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26.赤髪の青年

 外へ出ると案の定、人の視線を集めていた。先程もこの姿で歩いていいたはずなのだが、試験や魔法学校のことで頭がいっぱいだったために、視線に気づいていなかったのかもしれない。

 見られていると思うと少し恥ずかしくなってきた。

 メイドが珍しくない国であれば、別に構わないのだが、やはりこの国では珍しいらしく、変な人だと思われているかもしれないと考えてしまう。


「ここなんかどうだ?」


 そう言ってサラ様が示したのは全面ガラス張りのお洒落な洋服屋であった。


「ちょっと洒落すぎてはいませんか?」


 僕はあまり派手なものではなくてよかった。


「別に全て服が派手ということでもないだろう」


 そう言うと彼女は中へと入っていってしまう。

 ついて行く以外の選択肢はないので、僕も店の中へと入っていった。


「わぁ……」


 外から見た通り、可愛い服が多く興味は惹かれたが、僕としてはスカートではなくズボンが欲しかった。

 ズボンのようなものがないかと探していると、サラ様に声をかけられた。


「これなんかどうだ?」


 サラ様が持っていたのは、彼女が普段着ているような服と似ている黒いドレスのような派手な服であった。


「サラ様にお似合いだと思います」


「クロの服を探しに来ているんだが」


「クロにはいささか服が可愛すぎると思います」


「そんなことはないと思うが、クロが気に入らないというのならやめておこう」


 サラ様が服を戻して次の候補を探し始める。

 先にいい感じのものを見つけなければと、ズボンを探し始めた時だった。


「いらっしゃいませ、どのような服をお探しですか?」


 店員さんが声をかけてきた。

 いきなりのことで驚いてしまうが、早く見つけた方がいいと思った僕は希望を伝えようとする。


「彼女に似合う、可愛いイメージの服を何着か探している」


 僕が答える前に、いつの間にか後ろに来ていたサラ様が答えてしまう。


「かしこまりました、少々お待ちください」


 そう言うと、店員さんは服を探しに行ってしまう。


「クロはどういうものがいいとかあるのか?」


「スカートがどうしても落ち着かないので、ズボンタイプのものが欲しいかなと考えております」


 するとサラ様は嫌そうな顔になる。


「却下だ」


「えぇ、なんでですか」


「だってスカートの方が可愛いじゃないか。君にはそっちの方が似合っている」


「……わかりました」


 そんなことを言われたら、スカートを履くしかないじゃないですか。



「こちらなんてどうですか?」


 店員さんが持ってきたのはピンクのフリルがついたミニスカートのセットと水色のワンピースだった。


「おお、いいじゃないか」


 サラ様は乗り気だが、僕としては水色のワンピースはまだしも、ピンクの方はスカート短いし、フリフリでちょっと着辛い。


「よろしければ試着してみますか?」


「ちょっとこっちを着てみろ」


 彼女が指し示したのは当然、ピンクのフリフリの方だった。



「そろそろいいか?」


「もう少しお待ちください」


 本当は着替え終わっていたのだが、試着室を開ける勇気が湧かなかった。

 鏡で自分を見るとそこまで酷い惨状になっているわけではないと思ったが、それでもこの格好は恥ずかしい。メイド服は自分の身分であるということもあって、まだ折り合いをつけられていたが、これはそういうわけにもいかない。


「どこかわからないのか? ちょっと見せてみろ」


 そう言ってサラ様が頭だけ試着室に入れてくる。


「着れているじゃないか」


 彼女に試着室のカーテンを全て開けられてしまう。


「とてもよくお似合いですよ」


「あぁ、クロに合っている。とても可愛らしい」


「……本当ですか?」


「嘘をつく理由がないだろう」


 スカートが短いせいで、下半身はめちゃくちゃスースーとするし、恥ずかしさで顔が赤くなっているのもわかる。

 けれど、これだけ褒めてもらえるのなら悪くないかなと思うのだった。


 その後、他にも服を買ってもらったり、サラ様の服を買ったりした。

 ついでにパンツは緩いタイプのものは却下されて買うことはできなかった。


「日も暮れてきたし、ご飯でも食べようか」


 サラ様が見つけたちょっとお高そうなお店に入ろうとした時だった。

 客が出てきて、僕とぶつかってしまう。

 僕は衝撃に耐えられず、尻餅をついてしまう。


「も、申し訳ありません」


 条件反射で謝罪をする。


「こちらこそ悪かった」


 そう言って手が差し出される。その人物を見ると赤髪をした青年で、クレモン様に負けず劣らずの美形である。


「ありがとうございます」


 差し出された手を取り、立ち上がらせてもらう。

 美形の男に手を取られてもなんとも思わないことを考えると、やっぱりまだ僕の中には男がいるらしい。


「怪我はないかい?」


 特に痛むところもない。


「はい、大丈夫です」


「それは良かった」


 彼は爽やかな笑顔を僕に向けてくる。

 そして彼はサラ様の方へと視線を向ける。


「君のその制服は、魔法学校のものかい?」


「……そうだが?」


 サラ様は彼に警戒心を隠さない態度で答える。


「すまない、そんなに怖がらないでくれ。僕のことを知らないのかい?」


「知らない」


「……なるほど」


 彼は一人で何かを納得したようだ。


「それなら自己紹介が必要だね」


 そう言うと姿勢を正して、続けた。


「僕の名前はブルーノ、魔法学校の二年生だ。君達の先輩ということになる」

ブクマ、評価ありがとうございます

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