表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/72

s2.拾った奴隷に意地悪したい

 正直、精霊の国へと行くのはどの方法でもよかった。

 しかし、出発前にクロに重荷を背負わせたくなくてかけた言葉によって、彼女は無力を感じて悩んでしまった。

 私の言葉で彼女に悩みを与えてしまったのなら、私がそれを解決させてやらなければならない。


 馬車で行くことを選んだのには二つの理由があった。


 一つ目はクロに商人を探させて、仕事ができているという自覚を与えてあげること。アガタから金はたくさんもらってるだろうから、見つからないということはないだろう。

 結果としてぼちぼちであった。

 彼女は良い相手を見つけてくることはできたが、流石にそれだけで悩みが解決というわけにはいかないようであった。

 今更悔やんでも仕方ないのだが、軽はずみな発言をしてしまった先程の自分を殴りたい。


 二つ目はクロの見聞を広げることだった。

 確かに魔法を使って空から行けばすぐに精霊の国へと着くだろうが、途中でトラブルなども起こることはないだろう。

 馬車で行けば、新たな出会いや何かクロの知らない出来事に出くわせるかもしれない。

 最悪、何かトラブルが起きても彼女の魔法があればなんとでもなるから心配はなかった。



 馬車の中ではこの世界の国のことなどクロに色々と教える時間が取れて、有益だったと思う。ケーテという少女も商人として様々なところを旅してきただけあって、見聞が広いようであった。



 しかし、ウルフの群れに襲われるとは思っていなかったため、あれには驚いた。

 すぐに私の魔法で撃退することもできたが、彼女の自信を取り戻すのにはいい機会であると思った。

 本当は自らの立場を明かす気はなかったのだ。しかし、もし一人でも怪我するようなことがあればクロは更に思い悩んでしまうのではないかと、私も焦っていたからかクロが魔法を使いやすい状況を整える方法があれしか思いつかなかった。

 結果として彼女の魔法によって、事態を解決することに成功した。

 クロも少しは自分の無力感を払拭できたようで、結果的には非常にいいものとなっていた。


 クロほどの魔法の才能があってしまえば、その名が世界に轟いてしまうのは時間の問題であろう。彼女が有名になってしまうのが嫌なのではない。

 ただ、今は、少なくともあと一年の間は彼女と穏やかな日々を過ごしたいのだ。



 クロは焦ると一人称が僕に戻ってしまうようだ。

 その時の彼女はいつもと違って、凛々しく、格好良く見える。

 普段は気をつけてくれて、一人称をクロにしてくれているし、本当は不満があるわけではない。

 けれど、罰として彼女を虐めることができると私は都合よく利用しているのだ。

 主人と奴隷であるのだし、何も理由がなくても彼女のことを好きにする権利があるのは確かだ。けれど、私はクロのことを尊重したいのだ。

 尊重した上で虐めたいというのだから、いくらかの矛盾を孕んでいる様な気はするが、それが私の希望なのだ。


 今回は俗に言うストリップショーというものをクロに希望した。もちろん、見たことも、ましてやしたことなんてあるわけがない。

 けれども、今回のストリップショーも前回の頭を踏みつけたのと同じくなかなか楽しかった。

 嫌がるクロに強制するのも楽しかったが、恥ずかしがりながらも服を脱いでいくクロは頬を赤く染めて可愛かった。

 露わになっていく肌は白く綺麗で、シミひとつなく、まさしく神が与えた産物とでも呼ぶべきものだった。

 恥ずかしがりながら、本気で拒否すれば私がやめると分かっていながら、それでも私の言葉に素直に従って裸へと近づいていくクロは非常に愛おしかった。


 私の心は歪んでいるのかもしれない。

 クロのことをとても大切に考え、なによりも優先したいと思うと同時に、クロの無様な姿や恥ずかしがったり嫌がったりしているところを見ると胸が昂ってしまうのだ。

 クロに嫌われない様にそこそこには自重しなければならない。

 だから、今回も下着姿でストリップショーは中止してやったのだ。

 もし、あれを続けていたらクロはどんな表情を見せてくれていたのかという興味は尽きないので、いつかは見てみたいと思う。


 この相対する感情が存在する状況をレアから聞いたことがあった。

 話を聞いた時は色気付き始めた少女が言ってるだけのものだと聞き流していたが、今の状況はそれと合致している。

 この想いの名が恋だと。

 今までの私の人生では無縁だった恋という感情。

 恋、と単語にしてしまうと急に恥ずかしくなってくる。


 恋だと決めつけるのはまだ早いかもしれない。

 初めての感情だからと言って答えを性急に求めすぎている気はする。

 少なくともしばらくはクロと一緒にいるのだ。焦る必要はない。


 ただ、レアはこうも言っていた。

 相手のことを考えすぎて、我慢できないくらいになるのが恋だとも。確かに私は一日中クロのことを考えているし、クロと一緒にいたいと思うし、意地悪したいとも思うが、まだ我慢はできている。

 これがどうしても我慢できなくなったなら、その時考えればいい。



 自分でも無理があることはなんとなくわかっていた。

ブクマ、評価ありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ