25.メイド服の理由
昼更新遅くなり申し訳ありません
「ふんふんふん〜」
正直身体を洗うのは楽しい。
自分の身体とはいえ、美少女の身体を洗えるわけだ。
見ていても楽しいし、触っていても楽しい。
変態みたいだが、自分の身体なので誰に迷惑をかけるわけでもないのだ。誰かに文句を言われる筋合いはない。
これが楽しいということは僕の中にある精神は男の部分が大きく残っているのだろう。
唯一身につけているチョーカーが怪しく光る。防水仕様らしいので、シャワーも問題ないが裸にチョーカーだけというのはなんかイケナイ感じがする。
けれど、その姿を鏡で見ると自分が奴隷であるという立場であることを再認識して、サラ様の物であると思うと嬉しくなる。
シャワーは楽しいが、今はサラ様を待たせてしまっているので、あまりゆっくりはせずにシャワーを終える。
ブラのホックをつけるのにも慣れてきた。まだ少し手こずるが、だいぶ早くなった方だろう。
しかし、パンツはいまだに慣れない。尻に食い込むことに窮屈さを感じてしまう。締め付けないようなものを買ってもらえないかサラ様に相談しよう。
いつも通りのメイド服を身につけ、カチューシャをつける。
「お待たせいたしました」
「じゃあ出かけようか」
シャワーから戻るとサラ様は魔法学校の制服と思われるものに着替えていた。
黒いドレスのようなものでありながら、歩きやすいように下半身の部分はそこまで長くないスカートになっている。
普段から黒い洋服を着ているのもあるだろうが、サラ様の雰囲気にはやはり黒がよく似合う。
「とてもお似合いです、サラ様」
「ありがとう、クロも今日も可愛いぞ」
「もったいないお言葉です」
彼女が今日も僕のことを褒めてくれる。さっきシャワーを浴びていた時は自分の心が男なのかもしれないと思っていたが、可愛いと言われて素直に嬉しいと思うあたり、僕の心も身体につられて少しずつ女性化してきたりしているのだろうか。
別に男性でいることに誇りや拘りがあるわけでもないので構わないのだが、胸を張って女性であると言える時が来たら彼女に対する罪悪感も消えてくれるのだろうか。
「それじゃあそろそろ出るとしようか」
「クロの制服はないのでしょうか?」
サラ様の制服があるということは、僕の制服もあるのではないだろうか。
「一応届いているぞ」
「それであれば、クロも着替えてよろしいでしょうか?」
メイド服も好きなのだが、新しい服を着てみたいという欲求は存在する。
「だめだ、今日はメイド服のまま出かけよう」
「何故でしょうか?」
「主人の命令に理由がいるのか?」
「申し訳ありません」
「それでいい」
僕は彼女の奴隷だ。彼女の命令には絶対に服従しなければならない。
「冗談だ」
「え?」
「私は君を奴隷にしたが、人形になって欲しいわけではない」
「……はい」
彼女は本当に僕のことを尊重してくれている。奴隷という立場であるのに、おそらく友人関係以上に僕のことを大切にして接してくれている。
僕は最近、彼女の僕に対する真摯な態度故に、自分の立場を忘れてしまっていた。
「だから、わからないことや気になることがあればなんでも聞いてくれて構わない」
「ありがとうございます、サラ様」
「ただ、もしできるのであれば、できる限り他ではなく、私に聞いてくれ」
「かしこまりました」
「クロは物覚えが早いし、君に何かを教えるのは可能な限り、私でいたいのだ」
彼女は積極的に僕と関わり合いを増やそうとしてくれる。これも非常に嬉しかった。
「すまない、話を戻そう。メイド服を来て欲しい理由だったな」
「はい」
「私がクロにメイド服を着ていて欲しいのは私のわがままだ。君みたいな美少女を従者として連れて街を歩きたいという私が楽しくなりだけの望みだ」
「今までだってエルフの国でメイドを連れて街を歩いたことがあるのではないですか?」
「もちろんあるが、さっき街を歩いていて気づかなかったか? エルフの国ではメイドなどは珍しくないが、精霊の国では一度も見ていない」
「確かに……」
思い返してみるとこの国では従者の類は一度も見ていない気がする。
「私は目立ちたい欲求が存外あるのかもしれないな」
「サラ様の端麗な容姿があれば、それだけで十分に人目を引くと思いますが、考えは理解しました」
「待て、理由はもう一つある。さっきエルフの国をメイドを連れて歩いたことはあると言ったが、クロほど可愛い従者を連れて歩いたことはないからな」
サラ様は本当に僕のことをよく褒めてくれる。試験ではパッとしない結果を出し、奴隷のくせに質問をしてしまう僕なのに。
「まぁそれでも制服が良ければ制服を着てもいい。無理強いはしないし、制服を着たクロもきっと可愛いだろう」
「ありがとうございます」
サラ様はそう言ってくれるが、僕に選択肢なんてなかった。
「でも今日はメイド服で出かけさせてください」
あそこまで主人に言ってもらって、着替えるなんてことはありえない。
「そうか、ありがとう」
制服姿のエルフの主人と、そのメイドは異国の街へと繰り出すのだった。
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