に可愛いと。
魔法学校の入学式だから何か凄いことがあるのかと思ったが、特にこれと言って面白いことはなかった。
校長と何人かの教師、在校生の代表として三年生の一人が、壇上に立って順に話をしていく。
そういえば、と気になったことを尋ねることにした。
「来年以降は魔法学校に通うのですか?」
「うーむ、どうしようか」
一年後には一度エルフの国に帰って、王の座を手に入れにいかなければならない。
「国王になれたとして学校に通い続けることはできるのでしょうか?」
「それは別に問題ない、お兄様やお父様もいるから留守を任せることは可能だ」
「なるほど」
「あと、なれたとしてではない。必ずなるんだ」
「すみません、サラ様」
サラ様と会話をしていると、見知った人物が壇上に立っていた。
「皆さま、おはようございます。わたくしはアデーレ・デッラ・スカラと申します」
一週間前に見た鮮やかな赤色のツインテールが壇上で綺麗な姿勢で立っていた。
「本日はわたくしたちのために、このような式をしていただき、誠にありがとうございます。新入生を代表してお礼申し上げます。ここで魔法について多くの仲間と学び、鍛錬し、成長したいと考えております。魔法学校の一員となるからにはそれに恥じぬ生徒となることを誓います」
ですわ口調をやめて離すアデーレはこの前話した時とは違い、とても大人びて見えた。
「最後に一つだけ。わたくしがこの学校で頂点になりますわ」
……わーを。
「先生方、先輩方、これからよろしくお願いいたします。以上をもちまして、新入生代表の挨拶とさせていただきます」
会場が拍手に包まれる。
「流石は次期国王候補のアデーレ様ね」
「アデーレ様、今日もお美しい」
「アデーレ様より魔法ができる生徒なんて少なくとも一年にはいないわね」
彼女の発言に対して反発する声があるのかと思っていたが、むしろ逆であるようだ。
この学校では彼女の信者が多いらしい。
再び教員の一人が壇上へと登ると驚きの発言をした。
「それでは予定通り、明日朝十時より、新入生魔法試合トーナメントを行いますので新入生は遅れないように。以上で入学式を終わります」
……え?
新入生魔法試合トーナメント?
サラ様の方に視線を向けると彼女は視線を逸らす。
「サラ様は知っていらっしゃったんですか?」
「すまない、伝えるのを忘れていた」
「……そうですか」
入学式以来、たまに魔法を使っていたが、ウルフの群れに撃ったような魔法は未だに使えていない。
入学試験の時には失敗してしまった。
明日こそはサラ様の奴隷として恥じない活躍をしなければ。
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