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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

綿毛の女の子

作者: 樹めぐ
掲載日:2020/07/14

ある日、僕が家に帰ってくると、部屋のど真ん中に女の子が倒れていました。


その女の子はピンク色のレオタードのような不思議な服を着ていて、肌は真っ白で、髪の毛は綿毛のような白くてふわふわの変な髪の毛でした。


僕が驚いて女の子に声をかけると、女の子はゆっくり目を開けました。


その瞳はまるで、澄んだ水の中で赤色と青色の絵の具が混ざり合っているような輝き方をしていました。


僕は何も言えず、ただそこに座っていました。


女の子が僕の顔を見て、不思議な言葉を話し出しました。聞いたことのないような変な発音の言語でした。


僕は、少女に大丈夫?と日本語とか英語は日本語と英語で話しかけましたが、女の子は理解できないようでした。


とにかく痩せ細って骨ばっている体の女の子を見た僕は、キッチンに向かって、2人分の焼きそばをつくりました。


急いで切ったからタマネギが変な形をしていましたが、何かをとにかく食べさせなきゃいけないと言う不思議な位に強い強迫観念が主人公の頭の中を約96%ほど埋め尽くしていました。


女の子は焼きそばの匂いを嗅いでしばらく黙っていましたが、恐る恐る両手を伸ばして焼きそばを手で掴み、真っ白なおちょぼ口をパカッと開けて、少しずつ食べ始めました。


僕はそれを見てすごく安心しました。


それはまるで初めて本当に笑った、ような、幸せの最高潮と言うものを知った、ような、母親の体内に戻ったかのような、体がふわふわして、快感に包まれている。


しかし、終わりはすぐに訪れた。


頭が痛い。なんとなく悲しい。いなくなってしまいたい。そんな思いだけが世界を漂っていた。


ぼーっと床を眺めていると、誰かが見ている気がした。


彼女だ。


彼女が僕を見ているのだ。


目があった。美しい。


その時、全てを理解した。


この部屋が寒いのだ。温めないと彼女は寒くて凍えてしまう。


僕はタンクトップで雪の中を歩いても平気な男だ。


だけど彼女は華奢だ。それに美しい。


温めてやらないといけないのだ。


僕は急いでしばらく使っていなかったエアコンのリモコンをぐちゃぐちゃのタンスから取り出し、部屋を温めた。


部屋はどんどん暖かくなっていった。


だけどきっとその時、僕の体温の方がよっぽど高かっただろう。


溶けて、ドロドロになって、いつの間にか床にくっついていた背中が、床の下へ、土の下へ、地球の何層にもなった地底世界たちを、ぶち破って、地球のど真ん中に到達した。


地球のど真ん中から僕は世界の全てを見渡した。何もかもが小さかった。小さいものは弱い。今、僕より大きいものは何もない。僕は強いんだ。勝ったのだ、この大きな、いや今となっては小さな星屑に。さようならだ、今まで僕と友達でいてくれた人、今まで僕を愛してくれたきれいな女性たち、特に美佐子、あと里恵ちゃん、お父さんお母さん、神様、みんなさよなうら。お元気で。


僕はあたな達よりずっと上の立場なので、ずっとずっと強いので、1人でこの宇宙の外側の暖かい水の中に進んでいきます。


そう決意して目を開けると、彼女が微笑んでいた。僕はもう大丈夫だ。1人で生きていけるんだ。彼女がいれば。


あれ?どうしたんだろう?急に雪が降り出した。


いや、どうやら違うらしい。部屋が、普通の暖かさになってしまったのだ。


あんなに心地良かった風の音が、鬱陶しい。


どうして。


どうしてこんなに孤独なんだろう。今の僕に一体何が足りないと言うのだろう。


頭を掻きむしり、自分でも何を言っているかわからないけれど、怒鳴り散らした。寂しい。寂しくて寂しくて涙が止まらない。僕はすべてを失ってしまったんだ。


彼女を抱きしめた。冷たい、なぜか冷たい。意外だ。どう見ても暖かいのに。


何か言ってる?


ぴこぴこぴろろんびわぁんちゃんちゃらびーちゃんちゃぴろぴぴる。


そういうことか。教えてくれてありがとう。


布団を敷いてやるんだ、彼女に。


押し入れから、しばらく使っていない布団を敷いた。僕のでよければ使ってよ。


彼女はすぐに布団に入ってスヤスヤ眠りだした。


あー、これだ。これのために、僕は布団を敷いた。すごいことだと思う。大快挙だよ。これで日本の未来は平和になったんだ。地球のすべての国が日本になるんだ。僕のおかげで。どんな人種だろうが性別だろうが障害があろうが、誰でもみんな同じ日本人になるのだ。そうすればみんな僕の下僕だ。テイラー・スウィフトに俺のイチモツを毎晩しゃぶらせてやる。最高の性生活が始まるぞ。朝起きたらケイト・ウィンスレットが僕にまたがっているんだ。楽しみだ。だけどもし、失敗してしまったらどうしよう?不倫がバレてTwitterで大炎上したら僕のキャリアは失われてしまう。渡部みたいに。そんな時、助けてくれるような友人なんて、僕にはいないじゃないか。大島みたいな。


痛い。


バナナの皮が剥るように、僕の全身の皮膚がツルツル剥がれていく。焼けるように痛い。だけど動けない。失敗したんだ。もう助けは来ないんだ。


いや、最初からこの世界に存在しているのは僕だけだったのか。


寂しいなぁ。幻覚を見ていただけか。


この狭いワンルームが世界の全てだ。


どうしてだろう。夢から覚めてしまったのは、どうしてだろう。


悲しい。嘘であったとしても、あの世界から帰りたくなかった。


目が覚めてしまったって事は、これからずっとここで1人、世界が終わるのを待つしかないってことか。


ひとりでいたら、危ないのに。


ほら、後ろで誰かが僕を狙ってる。


あいつだ。


あいつが奪ったんだ。


僕がこの異世界に飛ばされる時は決まって、こいつが現れる。こいつさえいなくなれば。


ぶっ殺してやろうじゃないか。


包丁を取りにキッチンへ向かう足、廊下の壁に勢い良くぶつかった。何回も。


こんなに長い廊下は初めてだ。


包丁を掴んで、振り回す。端の部分が、飛びまわる。波のようにうねうねと伸びたり縮んだりする。僕の怒りを体現しているように。そいつを引きずって、僕は庭に戻った。


ぐちゃぐちゃの雑草が人混みを成す中、彼女はただ僕を見つめて震えていた。


震えていた。


かわいそうだけど、僕は助かりたいんだ。そのためには君が消える必要があると思う。


バリバリバリ、音がして彼女は崩れ去った。永遠に、僕はこの戦いを続けるのだろうな。


だけどこれが僕の使命なのだ。


いざ、冒険の始まりだ。


何かがぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃに歪んでいく振動を感知した。

ナンチャッテ

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