s1.拾った女の子を奴隷にした
森で美少女を拾った。
私は自分の容姿はかなり優れている部類だと思っているが、それでも彼女の美しさには及ばないと思った。
彼女を私の魔法で見ると昔の私に引けを取らない魔法の才を有していた。
私は彼女を自分のものにしたいと思った。他人を自分のものにしようとする考えが王族譲りのものなのか、私が自己中心的な考え方をしているからかはわからないが、初めてここまでの強い感情を抱いた。
彼女は人間であったが、私にとってそんなことはどうでもよかった。私は人間と深く関わったことはないし、お父様たちが毛嫌いしていることは知っていたが、私には関係ない。
それに彼女は私にとって特別であったから。
彼女は名前が思い出せないという。綺麗な黒い髪をしていたからクロと名付けてしまったが、流石にもうちょっと考えてあげた方がよかっただろうか。
個人的にはペットみたいで可愛い名前だと思うのだが。
クロは人間が奴隷にされていることに怒っていた。私からしたら何を当たり前のことをという感じなのだが、彼女は本気で言っていた。
本気で言っていることを蔑ろにはできないが、私は解決するほどの力を持ち合わせていない。しかし、一つだけ方法はあった。国王となって法をかえるという手段だ。
今の私は昔のように誰からも期待されるような存在ではなくなってしまったし、王というものに興味もなかった。
しかし、彼女が強く望むというならばそれを叶えてやるのがよい主人というものではないだろうか。
彼女は結構あっさりと奴隷契約を結ぶことに同意してくれた。まぁ、彼女が求めている言葉を使っていたので驚くべきことではなかったが、それでも同意を得れた時は長年の夢が叶ったように嬉しかった。
自分の過去の話を少しだけクロにした。私が勝手なことをして、魔法の才を失った話を。
嘘はついていないが、細かいところ、おそらく一番大切な部分を話せていない。そこを話したらもしかしたら彼女が私の元を去ろうとしてしまうかもしれないから。
私は弱くて嘘つきで。
彼女には私を信じてもらおうと一生懸命に行動するのに、私は彼女のことを信じきれていないし、隠し事すらしている。
隠し事についてはお互い様のようだが。
次の日には早速お父様がクロにつっかかってきた。
お父様は人間に多くの仲間を殺されたからと人間を種族として毛嫌いしている。
別に好かなくてもいいが、私の奴隷に対してまで口出ししてくるのは勘弁してほしい。迷惑をかけているわけでも、法に違反しているわけでもないのだから、それくらい許容するのが父親というものではないのだろうか。
私が国王になったらお父様のような頑固者になるのだけは避けたいと思う。
しかし、私の想像は甘かった。父はクロを試すのではなく、殺そうとしていたのだった。
「クロっ!」
私が気づいた時にはすでに遅く、彼女の身体はお父様の得意とする最大級の炎魔法による炎柱に包まれていた。
彼女の魔法の才は本物だが、実戦経験があるわけでもないから素早い発動には慣れていない。
どうか、どうか無事でいてくれと願う。
お願いします。何でもしますから。どうか彼女を返してください。
炎が消えると倒れたクロが出てきた。ひどい火傷をしており、呼吸はあるが、かなり苦しそうだ。
城に在中する医者に診せようかとも思うが、父の息がかかっているやつに見せても意味はない。そもそもこの国にお父様の息がかかっていない医者などあるのだろうか。
どうすればクロを救えるのだろうか、それだけを考えるもどうしたらいいかわからないでいると彼女の身体が光だし、治癒が始まった。
私はその光に見惚れていた。
光が消える頃には彼女の身体はお父様の攻撃を受ける前の綺麗な身体に戻っていた。
どうやらクロが回復魔法を使ったらしかったが、彼女に回復魔法が使えるということまでは私の魔法では見えていなかった。
流石私のクロ、回復魔法が使えるなんてこの国始まって以来の天才だ。
嬉しいとともにこのことが多くの同族に知られたら、私とクロの生活が邪魔されてしまうことも確信する。
彼女が私と同じく、私との生活を望んでくれていることが嬉しかった。
クロにチョーカーをつけようとしたら面白い謝り方をしてきた。クロのことは嫌いではないのだが、どうしても差し出された頭を踏んでみたくなってしまった。踏んでみると意外と面白いもので、彼女が変な声をあげるのが可愛くて、楽しくなってしまった。
一応、回復魔法を勝手に使えないという制限をつけてはいたが、そんなものは建前でしかない。これから、その見た目や魔法の才能で人々を惹きつけるクロに、私のものだとマーキングしておきたかった。
チョーカーが少し首輪に見えて、それを付けているクロは余計に可愛いかった。
お父様がここまで過激な行動に出てくるとは想定外だったので、魔法学校に行く予定を早めることにした。
魔法学校は隣国のため寮に入ることになるので、それが狙いだ。
もともと私も魔法を学びたかったし、クロも色々と魔法について学ぶべきだろう。
それに、クロとの同室での生活が楽しみだ。
クロは私が守る。私はクロの主人だから。
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