魔王が可愛くて辛い
某日、勇者である俺は、いよいよ魔王城に突入した。
・・・一人で。
はい、人望もなくアニメオタクでネクラなので一人です。悪いですか?
とにかく俺は魔王城に突入し、なんなく魔王の間にやって来た。
オタク気質で地道にレベル上げし、レベル100でステータスカンスト、収集趣味も相まって最強武器もゲットした。
イメトレでは魔王に何もさせずに、自分にバフを掛けまくり、相手もデバフで弱体化させ、一撃の内に魔王を倒せた。例え第二形態、最終形態になったとしても、HP,MP全回復のアイテムは山程持って来たので長期戦の準備もバッチリ。コッチは隠しボスが待ってんだからチャッチャと終わらせるぞ。
しかし、ここに来て緊急事態発生。
「よく来たな勇者よ。」
ヤバい、魔王って女の子で、褐色黒髪ロングの長身爆乳のマント付きビキニアーマーかよ。頭の両サイドの小さな角もアクセントで決まってる・・・てかメチャクチャタイプの外見だよ。
そんな魔王が大きな背もたれ付きの大きな椅子にふんぞり返って座ってる。クソォ、組んだ足がなんともセクシーじゃねぇかよ。
「しかし、貴様の快進撃もこれまでだ。何故ならここで貴しゃ・・・ううん!!貴様は倒されるからだ!!」
噛んだ!!確かに今噛んだ!!咳払いしてもバレバレ。おいおい、この上ドジっ子属性追加とかズルいよ!!クソォ、目が放せない。
「お、おい、あんまりジロジロ見るな・・・恥ずかしいから。」
恥じらいも!!畳み掛けてくるぜぇ!!今さら顔を真っ赤にして露出部分を手で隠しても遅いよ!!推測するに、その衣装初めて着たとみた!!
「オホン!!・・・とにかく戦うぞ!!掛かって・・・」
"ブッ!!"
えっ?
急にしまった!!という顔をして、冷や汗を流し始め、両手でお尻を押さる魔王。
まさか、まさか・・・。
「屁、屁などこいておらぬ!!」
マジかー!!屁をこいちまったのかぁ!!それはマニアックだなぁ!!美女のオナラ・・・俺は嫌いじゃないぜ!!
「き、昨日、戦い前の打ち上げで・・・焼き肉を食べ過ぎ・・・いや、私は屁などこいておらぬ!!」
オナラの理由まで聞かせてくれちゃったよ!!遠いから臭いがしなくて良かった様な、悪かった様な。
「うぅ・・・ミカエラ!!ミカエラ助けて!!」
魔王が半泣きで叫び始めると、左横の扉から執事服を着たナイスバディな翼の生えたキリッとし麗人が現れた。おそらくミカエラというのは、この人のことだろう。ミカエラさんは素早く魔王に駆け寄った。
「ミーニャ様、どうなされました?」
「ミ、ミーニャって言わないで!!」
へぇ、魔王ってミーニャって言うんだ、名前まで可愛いじゃないか。ミーニャはミカエラさんに耳打ちする。耳打ちしたところで地獄耳のスキルがコッチにはあるのさ♪
「オ、オナラしちゃった。」
「ですから、食べ過ぎはダメですと言ったんです。」
「ど、どうしよう?」
「一旦、勇者には帰ってもらって、戦うのは明日にしましょう。」
「そ、それは良いんだけど、もう恥ずかしくて勇者の顔見れない。」
「なら、私が言いますからミーニャ様は自室に下がってください。あとでオヤツのドーナツを持っていきますから。」
ミカエラさんがそう言うと、ミーニャは万歳して喜び始めた。
「わーい♪ドーナツ大好き♪・・・あっ!!」
へぇ、ドーナツ好きなんだねミーニャちゃん♪こんなに喜ぶとは、地獄耳の必要無かったな。
「くぅ!!覚えとけ勇者め!!」
失態続きのミーニャちゃんは、魔王の間から出て行き。
残ったミカエラさんから明日出直すように言われ、俺は結局何もしない、何も喋らぬまま、魔王城を出た。
俺は魔王城の前にテントを張って野宿した。
何か言われるかな?とも思ったけど、何も言われなかった。向こうの都合で出直すはめになったんだから、まぁ、当たり前と言えば当たり前だね。
その日の夜、俺は寝られなかった。魔王があんなに可愛い子だったなんて・・・俺はあの子を倒せるだろうか?いや倒さねば世界の平和が・・・うーん、畜生!!どうすれば良いんだ!!
~次の日~
俺は、とりあえず約束の時間の一時間前に魔王城に突入した。
悶々とした気持ちを吹っ切る為さ、俺は大義の為にミーニャ・・・いや魔王を討つ!!
・・・柄じゃ無いんだけどね。
「お、お待ち下さい!!」
魔王の間に向けて廊下を走っていると、ミカエラさんが横を並走してきた。あの冷静な人が何か焦ってるようだった。
「待てませんね。これは奇襲です。」
「そこをなんとか!!魔王様は戦う準備をしていません!!万全の態勢で戦わせてあげて下さい!!」
必死だな、ここは魔王の都合も汲むべきか。
「分かりました。戦うのは魔王の準備を待ってからにしますから。それなら良いでしょ。」
「いえ、そういう問題では・・・」
「コローリ!!」
「うっ・・・。」
"バターン!!"
俺の眠り魔法で、その場に倒れるミカエラさん。流石に自分の主人が倒されるところは見たくないだろうしな。
俺は覚悟を持って、魔王の間の扉を開けた。
「たのもー!!」
俺は大声を出して派手に魔王の間に入ったのだが、それは魔王の間に流れる爆音のBGMにかき消された。このミュージックは!!
部屋に入ると眼鏡を掛けたジャージ姿のミーニャは楽しそうに歌を歌っていた。この歌は俺も知っている某声優の歌だった。かなり歌い込んでいるのか音程はバッチリで、ミーニャの歌声は天使の様であった。
歌い終わるとミーニャはメロンソーダをゴクリと飲み、コチラに気づく様子も無く、とても満足した様子であった。
「やっぱり『トライアングラー』は最高ね!!次は『秘密』と『紅茶』どっちにしようかな♪死ぬかもしれないんだから全部歌ってやる♪」
これを聞いた俺は思わず叫んだ。
「もう結婚してくれよ!!」
推しの声優が一緒とか、惚れるに決まってるじゃん!!
RPGとかやってられるか!!こっからは恋愛シミュレーションゲームじゃ!!